第2話 まさに急展開なり



 53点のテストをながめながら、溜め息をつきまくるくんこ。頭脳ではまったくゼルダに勝ち目がないと悟ったのだった。もうどうにか他の部分でリンクのハートを射止めるしかない。しかし、容姿端麗、頭脳明晰、まさに才色兼備のゼルダには・・・悔しいが、到底かないそうにもない。本当に、このままでは一生リンクの心がくんこに傾くことはないと思われる(くんこは性格悪いし)。
 しかし、恋愛経験ゼロのくんこには、どうすればいいかわからない。
 とりあえずくんこは、学校の帰りに書店に立ち寄り、さまざまな少女漫画を買いあさった。しかもすべて第1巻である。どうやらくんこは、少女漫画から恋愛のコツを得ようと思ったらしい。実に奇抜な発想である・・・・・。
 なるほど、第1巻には実にさまざまな出会いが載っている。
 中でもくんこは、家が隣同士の男女の漫画を読みふけった。
「ふむふむ・・・となりの部屋と隠し扉でつながっていて・・・そこから出入りを・・・・・・・と」
 思い立ったが吉日(?)、くんこはさっそく部屋の壁を探り始めた。リンクの部屋に面している側の壁にある家具類はすべてどかし、壁のつなぎ目まで丹念に調べた。さらにははしごをかけ、天井やベランダの仕切り、排気口まで、つながっていそうなものはすべて確認した。が、もちろん扉なんてあるはずもない。
「・・・ないのなら造るまで・・・・・・・・・!!」
 造れるはずがない。
「ならばトンネルを掘って・・・・・・!」
 ここは2階である。
「なら・・・・・・・ならぁ・・・・・・・・・」
 どうやらネタが切れたらしい。部屋をつなげるのをあきらめたくんこは、家具類を元に戻し、おとなしく他の漫画を読みはじめたのだった。

 20分経過―――――と、その時、
「ギャグ漫画の代名詞(←違)、ホレ薬だわ―――――!!!!」
 くんこの唐突な叫びが、夜の町を駆けめぐる。
「ここはゲームの国、きっとどこかにあるはず、ホレ薬!」
 あほな発想だと思うが、たしかにここはゲームの国、何でもありなのである・・・。
 よい方法を発見したと喜ぶくんこは、ルンルン気分で床についた。
 もちろん、ゼルダを呪うのも忘れずに・・・・・。

 ―――――朝である。くんこは、今日は寝坊しなかったらしい。
 学校へ行く準備を終え、のんびり朝のニュースを観ていると、
 ピーンポーン・・・・・
『あ、誰かなぁ、こんな朝はやくに・・・?』
「はぁーい、今でまぁす!」
 急いで鍵を開けると、な・な・なんと、そこにはくんこの愛しのリンクが!!
「くんこちゃん、おはよう!今日いっしょに学校行かない?」
「・・・・・・・・・・!う、うん♪」
 くんこは飛び上がりたい衝動をなんとかこらえた。
『キャ――――vリンク君私をさそってくれるなんて・・・・・vもしかして私に気があるのかな!?いや~んvv超ウレシ―――――v今日は朝から最高にいい日だわぁ~vvv』
「エヘv実はもう準備できてるのvさ、行こう♪」
 精一杯のブリッコ声を出したくんこ。出しすぎて、途中で声が裏返ってしまった。リンクはというと、このくんこの気遣いにはまったく気付く様子もなく、ただへらへらと立っているだけであった。

「BOSS~幹部~;あぁ~何でクラス離れ離れなんだよぉ~!」
「あの先公!同じクラスにしろっていったのによ・・・・」
「休み時間にはぜったい集合しようね!」
「うちとカナエ、幹部とBOSSで一緒になれたんだから、ま、いいんじゃない・・・?」
 朝の静まった廊下で別れを惜しんでいるこの4人。どうやら2日遅れで転校してきたらしかった。よほどクラスが離れたのが惜しかったのか、一向にそこを動こうとはしなかった。
 今は全校朝学活の時間である。
 広い廊下には、4人の声だけが響いている。教室にいる人々にとっては、さぞ迷惑なことであろう。
「やっぱこなけりゃよかったよー。なぁガッちゃん」
「まったく・・・・ねぇ・・・・・」
「・・早く教室へ入りなさい!」
 長谷野がいきなり話にわって入ってきた。
「BOSSさん、幹部さん、4組はこっちですよ!カナエさん、ガッちゃんさんは早く5組へ行きなさい!!」
「ちぇっ・・もう行かなきゃなー」
「じゃ、またねー」
 BOSSと幹部は長谷野にしっかりにらまれながら、教室へと入っていった。

「紹介します、BOSSさんと幹部さんです」
「あーよろしくーでありますです」
 ・・・・・・・・どうやらこの二人、変人らしい・・・・・・・・。
「では席は・・・・・あそこへ座ってください」
 くんこは、この転校生のことなど、まったく頭にはいっていなかった。今朝のリンクとのことで、頭がいっぱいだったのである。
 した話といえば、別にとりとめのないただの雑談だったのだが、なんとくんこは、リンクの発した言葉一つ一つを、すべて暗記していたのであった。
『ん~♪リンクくんったら、くんこちゃんて、けっこう料理がうまそうだね、なんてぇーvvキャ――――vvvやっぱ私とケッコン・・・・・・ウフフv』
 とどまるところを知らぬくんこの妄想は、その日一日中続いていたのであった。

 その日の帰り道。
 くんこは、なぜかリンクとゼルダと、3人で帰っていた。くんこはゼルダがいるのがかなりきにくわなかったが、愛しのリンクの隣で歩いていられるので、上機嫌この上なかった。
「あ」
 リンクが前方に何かを発見したようだ。見ると、それは・・・・・小さなゲロの水たまりであった・・・・・;辺りにはかすかにゲロの異臭がただよっている。
「あらぁ・・・何これ・・・・・・汚いわね・・・・・・・;」
「うっかり踏まないように気をつけないと・・・・」
「・・でも、いくらなんでもこんなあからさまにあるんだから、踏む人なんていないよ」
 と、リンクが言った矢先だった。
 なんとゼルダは自分のお嬢様スカートを踏みつけてしまい・・・・・・・・バランスを崩して・・・・・・そのまま・・・・・ゲロへダイブ!!!
「キャアァァァァァァァァァァァァァァァァァ!!!!!」
 ゼルダの悲鳴が静かな町の静寂を破る。
「ゼルダちゃん、大丈夫!?」
 ゼルダのスカートは、ゲロでべっとりと汚れていた。ゼルダは今にも泣き出しそうである。ゼルダのつけている香水の香りとゲロの臭いが混ざり合って、思わず顔を背けるほどの異臭が付近一帯を満たしていた。
「あぁぁ~もう~最悪だわ~;;」
「ちょっとまっててよ、ゼルダ」
 リンクはカバンの中から真っ黒でボロボロの雑巾を取り出し、それでゼルダのスカートを拭こうとした。すると・・・・・
「キャ――――!!リンクがセクハラしたぁ―――――!それに何この汚らしい雑巾!!もう最低ね!!大嫌い!!」
 な・・なんと、ちょっとスカートに触れただけなのだが、それをゼルダはセクハラと感じたらしい・・・・・・・。リンクは・・嫌われてしまった・・・・・・・・!!
『やったぁ~♪これでリンクくんは私のものvvv』
 くんこは心の中で万歳三唱をくりかえしていた。
 突然ゼルダにキレられてしばし呆然とするリンク。しかし、人の親切心を踏みにじられて黙っていられるわけがない。
「ふん!なんだよこのブリッコ!キモいんだよ!!」
 リンクが逆ギレを始めてしまった。こうして二人の喧嘩は勃発。
「いいじゃないのよブリッコしたって!私可愛いんだから・・・!!」
「うっわー自分で可愛いと思ってんの!?どこが可愛いんだよブース!いっぺん鏡見て出なおしてこいよ。なぁくんこちゃん」
「・・・え―――――・・・・・;」
 いきなり自分に振られ、くんこは言葉につまった。くんことしてはもちろんリンクの味方なのだが(現にゼルダの方が悪い)、ゼルダにも嫌われてたくはなかった。
「ちょっと!それはひどいんじゃなくて!?あなた本当に女を見る目がないのね!あなたこそ鏡見て出なおしてきたら!?ねぇ、くんこちゃん」
 ゼルダまでくんこに訊いてきた。
「う~ん・・・・・・」
 さらに困るくんこ。と、そこに
「君たち、何をもめてるのかい?あぁ、リンクくんとゼルダちゃんじゃないかぁ!」
 王子で、ナルシストで、かっこいい(?)と評判の、同じクラスのマルスが来た。その場にはくんこもいたのだが、マルスはくんこの名前を呼ぶことはなかった。くんこはかなりショックを受けた。
 マルスを観とめたゼルダは、いつものおしとやかなお嬢様に戻り、
「まぁ、マルスv」
 とブリッコしながら嬉しそうに言った。
「どうしたんだいゼルダちゃん、こんなところで。・・あぁ!ゼルダちゃん、服が汚れているじゃないか!!それじゃあ町中を歩くのもつらいだろう?これでよければ僕のコートを貸してあげるよ!」
 そしてマルスはこの暑いのに季節外れの毛皮のついた冬物コートをゼルダの肩にかけた。
「まぁ、なんて優しいv誰かさんとは大違いだわvv」
 ゼルダはいやみな視線をリンクに送った。リンクもすかさず睨み返す。二人の間には険悪なオーラが漂っていた。
「さあ、ゼルダちゃん。僕の城においでよ。素敵なドレスのなかから君に一番似合うやつをプレゼントしよう」
「ありがとう、マルスvv」
 とまあ、こんな感じで二人には“愛”が芽生えていた。
 二人はそのまま寄り添って帰っていった。
 残されたのは成り行きがつかめずポカンと口を開けて立っているくんこと、ブツブツとゼルダの悪口をつぶやいているリンクであった。
「・・・・ハァ・・・あいつ、ホントイケメンに目がないんだよなぁ・・・・・。一応付き合ってはいたんだけど、強引なやつで・・・・ハァ・・・」
 重い空気が流れていた。
「ね、ねぇリンクくんっ・・!ゼルダちゃんは、所詮リンクくんの本当の運命のヒトじゃなかったんだよ!ね、だから元気出して!!」
『本当の運命のヒトは目の前にいるわよぉvvv』
 口ではそういいながらも、そんなことを考えているくんこであった。
 それにしてもゼルダがあそこまで性格ブスだったなんて・・・誰が考えたであろう・・・。
 くんこは重いこの空気をなんとかしようと、話題を変えることにした。
「ねぇリンクくんっ!あ、あのねっ、リンクくんの誕生日って・・いつなのっ?」
「・・・・・・・今日・・・・・あ~あ、別れる前にゼルダからプレゼントもらっておけばよかった・・・・・・・」
 ただでさえ重い空気がさらに重くなった。そこでくんこはおもいきって言ってみた。
「・・ねぇ、じゃあリンクくんの部屋でパーティしない!?私がお祝いしてあげる!ケーキ屋さんはアパートのすぐ近くにあるし。ねっ!そうしよ!!」
「本当・・・?いいのくんこちゃん・・・?」
「もちろん!今日は年に1度の誕生日じゃない。もちろんOK!!」
 てなわけで、リンクの誕生日パーティ開催決定。くんこはもう舞い上がるほどうれしかった。
『あぁ、リンクくんと二人っきりになれるなんて、超ウレシー♪リンクくんも今は彼女ナシだし・・vチュウvとかしちゃおっかなぁ――――vvイヤ~ンvv・・・あ、何着ていこっかなぁ・・・ウフフv』
 くんこ・・・やらしすぎである・・・;
『とりあえず、シャンパンとケーキ買ってきて~クラッカーパーンとやって~食べ終わったら~・・・・(v)・・・・というのが計画vvウフフ、うまくいくとイイナ♪』

 おしゃれなワンピースでばっちりきめたくんこ。ケーキとシャンパンも買ったし、あとは・・・
「あ!プレゼント!!」
 くんこは急いで近所の小物屋に走った。そこで、迷わずポニーの置物と・・に・・日本刀を購入・・;いくらなんでもリンクに日本刀は似合わないと思うが、そこのところはあえてつっこまないでやろう。
『それにしてもまさかリンクくんのお誕生日を祝えるとは思わなかったvやっぱりゼルダちゃんを呪った甲斐があったというものねv』
 ゼルダは友達だが、リンクのためなら犠牲になっても良し!・・・・最低だぞ、くんこ!!
 手にはカバンとケーキの箱。もう片手にはシャンパンとプレゼントの包みを抱え、いざ出陣である。
『あぁ・・ドキドキする・・・』
 ピーンポーン・・・・
「あ、くんこちゃん・・・・・入って、ちょっとそっちの部屋で待っててくれる?」
 リンクは少し恥ずかしそうにしている。
「え?何で?」
 とりあえずくんこは、家に足を踏み入れた。しかしそこは・・・あまりにも恐ろしい散らかりようだった。
「ご・・ごめんねくんこちゃん・・・。一人暮らししてるとすぐこうなっちゃって・・・」
 恥ずかしそうにリンクは言う。
 くんこは密かにほくそえんでいた。これは、自分の家庭的な一面をリンクにアピールするまたとないチャンスである。くんこは、燃えていた。
「リンクくん大丈夫!私さーっと片付けちゃうから!こういうの得意なの!ね!まかせてよ!!」
 くんこはそう言い、部屋に散乱している物を片付け始めた。それにしても恐ろしい速さである。くんこのまわりの物は、どんどん片付けられきれいになってゆく。
 くんこは最後に衣類の山にとりかかった。と、その時・・・
「キャァァァァァァァァァァ―――――vv!」
 くんこが突然悲鳴を上げた。
「あぁっ!俺のパ○ツ!!」
リンクはあわててくんこの手からパ○ツを奪いとる。
「・・・・・・・・」
「・・・・・・・・」
 二人の間に気まずい空気が流れる。パ○ツなんか見つけなけりゃよかった・・と激しく後悔するくんこであった。
 しかし実のところをいうと、先ほどのくんこの悲鳴は歓喜の叫びともとれるのである・・・・。(実際それもある)
「・・・・ごめんね、リンクくん・・・・・」
「・・・・うん、いいよべつに・・・・・・・」
 そうはいっているものの、リンクはやはりショックを受けているらしい・・・。場の空気はいっそう気まずくなった。
「リ・・リンクくんっ。そろそろパーティ始めよっか!」
「うん・・・・・」
 気をとりなおしてケーキを飾るくんこ。だんだん場の雰囲気も和み、リンクの顔にも笑顔が戻ってきた。
「ハッピーバースデーリンクくんvv!」
 くんこは買いたてほやほやのプレゼントをリンクに手渡した。
「ありがとうくんこちゃん!」
「ね、開けてみてv」
 リンクは包み紙を開き、中から出てきたポニーの置物を見ると、うれしそうに顔を輝かせた。しかし、包みのそこから顔を出した日本刀を見ると、一気に顔にたてせんがはいった。
「あ・・・ありがとうくんこちゃん・・・・・」
『リ・・リンクくん・・プレゼント、気に入らなかったの・・・・・・?ヒドイ・・でも、リンクくんの好みをぜんぜん分かってなかった私が悪かったんだ・・・。ごめんね、リンクくん・・・・・』
 なぜか泣き出しそうな顔をしているくんこと、日本刀をもてあましているリンク。見事に重くなった雰囲気のまま、黙々とケーキを食べ、片付けをし、リンクの家をでた。
「失敗だった・・・・・・」
 くんこの気持ちは沈みきっていた。
 家に戻ったくんこは、カバンの中身を部屋にぶちまけてみた。結局飲むことのなかったシャンパン、リンクと騒ぐはずだったクラッカー、隠し撮り用のカメラ(オイ)、そしてどさくさにまぎれて頂いてきたリンクの靴下の片方・・・・。靴下は片付け中にくすねてきたらしい。完全なストーカー行為である。
『リンクくんの靴下・・・・。とってもいい香り・・・・・』
 ・・・・・くんこは、リンクの靴下の臭いを嗅いで、癒されていた・・・・・・・・;いくらなんでもやりすぎだ・・・・・。
 くんこは鼻いっぱいに靴下の臭気を吸い込み、満足したのか、靴下をまるでクリスマスのようにまくらもとにぶら下げて眠りにつくのであった。




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