輝きの欠片

第三部




皐月がふと廊下の先を見ると、尚が視界に入った。


声をかけようと二、三歩歩きかけ、彼の向こう側に人気を感じ、


あわてて足を止める。


「・・・・・・だもの」


よく聞こえないが、言い争っているようにも思えた。


皐月は自販機の陰にそっと身を潜め、様子を伺った。


(・・・私なにやってるんだろう・・・)


自分自身に苦笑する。


本来の皐月なら、踵を返すところ。


相手の男に彼女がいようが妻がいようが気にしない。


自分と相手。


皐月にはそれだけ。


しかしなぜか今は、その場から立ち去ることが出来なかった。


「好きな人が出来たの?ねぇ?私が彼女じゃなかったの?!」


彼女が激しい剣幕でまくし立てる。


小柄でかわいらしい感じの女の子だ。


見たことがあるような、と皐月はぼんやり考えた。


(経理の子かな・・・)


彼女たちの部署は営業なので、経理とは頻繁に行き来がある。


きっとそこで顔見知りになったのであろう。


「それは・・・でも・・・」


尚が曖昧に言葉を濁すのがかろうじて聞こえた。


「嘘つき!」


「付き合う約束をした覚えはないよ・・・」


「ひどいよ・・・」


彼女がぼたぼたっと大粒の涙を流した。


「・・・ごめん・・・」


尚が俯く。


「そのごめんは何なのよ?!何に対して・・・謝ってるのよ・・・?!」


彼女がしゃくりあげながら、彼を問い詰める。


「他に女がいるの?誰よ?!」


「悪いけど、いえない・・・」


彼女が深く息を吸って、吐き出すようにいった。


「・・・私のことは・・・嫌いなの・・・?」


「・・・そういうことじゃ・・・」


「じゃぁ、これから付き合ってよ」


彼女がすがるような瞳で彼を見つめる。


「それは・・・」


尚が視線をそらせて、曖昧に答える。


「ダメなの・・・?」


彼に抱きつき、見上げる彼女。


「キスしてよ・・・お願い・・・」


皐月が見ているのも知らず、尚はしばらく躊躇した後、


彼女を抱き寄せ、キスをした。










皐月は混乱していた。


息苦しくなり、尚に背を向け、そおっとその場を離れた。


全身の震えが止まらなかった。


心臓の音が耳の奥に大きく木霊する。


(・・・落ち着かなきゃ・・・大丈夫・・・大丈夫・・・)


冷静になろうとしているのに、考えがまとまらない自分に、


皐月は戸惑っていた。


角を曲がり、壁に手をついたまま、廊下の隅にへたりこむ。


それ以上、足に力が入らなかった。


全身の震えも止まらない。


彼女は自分の震える指先を見つめながら、


考えた。



(他に女がいたからって、動揺することじゃないわ・・・


相手はたくさんいるんだし・・・


誰にも本気にはならないって、決めたじゃない・・・)


しかし考えがまとまらない。


全身の震えも止まらなかった。


誰かにすがりたかった。


目の前が真っ暗になり、耳鳴りがした。


どのくらいたったか、不意に


「皐月・・・?」


と背後から声がした。


ビクン、とカラダをすくめ、そっと振り返ると


いぶかしげな顔で彼女を覗き込む顔があった。


「・・・幸二・・・」


カレとは先日ここで別れたきり、お互いに連絡も取っていなかった。


何がなく彼女を覗き込んだ彼が、びっくりしたようにいった。


「どうしたんだよ・・・?なにかあったのか?」


「なんで・・・?」


皐月が不思議そうに聞き返すと、彼はあきれたようにいった。


「お前自分で気付いてないのかよ?・・・ないてるぞ?」


その言葉で彼女はやっと、自分がぼろぼろと


涙を流していたことに気付いた。


「ほんとだ・・・」


皐月は泣きながらふふっと笑うと、


「なんでもないの」


といい、涙をぬぐった。


「なんでもない訳ないだろ」


彼は舌打ちしながらそういうと、彼女のそばにかがみこみ、


そっと彼女を包み込むように抱きしめた。


「お前を怒らせた俺が非難する資格はないのかもしれないけど、


お前を泣かすようなオトコはやめろよ」


「・・・ほんと、貴方にいわれたくない」


皐月がそういって泣きながら笑った。


「・・・ずっと皐月に逢いたかった・・・」


佐伯が真剣な口調でいった。


その言葉に、皐月は彼に潤んだ瞳をむけ、いった。


「・・・じゃあ、今すぐ抱いて」


彼が皐月を見つめ、聞き返す。


「今、ここで?」


「そう。・・・今、ここで・・・」


「本気?」


皐月が真面目な顔で頷いた。


「抱いて欲しいの。今」


彼は無言で彼女を抱き上げると、


一番近くの倉庫の扉を静かに開けた。





奥の入り口からは見えないところまですすみ、


ゆっくりと彼女を下ろす。


皐月が彼の首に腕を絡め、彼をじっと見つめる。


「俺が、そいつを忘れさせてやるよ」


彼がそういいながら、


皐月の首筋に軽く歯を立てた・・・。


「どうして欲しい?」


皐月を後ろから抱きかかえるようにしたまま、


佐伯は続けてカノジョの首筋に舌を這わせる。


時々、肩や首を噛みながら。


「あ・・・ん・・・」


カノジョが軽く体を震わせる。


服の中に手を滑らせ、下着をずらし指でカノジョを確かめる。


「・・・どうして欲しい?」


カレが指でカノジョを弄びながら、耳元でもう一度ささやく。


「ハゲシク・・・して・・・」


皐月が切ない吐息とともに、震える声で答える。


「こう・・・?」


カレの指がカノジョの中を掻き回すと、たちまちカノジョの中が反応し、


カレの指に絡みつく。


「ん・・あぁあ・・・」


佐伯は皐月が無意識にカレから体を離そうとするのを押し戻し、


さらに手首を掴んで自分の方へ引き寄せ、


より激しくカノジョの中を犯してゆく。


「あぁっ・・・ダメ・・・」


「何がダメ・・・?」


「気持ちイイの・・・」


「じゃぁ、ダメじゃないだろ。どうやってしてほしい?」


皐月が目をつぶり、わななく唇で要求する。


「立ったまま・・・後ろからして・・・」


そして自分でスカートをたくし上げる。


「我慢できないの・・・入れて・・・?」


カノジョが体を震わせて潤んだ瞳で彼を見つめいう。


カレは無言でカノジョを片手で抱き寄せると、


その今にも溢れ出しそうになほどたっぷりと蜜をたたえたその部分に


自分のモノを押し込んだ。


「んん゛・・・」


カノジョが息を止め、ビクン、と大きくカラダを震わせる。


「は・・・ぁ・・・」


カレがカノジョの胸を弄びながら、露になった首筋に


強くキスマークをつける。


「マーキングしといた」


カレが意地悪く言う。


「皐月は俺の」


「・・・ばかぁ・・・」


「やめてもいいの?」


カレがそういって動きを止める。


「・・・イジワル」


「皐月はないてるより、やってるときの顔のほうが可愛い」


「もぉ・・・」


カレがさらに激しく彼女を責める。


「あっ・・・ソコ・・・ダメ・・・カンジル・・・」


「いやらしぃ顔だよ。もっと責めたくなる」


「責めて・・・」


彼女が彼を見上げ言った。


「壊れるくらい」


「・・・お望みどおりに」


カレがそういって笑い、キスで皐月の唇を塞いだ。

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