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輝きの欠片
乙女の祈り(加筆訂正版)1部
「あっ・・・」
それまで反応の薄かったオンナが、オトコの上でビクンと大きく体を震わせた。
透けるような白い肌に、ほんのりと紅がさす。
「ん・・・」
動く度にそのカールした長い髪が、形のよい、ふくよかな胸を撫でるようにゆれる。
カノジョの顔に赤みがさし、目が宙をさまよう。
そのしっとりと濡れた唇からかすかに喘ぎ声が漏れる。
「はあぁっ・・もう・・・少し・・・」
かすれる様な声でオンナが求めるように言う。
「どこがいい?」
オトコが聞きかえす。
「もう少し・・・奥・・・あぁあ・・・ソコ・・・」
オンナの眉が切なげに歪む。
「あぁん・・・だめぇ・・・イクゥゥゥゥ・・・!」
オンナがオトコの上にぐったりとしな垂れかかる・・・。
<皐月と川島>
(先輩・・・皐月先輩)
「ん・・・?」
彼女が気だるげに振り向くと、隣の席の後輩がコーヒーを片手に、笑いながらたっていた。
(昨日、誰かとやりましたか・・・?)
彼女は眉をひそめると、同じように小声で、パソコンの画面に目を戻し、
(なんでわかったのよ・・・?)
とその長いふわふわとした髪を掻きあげながら、怒ったように聞き返した。
彼はぷっと笑うと、
(いや、カンですけど、先輩いつもそういう時、妙に色っぽいのに不機嫌だから)
と答え、彼女の机にコーヒーを置いた。
「どうぞ」
「あら、ありがとう」
彼女がにっこり微笑むと、彼はどういたしまして、といった後、
(近くにいると変な気分になるんで)
と小声でいった後、
「外回りいってきます」
と、爽やかに出て行った。
<皐月とゆり>
「で?誰としたって?」
友達のゆりがサンドイッチにかぶりつきながら聞き返す。
「し~っ!・・・声大きいよ・・・」
皐月はテーブルに突っ伏すと、
「取引先の人・・・後は秘密」
といった。
「どぉだった?」
「どぉもこぉも・・・別にぃ・・・普通・・・かな」
皐月がそういって、グラスのふちについた口紅をぬぐう。
「あんたねぇ・・・」
ゆりがあきれたように眉をひそめいう。
「そんないい加減なことしてると、病気うつるよ?」
「ああ・・・うん・・・反省してます・・・」
皐月が肩をすくめ、チラッと舌を出した。
「うそばっかり」
ゆりがたたみ掛けるようにいう。
「全くあんたって、堅そうに見えてノーガードなんだから・・・」
「だって・・・」
「だって?」
「断れないんだもの・・・」
ゆりがはぁっと溜息をついた。
「誰か特定のいい人、いないの?」
「ん~・・・いないよぉ・・・」
そう答えつつ、皐月はある特定の人物を思い出していた。。。
<皐月と彼>
皐月がカレを思い出すときは、いつも指が一番先に目に浮かぶ。
白くて長くて器用な指。
皐月の大好きな指。
そんな指に欲情する。どんなところでも。
舌を這わせて、軽く噛みたい衝動にかられる。
オトコを見るときは最初に指を見る。
そして想像する。
その指が自分の体の上をそっとなぞっていくのを・・・。
それだけで体が期待に震える・・・。
その左手の指に銀色の指輪が光っていたら、
もっと素敵。
負け惜しみではなくて。
その魔法の指の持ち主が、皐月の髪をもてあそびながらいった。
「何を考えてるの?」
優しく響く低めの声。
皐月はその腕の中にぴったりと寄り添い、誘うように笑う。
「考えてないわ・・・欲情してる」
カレは微笑みながら、カノジョのその背中を優しく愛撫しつつ、いう。
「皐月はなんでオトコを一人に絞らないの?」
その問いかけに嫌味が混じっていず、純粋な質問に思われたので、
カノジョは答えることにした。
「怖いからよ」
「怖いから?」
「そう」
皐月はカレの指に自分の指を絡め、軽くその指先を口に含みながらいう。
「一人を愛しすぎると、その人に色々求めてしまうでしょ。
たくさんいたら、いいところだけを見ることができる。
その人のいいところだけを愛することができるし、
気分で、一緒にいてほしい人って違うものよ・・・?」
「気分?どんな気分?」
そうね、と皐月はしばらく考えてから答える。
「優しく愛撫してほしいとき。激しく求めたいとき。甘えさせてほしいとき」
「それは一人で満たすことは不可能?」
「オトコだって万能じゃないわ・・・無理よ。相手だって気分がのらないときはある
でも私は、そういう気分のときはそういう気分の人と一緒にいたいのよ」
そういって皐月はカレにぴったりと寄り添う。
「なるほどね」
カノジョの髪を彼が優しく撫でる。
カノジョはうっとりと目をつぶり、カレの肩に顔をうずめた。
<皐月と佐伯>
「皐月」
不意に廊下でぐいっと腕をつかまれた。
見上げると、若いオトコが怖い顔でたっていた。
取引先の佐伯だった。
皐月は動じる様子もなく、にっこりと笑うと、
「ここはうちの会社よ?名前で呼ぶなんて、無用心ねぇ」
と静かな声でいった。
彼はむっとしたように、
「何処だってかまうもんか」
とはいったものの、彼女の腕を離し、辺りを見渡した。
幸いそこは地下の倉庫の近くで、人気はなかった。
「どうかした?」
「どうかって・・・その・・・」
佐伯はちょっとためらうように言葉を濁したあと、
「昨日何してた?」
ときいた。
「何故?」
皐月が小首をかしげながら聞き返す。
「何故って・・・」
佐伯は少し言いよどみながらも
「何度も電話したのに・・・でないから・・・」
と続けた。
「寝てたわ」
皐月はそういって肩をすくめた。
「・・・一人で?」
さらに佐伯が低い声で聞く。
「さぁ?」
皐月は彼の目を見据えると、
「それは答える義務があるのかしらね?」
と逆に聞き返した。
「メールくらいくれても・・・」
彼がさらに食い下がる。
「貴方は?」
「え・・・?」
皐月は挑戦的な目で彼を見据えるといった。
「貴方はどうなの?いつも私のメールに返事くれてる?
二回に一回がせいぜいじゃないの?
自分が逢いたいときにだけそんなこというなんて、
随分都合がいいわね・・・?」
「いや、いつもは仕事が忙しくて・・・」
俯く彼に、さらに被せるようにいう。
「私は仕事に文句をいったことはないわよ?メールが来ないことにも。
貴方を束縛したりしないし、逢えるときには逢ってるじゃない
何が不満?」
「・・・それは・・・」
「私を束縛したいなら、一瞬たりとも私を寂しくさせないで。
そんなの無理でしょ?・・・出来ないなら、別々の時間まで干渉しないで」
皐月の言葉に彼が苦笑しながらいった。
「・・・ずいぶん冷たいんだな・・・」
「そうかしら・・・?」
彼女は殊更なんでもないように続けた。
「嫌になったのなら、今ここで別れる・・・?」
緊迫した空気が二人を包んだ。
「オレは・・・」
彼が何かを言いかけたとき、ふと背後から声がした。
「あれ?皐月先輩?ここにいたんですか!」
彼は皐月の相手を認めると
「あ・・・なにが取り込み中でした?すみません」
と、にっこり笑った。
「いいのよ。たいした話じゃないから」
皐月が言うと佐伯はむっとしたように
「たいした話じゃない、か・・・確かにお前にはそうなんだろうな
わかったよ」
と言い捨て、歩き去っていった。
「すみません・・・邪魔しちゃいましたね」
川島が罰の悪そうな顔で謝った。
皐月はフフ、っと笑うと
「いいのよ・・・修羅場は苦手だから」
といった。
「その割には、冷静でしたよね?」
川島がしれっという。
「やだ・・・いつから聞いてたのよ」
皐月が苦笑すると川島は
「いえ、まぁ、最初の方から」
と舌を出し、
「すいません。つい・・・」
といった。
「あはは・・・構わないわよ」
皐月は軽く笑うと、仕事に戻るよう彼を促した。
が、
彼は彼女を後ろからふわっと抱きしめ、
「なんでこんなに痛々しいんだろ・・・
先輩を放っておけない人達の気持ち、わかるような気がします」
といった。
皐月はそんな彼の肩に自分の体を軽くあずけ、
その細身の割にしっかりした腕を二三度軽く撫でた後、
「続きは今度ゆっくりして?」
といった。
<皐月と彼>
(・・・ああ、最悪・・・)
いつになく込んだ蒸し暑い車内。
彼女と向かい合わせに立った中年男性が、
じりじりと彼女に体を押しつけてくる。
(あ~・・・好みじゃないのよねぇ・・・残念・・・。
もっと、若い子だったらいいのに・・・)
皐月は眉をひそめると軽く身をよじり、
その中年男性から離れようとしたが、
そのオトコはさらに彼女に被いかぶさるようにして、
皐月を壁の方へと追い詰める。
(マジ・・・?やだ、痴漢・・・?股間握っとく・・・?)
皐月がぼ~っとそんなことを考えていると、
ふいに彼女とオトコの間に隙間ができた。
皐月が驚いて視線をあげると、
彼女とオトコの間に若いスーツ姿の男性が体を滑り込ませ、
彼女をかばうように隙間を作っていた。
ふわっとやさしい薫りが彼女の鼻腔をくすぐる。
皐月は思わずうっとりと目をつぶった。
彼は彼女には触れずに、オトコを彼女から上手く遠ざけていた。
皐月が何気なく視線を落とすと、
そこにはすらりとのびた綺麗な指と
銀色に光る指輪があった。
皐月が、魔法の指をもつ彼と、はじめてであった瞬間だった。
時々、彼は彼女の髪を撫でながら、そのときのことを話す。
あまりに儚げな女の子が、
エロオヤジの餌食に喰われそうで、どうしてもみていられなかった、と。
そして、笑いながら付け加える。
その白いうなじに、
キスしたい衝動を抑えるのに精一杯だった、と。
<皐月とゆり>
「それで?どうしたの?」
心配そうに、ゆりが聞き返した。
「別れた・・・と思うんだけどな」
皐月がそういって、コーヒーを飲み干した。
室内にはクラッシック。
コーヒーの香りが漂う静かな昼下がり。
二人はなじみの店なのか、
他に客もいないのに、カウンターに並んで座っていた。
「え~っ?」
皐月の返事を聞き、ゆりが抗議の声を上げる。
「なによぉ。なんか不満?」
皐月が聞き返す。
「不満。・・・っていうか、相手、そんなに簡単にあきらめる~?」
「もともとその程度だったんでしょ」
皐月は肩をすくめ笑うと、
「あ~あ、また振られちゃった」
とため息をついた。
するとカウンターの中から、
「それは違うんじゃない?」
と、それまで向かいで静かにグラスを拭いていた、
やさしい目の男がいった。
「何が違うの?」
「まず、振られた、じゃなくて、振った、だろ。どうみても」
そういって彼は、彼女の前の空のカップに、
コーヒーのおかわりをつぐと、
「あ、これ俺の奢りね」
といい、彼女にウインクをした。
「ありがと。コーヒーの飲めない店長さん」
皐月は湯気の立つコーヒーを一口のむと、
「でも、それっきりメールもこないしね」
と笑った。
「虚勢だよ。きっと彼、連絡待ってるよ」
ゆりがそういって加勢する。
「連絡してやれば?」
店長もやんわりと彼女を促す。
「ん~?」
皐月はあいまいに笑うだけで、返事をしない。
「もう、飽きたってか?」
彼が眉をひそめて聞き返すと、
「そういうんじゃなくてね・・・」
皐月はちょっと考え、
「メールすると返事待っちゃうでしょ?・・・もう、そういうことに疲れたのよ」
と物憂げに笑った。
「確かに、皐月は冷たいように見えるかもな」
彼女を名前で呼ぶところを見ると、
店長と彼女はもともと知り合いのようである。
「いいのよ。それでも」
皐月は静かに言った。
「理解されないほうがいいの。冷たいって思われて、
嫌われたほうが、しつこくしてうっとうしい女と思われるより、
気が楽なのよ・・・」
「とかいって」
「夜になると一人で泣くくせに」
店長が言うと、
ゆりも、そうそう、いつもそうじゃないの、といいながら、頷いた。
「みっともないところ、見せたくないもん・・・」
「おまえさぁ・・・」
店長とゆりは目を見合わせて溜息をつきながらいった。
「そういうとこ、相手に見せたらもっと可愛いのに」
「そうよ。そんなに相手にかまえる必要どこにあるのよ」
「・・・わからないケド・・・」
皐月は視線を落とすと、
「でも、こういう風にしか、今はできないの」
とつぶやき、顔を覆った。
二人は、仕方ないなぁ、というように、目を見合わせてため息をついた。
<皐月と彼(誠一)>
誠一は、自分の腕の中で子猫のように眠っている
カノジョのそのやわらかいウェーブのかかった髪をそっと撫でた。
カノジョが称する所の、その魔法の指で。
一瞬、彼女が身じろぎをし、彼にいっそう寄り添うようにすると
又安心したようにすやすやと寝息をたてる。
カレは煙草に火をつけると、ゆっくりそれをふかしながら、
カノジョの寝顔を見つめた。
綺麗に伸びたまつげ。
誘うような唇。
華奢な体。
張りのある、それでいてやわらかい胸。
白いしなやかな肢体が、カレの腕の中に無防備にさらされている。
その全身からは、えもいわれぬ甘い香りが漂う。
(もし今瞳を開けて誘われたら、決して抗えないだろうな)
と、誠一は心の中で考えた。
(全く麻薬みたいなオンナだよ・・・)
寝ていてさえ、抱きしめたい衝動を抑えられないくらいのなにかを
カノジョは全身から発していた。
(してないときはゼンゼン普通なのにな・・・抱いてるときは別人だよな・・・)
カレはそんなことを考えながら、カノジョを軽く抱き寄せ、
その額に口付けをした。
「う・・・ん・・・?」
カノジョが薄らと目を開ける。
「ゴメン・・・寝ちゃった・・・?」
そういいながらも、まだ夢うつつの様子である。
「いや、いいよ」
カレがそういって、カノジョの頭を優しく撫でる。
「猫みたいでかわいかった」
カレがそういうと皐月はふふっと笑い、
「誠一の肩の付け根が大好きなのよ」
といって肩にその白い指を滑らせた。
「俺じゃなくて俺の肩かよ・・・」
誠一が苦笑する。
「そう。肩だけあればいいわ」
皐月がそういって肩に頬をこすりつける。
「安心するのよ・・・ここが」
「じゃぁ、肩は皐月専用にしとくよ」
誠一がそういうと、皐月はうれしそうに笑い、
「ありがとう。なかなかないのよ?ぴったりくるパーツって」
といった。
「・・・パーツって・・・」
絶句するカレに、皐月はあはは、と笑い、
「ごめん。だってもって帰りたいくらい好きなんだもの」
と真顔で付け加えた。
「もってかれても困るからな・・・持ち出し禁止で頼むわ」
「了解」
誠一は、ふふっと笑うカノジョをぎゅっと抱きしめ、
「俺はコレをもって帰りたい」
といった。
皐月はカレの膝に乗り、首に腕を巻きつけると、
そっと耳たぶを噛み、そしていった。
「それはダメよ」
「どうして?」
誠一が聞く。そんなことが出来ないのは、本当は彼の方なのだが。
「私は誰のものにもならないから」
皐月はそういって誠一の舌を絡め取るように吸うと、
「でも、貴方が望めば、いつでも貴方のものなのよ。わかるかしら?」
といって笑った。
「・・・わからない・・・」
「わからなければ、いいの。私を束縛しないでくれればいいの。
私を甘えさせてくれればいいの」
「甘えさせるのは得意だけどね」
誠一が言うと、皐月はカレの背中に指を滑らせながら、
「そうね・・・それで充分なのよ」
と優しく答え、彼を見つめた。
吸い込まれるような、その瞳で。
<皐月と尚(川島)>
カレの腕の中でカノジョが、
声にならない、悦びの声を上げ、
体を震わせた。
無意識に逃れようとするカノジョの肩を、カレはぐいっとつかみ、
見下ろす。
カノジョはカレの下に組み敷かれ、ぐったりとした様子で瞳を閉じていた。
頬にはほんのりと赤みがさし、
露になった白い肩が微かに上下している。
(綺麗だな・・・)
「ん・・・?なに?・・・どうかした・・・?」
動きを止めたカレに、カノジョが目を開け、かすれた声で問いかける。
カレの腕の中のカノジョは華奢で、今にも壊れそうな気がした。
「強く抱いたら壊れそう・・・っていった」
皐月を後ろからそっと抱きおこし、
首筋にそっと唇を這わせながら、川島が言った。
カノジョはふふっと笑って、
「壊れたりしないから・・・もっと強く抱きしめて」
といい、カレの肩に頭をあずけた。
川島が皐月を強く抱きしめながら、ぼそっと言う。
「これ、夢かな?」
「・・・なんでよ?」
「皐月先輩が僕の腕の中にいるなんて信じられないから」
「馬鹿ね・・・」
皐月が微笑みながらカレの髪を優しく撫で、
ゆっくり振り向くとその額に優しくキスをした。
「先輩じゃなくて、皐月、ね」
カノジョがそういうと彼も負けずに
「じゃぁ、僕は尚(ナオ)で」
と言い返した。
皐月はふふっと笑うと、なんだか照れるわね、
といった。
僕は緊張してます、とカレがいうと、
皐月はいやぁねぇ、と苦笑した。
「やっぱり夢かも」
カレがいうと、皐月が聞き返す。
「夢の方がいいの?」
「だって、現実と思えないから・・・。
皐月・・・さんが、このまま消えてしまいそうで」
といった。
皐月は優しく彼を包み込むと、もう一度、ばかねぇ、といった。
そして、潤んだ瞳でカレを見つめると、
「夢かどうか、もう一度試してみて?」
と優しくいった。
その言葉に含まれた抗えない甘美な響きに、
カレはもう一度、カノジョを抱きしめ、その胸元に顔をうずめた・・・。
二部へ続く
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