○●絵空事●○

○●絵空事●○

dear my best friend


唯一無二の友人
失って初めて気付く
その大事さに
嗚呼
私はなんて愚か者なのだろうか


私が彼とであったのは大学二年生のときだった。
たまたま取った講義が同じで、最初に座った席が隣だった。
「やぁ、君とは同じ学科なのに初めて話すね?僕の名前覚えてる?」
正直馴れ馴れしい奴だな、と思った。
私はそんなに人付き合いが上手い方ではなかったし、友人が多いとも言えなかった。
「覚えているよ、藤堂旬君だろう?君は目立つからね」
確かに旬は目立っていた。科内でも成績優秀な方だったし、教授にも一目置かれる、そんな存在。
彼の周りにはいつも人がいて、私とはまるで正反対だった。
「嬉しいな、君とは一度話してみたかったんだよ」
顔を綻ばせて言う旬。
私はそんな旬が羨ましかった。
人を惹き付けて止まない彼が。

それから旬は何かにつけて私に話し掛けてくるようになった。
その頃には旬の人懐っこさにも慣れ、私と旬は互いの家に行き来するほどの仲となった。
「ねぇ、君って…彼女いないの?」
「なんだ、藪から棒に」
「いや、君からそういう話って聞かないなーって」
当時の私には高校のときから付き合っている恋人がいた。
同じ大学に通うと約束し、大学を卒業したら一緒になろうとも考えていた。
「いるさ」
「やっぱり?今度紹介してくれよ」
旬は私が自分に頼み事をされると断れないのを知っていた。
私は渋々ながら自分の恋人を旬に紹介した。
しかし、それがまずかった。
旬と彼女は互いに一目見たときから何かを感じ取ったようだった。

彼女に別れを告げられたのは冬の、確か雨の日の夜だった。
「ごめんなさい、ごめんなさい…。私、旬君のことが…」
私は彼女に何も言うことが出来なかった。
ただ、走り去る彼女の背中だけは妙に鮮明に覚えている。
何時間も、独り雨に打たれて立っていたことも。
どうして
どうしてこうなったのか
全てあいつが
あいつが私の前に現れたから
そうだ
無かったことにしよう
藤堂旬なんて人間は
初めから存在しない
そうだ
そんな人間は居ない
そうだ
コロシテシマオウ





私には友人がいた
唯一無二の友人
殺してしまってから気付く
その大事さに
嗚呼
私はなんて愚か者なのだろうか
こうして今
鉄格子越しに見る空は
お前の笑顔にそっくりだ









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