第1話 波乱の幕開け



 今日から新学期。
「えぇっと、2年4組は・・・ここだ!あぁ、緊張するぅ・・・・・」
 くんこは自分の新しい教室へ入った。引っ越してきたばかりなので、顔ぶれはまったく知らない人ばかりである。
 くんこの席は、1番後ろだった。
 左隣の席の人は、バンパイアというナルシストなドラキュラ風の人だ。しきりに鏡を気にしている。右隣の人は・・・・・・どうやら遅刻のようだ。前の席の人はゼルダという綺麗な、お姫様のような人だった。
 くんこは教室をぐるりと見回してみた。やはり、リンクの姿はどこにもない。
『ま、そう簡単にいくわけないよね・・・・・』
 くんこはひそかにため息をついた。
『でも、同じ校内にいればめぐり合うこともあるし・・・・・・・・・』
 くんこはかなり思い切りのいいところがあったので、すぐに割り切ってしまった。こういうところがくんこのいいところなのである。
「ねえ、くんこちゃんっていうのね?」
 唐突に声をかけられて、くんこは驚いて顔を上げた。見ると、ゼルダがくんこに微笑みかけている。ここに来て初めて声をかけてくれた人だった。
「え、あ、ハイ・・」
「私はゼルダ、よろしくね、くんこちゃん」
「あー、よろしくおねがいします」
 くんこも返した。
 笑っているゼルダもかなり美人だ。
『あー、いい人だなぁ・・・・』
 くんこは声をかけてくれて、少しうれしかった。

 くんこたち2年4組の先生は長谷野糞婆といって、学校一厳しいことで有名な先生だ。くんこはそのことをゼルダに聞いて、かなり不安になってしまった。
 朝短活が始まった。入学式の注意事項や日程、連絡などを、長谷野が黙々と伝えている。その間にもリンクのことで頭がいっぱいなくんこ。幸せそうなやつだ・・・・。
 と、教室の後ろの戸が開き、新学期早々の遅刻者が現れた。
「リンクさんっ!!今年も遅刻ですか!!こっちまで来なさい!」
 長谷野の声にくんこは振り向いた。なんと、そこにいたのはくんこが恋するリンク!リンクがくんこの右隣の席の人だったのだ。くんこは口から心臓が飛び出るくらいびっくりした。
『私の隣がリンクくん!?夢じゃないのね!現実なのね!!キャ――――――!!うれし―――――いvvvv』
 くんこはうれしくてたまらない思いでいっぱいだった。が。
「あなたは去年も校内遅刻回数ナンバー1だったでしょう!今年は2年生ですよ!しっかり気を引き締めなさい!!」
 長谷野はリンクを叱りつづけている。くんこは少しキレた。
『あぁー!なんでちょっと遅刻したぐらいでそんなに怒るのよ。リンクくんをそんなに責めないで!ホント、名前の通り糞婆だわ!!!』
 などと、他人事にもかかわらず怒りまくっている。しかし顔には一切そのような表情は出さなかった。
 怒られてすごすごと席に着くリンクを、くんこはずっと横目で観察していた。

 こうして何もかもが終わり、下校の時間になった。
 けっきょく恋の進展も何もなく、話すことすらなかったくんことリンク。今日1日でゼルダと友達にはなれたが、そんなの物の数ではない(←最低)。
 くんこはカバンに勉強道具を詰め、帰ろうとしていた。するとリンクが、
「ねえ、君って・・・・」
いきなりくんこに声をかけてきた。かなり驚くくんこ。
「あ、やっぱりそうだ。僕の隣に引っ越してきた人だよね。え・・・と、くんこ・・くんこちゃんっていうんだね僕はリンク、よろしくぅ!!」
 くんこは驚いてはいたが、ここぞとばかりに最大のかわいい声を出した。
「うん、よろしく♪」
 声をかけられたのはうれしいが、くんこはリンクが隣人である自分の名前を知らなかったことが少しショックだった。
 リンクは続けた。
「くんこちゃんってさぁ、ここに転校してきたんだよね・・・・」
「ね、リンクv」
 なんと、せっかく愛しのリンクが話しかけてくれているにもかかわらず、横から話しに割って入ろうとする人物がいるではないか。しかもそれは女子の声だ。くんこが見ると、なんと、そこに立っていたのはゼルダだった。
『な・・・私に始めて声をかけてくれた、優しい人が、なぜ・・・・・・?』
 ゼルダは続ける。
「今日の午後あいてる?それなら、また私といっしょにお茶でもしない?」
「うん、いいよ」
 リンクが答えた。しかし、様子から察すると、さほど嬉しそうでもないようだった。
 しかしくんこは、とてつもないショックを受けていた。
『ゼルダちゃんも、リンクくんのこと好きなんだ・・・付き合っちゃったりしてるのかな・・・・?あぁん、リンクくんは私のものなのにー!!でも、あんな美人がライバルじゃ、簡単に勝てそうもないわ;』
 そんなことを考えている間に、リンクとゼルダはくんこに一言、
「バイバイ、また明日ね」
 と声をかけて、二人で帰っていってしまった。
 くんこは、というと・・・・『打倒ゼルダ』に燃えていた・・・・・。

 今晩のくんこは、ゼルダからリンクを奪うための作戦を実行しようとしていた。
 くんこの夕食は納豆。そう、なんとくんこは納豆のわらを使ってわら人形を作る気なのだ。古典的な呪いの方法である。仮にも友人であるゼルダをその日のうちに呪おうとするとは・・・くんこは、とことん最悪な女である。
 夕食の納豆をすべて平らげたくんこは、さっそく納豆臭い口のままわら人形作りに取り掛かった。が。
「えっと・・・・・・・・・・ここを糸で締めて、針で・・・・・・・・・・・・・ブスッ・・・・・・・・・・・・・・・・・ギャア――――――!!血――――――!!!」
 例のごとくくんこは不器用だった。もうお約束的に針で指を刺しまくっている。
 アパートには、夜中くんこの悲鳴が響き渡っていた。

 そんなこんなで朝。
「できたぁ・・・・・・(泣)」
 一晩かかってやっと完成したようだ。しかもところどころがかなりいびつな形状になっている。ひとことで言えば「ヘタクソ」だった。
 しかしくんこはいいしれない満足感に浸っていた。さっそくわら人形に釘を刺してみようと思い立ったところ・・・
「あ―――――!!!もう8時10分だぁ――――――!!!!」
 もちろん今日も学校はある。ただ今の時刻8時10分。
『こんな転校早々から遅刻してたらリンクくんにだらしない女だと思われちゃう!』
 やばい、やばすぎる。もうどうあがいても間に合わない・・・・と、「普通」なら思うところだが、なにしろここはゲームの国。普通では考え付かないことが日常的に起こる所なのだ。
 くんこはまず、電話をかけた。
 するとわずか3分後、くんこのアパートの前に、ファルコンの駆るブルーファルコンが到着した。くんこは、タクシー会社に電話していたのである。
 くんこは急いでブルーファルコンに乗り込み、学校まで送ってもらった。
「へい、860円です!」
 くんこは軽い財布の中から金を払い、教室まで走った。
 ガラララララララ・・・ハァハァ・・・・・・・
 ただ今の時刻8時19分。1分前でぎりぎりセーフ。
「はぁ・・・・・・まにあった・・・・」
 疲れきったくんこは、カバンを置き、そのまま突っ伏してしまった。ふと、横目で隣を見ると、そこにはくんこの愛しのリンク。今日は遅刻しなかったらしい。座ってなにやら本を読みながらニヤニヤしている。
 リンクを見たくんこは、なんといきなり元気があふれていた。まったく、かなり単純なやつである。
 ふと、くんこの顔に髪がかかった。
 顔を上げると、そこにはゼルダの金色に輝く美しい長髪があった。
『あ、ゼルダちゃんだー。あいさつしてみようかなぁ』
「お、ぉ、おはよー」
「おはよう、くんこちゃん!」
 ゼルダはにこやかに返してくれた。
『あ、返してくれた。ウレシーv』
 すっかりゼルダが恋敵だということも、自分が呪いをかけようとしていたことも忘れ、そんなことを思っているくんこであった。

 新学期2日目からは、さっそく授業がある。
 まず1限目、いきなり数学である。
「きりーつ、れーい。お願いしまーす」
 担当はおじぞうバッジだ。おじぞうバッジはなんと、しょっぱなから中1の復習テストをすると言い出した。
「え―――――!!!」
 クラスで巻き起こるブーイングの嵐。もちろんくんこも参加している。しかしそんな中、ゼルダだけが口元に不敵な笑みをうかべていた。
 ―――40分経過。
「やめー!答えを配ります」
 採点してみると・・・・・・・くんこは53点。まあまあ普通である。リンクは6点。・・・・・・・・もっと頑張るべきであろう・・・;ゼルダは・・・・なんと、97点!!
 強すぎる・・・・・くんこに勝ち目はあるのか・・・・!?


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