第4話 組織の恐怖


 前回うっかり本音を口にしてしまったくんこ。今、くんこはトイレでBOSSと幹部にシメられているのである。
「せっかく助けてやったのに。恩を忘れたのかよ?」
 くんこに言い寄る幹部。
「だってあなたたち怪しいし、変なんだもん」
 くんこも負けじと言い返す。すると幹部は不敵な笑みをかえした。
「当たり前だろ。俺たちは怪しい組織なんだから」
「そ・・組織!!?」
 くんこは思わずひいた。どうやら『ヤクザ』関係だと思ったらしい。それはいくらなんでも考えすぎである。
 先ほどまで黙って見ていたBOSSがくんこに歩み寄った。
「・・フン・・さっきから聞いてれば・・・そんなこといってるから友達いないんでしょ。うわー」
 BOSSの毒舌が火をふいた。組織の皆でさえ耐え切れないほどの威力をもつ毒舌。ましてや慣れてもいないただの人では、そのショックは計り知れない。過去1回BOSSはこの毒舌で一人を自殺未遂まで追い込んだとか。
「根が卑屈っていうかぁ。友達できないタイプだよね。自己中心的、みたいな」
 くんこもやはりかなりのショックを受けていた。そばにいる幹部でさえ、関係ないのに脂汗を流している。これでもまだまだ序の口なのだろう。
『怖い・・・・』
 くんこはそのままへたりこんでしまった。
「で、だからあんたみたいのはー・・・あ、もうへばっちゃってる。情けないやつー。行こ、幹部」
 そう言ってBOSSと幹部は行ってしまった。くんこは腰が抜けて立ち上がることができなかった。さらに、さっきのショックがまだ残っていた。くんこはしばらく放心したようにトイレに座り込んでいた。

 くんこが教室に戻ったのはそれから1時間後のことである。
「くんこさん、1時間も授業をサボって何をしていたのですか!!」
 長谷野糞婆の説教が始まる。本当のことを言えばそれまでなのだが、正直にそういえばぜったいまたいじめられるだろう。
「ちょ・・ちょっと体調が悪くて・・・」
「なら担任の先生なり誰かに告げてから保健室に行きなさい!黙って行ってはいけません!!」
「は・・はい・・・」
 怒られてしまったくんこ。それもこれもあの二人のせいである。
 その二人といえば、くんこのことなどどこ吹く風でゲームボーイアドバンスをしていた。(こいつら問題児)

 その日の放課後、くんこはリンクのお見舞いへ出かけていった。
『何で昨日のうちに面会させてくれなかったのよ、あの医者。吐き気が止まらなくたってリンクくんにあいたいのに・・。・・・はっ・・!もしかしたらあの医者は私とリンクくんの仲を引き裂こうと・・・・・・!なんてやつなの・・・・!!』
 ・・・いくらなんでもそれは考えすぎである。というか、まずありえない・・・;くんこは思い込みが激しすぎである。
 くんこの手には、授業中にこっそりかいていた手紙と、なぜかケーキが。ケーキってオイ。ただでさえ吐き気が止まらないというのに、もっと悪化させる気か。しかしくんこはもちろんそんなことに頭がまわるわけがない。ただ単にリンクを喜ばせたいだけであろう。
 リンクの吐き気はなんとかおさまったようで、くんこは面会を許された。
「リ・ン・ク・くんv大丈夫?」
「あ、くんこちゃん!」
 なんとリンクは一昨日のことをすっかり忘れてしまっているようだ。やはり馬鹿なのだろうか・・?
 それにしても本当に心からくんこの見舞いを喜んでいるようである。リンクのものおぼえが悪かったおかげで、くんことリンクの仲は悪くならずにすんだ。これは、良いことであろう。
「わざわざお見舞いに来てくれたんだ。うれしいなぁ」
 そういってにっこり笑みを見せるリンク。しかし、リンクはだれが見舞いに来ても同じことを言うだろう。来てくれればだれでも歓迎する、つまりくんこだからどうだというわけではない。
 しかしくんこはというと・・・
『キャ――――vリンク君が喜んでくれたぁvvイヤ~ンvマジで来てよかったぁ~♪私の、この私の訪問をこんなに喜んでくれるなんてvリンクくんやっぱり私のこと・・・・キャ――――vvv』
 もううかれまくりであった;
「リンクくん。これ、お見舞いv」
 くんこはリンクにケーキと手紙を渡した。
 授業中、長谷野の目をくぐって書いたこの手紙には、こう書かれていた。
“リンクくんへv 調子はどう?だいぶよくなった?リンクくんに会えなくて、超サビシイ・・・・・(;-;)早く元気になって、また一緒に学校いったりお話したりしようねv勉強とかも私が教えてあげるv明日もお見舞いに行くからねvvじゃあね、バイB―――♪ byくんこv”
 ・・・・・・・・・・・・・。・・とまあ、こんな感じの内容であった。(くんこ暴走しすぎ;)
「手紙は後で見ておいてねvじゃ、ケーキ食べよっか!」
「う、うん・・・・」
 リンクは食事制限をされていたのだが、せっかくくんこが持ってきてくれたのだから、食べないとわるいだろう。リンクも意外と優しいところがあったのだ。
 と、いうわけで二人でひときれづつケーキを食べた。ケーキはふたつともリンクの大好きなチョコレートケーキである。そういうところもちゃんと調べがついているのだ。さすがといっていいだろう。
 二日ぶりの会話である。自然と話も弾んだ。なんともいい感じである。
 しかし、そのムードは直後、最悪的な方向へ暗転するのである。
「ねぇくんこちゃん。手紙、読んでもいい?」
「・・・・・恥ずかしいから・・私が帰ってからにしてくれる?」
「うん、わかった。じゃあそうするよ・・・・・・・・・うっ・・・・!!」
 とつじょリンクの顔色が真っ青に変わった。リンクは苦しそうに腹を抱えている。
「リンクくん、大丈夫!!?看護婦さん呼んでく・・・」
「うえ―――――――――――――!!!」
「キャァァァァァァァァァァァァァ!!!」
 せっかくおさまったはずの吐き気がくんこの持ってきたケーキのせいでぶりかえし、リンクはすべてもどしてしまった。ベッドがゲロに染まりゆく。ゲロ特有の臭いがくんこの鼻をついた。しかしくんこはそんなことより、もっとショックなことを発見していた。
 リンクのひざの上で、くんこの愛の手紙がゲロまみれになっている。くんこが、心と愛vをこめて丁寧に、一所懸命に書いた手紙が・・・・・・・;
「リンクさんっ大丈夫ですかっ!?」
 入ってきた医師たちに追い出されるようにくんこは病室を出た。
 くんこの双眸には涙があふれていた。よほどショックを受けたのであろう。
『・・・・・ハッ・・・!なに泣いてるの私!!リンクくんは病人だし、ケーキを持っていった私が悪いのよ!リンクくんは何も悪くない!そうよ!これは私とリンクくんがLOVEvになるためのひとつの試練なのよ!!きっとそうだわ!!私、頑張ろう!こんどはちゃんとするんだから!!』
 なんて立ち直りの早いやつ;
『・・もしかして、これを機会に恋が発展したりしてv・・・ウフフフ・・・vv』
 ゲロを機械に恋が発展するわけが無い。想像力がよい点だけは認めてやろう・・・・・・。
 そんなあほな想像をしながら、くんこの夜はふけていくのであった。

 そして次の朝。
「キャア~ア~ア~!!遅刻する~!!」
 あほなくんこ、リンクとハーレムvな夢を見ていて、起きることができなかったらしい。
 とにかくくんこは爆走していた。朝食を食べていないのでおなかがなったが、そんなことどうでもいい。とにかくくんこは走った。
 しかし、次の瞬間、ボテッッという鈍い音とともに・・・・・こけた。
「いったぁ~い!!ヒザすりむいちゃったぁ~!!」
 ひざをかかえて座りこむくんこ。ヒザからは少し血がにじんでいる。
「おいくんこ、大丈夫か?」
「うん・・・・・あ・・・!」
 くんこのそばに、いつの間にかカナエがたっていた。昨日、幹部たちにいじめられたくんこは思わず後ずさり。しかし、いたのはカナエ一人で、他にはBOSSも幹部もいない。
「立てるか?」
 カナエがくんこに手を差し出した。くんこはその手をつかんで立ち上がった。
『カナエって・・けっこうやさしいんだぁ・・・・』
 ほっとしたくんこは、
「ありがとう・・。いっしょに学校行こう」
と言った。
 しかしカナエは、くんこの手をつかんだまま、学校とは反対方向へ進んでいく。くんこはいやな予感に取りつかれた。
「ちょ・・ちょっと・・・・・そっちは学校じゃないよ・・・。早く行かないと遅刻しちゃうし・・・・・」
「今日は学校いかねーよ、オレ。これからBOSSたちとゲーセンで待ち合わせしてるんだ。くんこも来いよ」
「ええっ!それってサボリ!!?・・・・・・・って何で私まで!」
「いーだろいーだろ」
 くんこに有無をいわせず、カナエは不良のたまり場として有名なゲームセンターへ足を踏み入れた。そこには・・・BOSS、幹部、ガッちゃんがいた・・・。くんこは血の気が引いた。
「おくれちまったぁ。ゴメン、ゴメン」
「別にそれはいいけどよ。で、何でくんこがいるんだよ」
 幹部がくんこを見る。くんこは今にも泣きそうだった。
「あのさ~、そいつ組織に入れたらどうかなぁと思ってさ」
 カナエが言った。
「えぇぇぇ!!!組織に入れる!?私を!?」
 くんこが叫んだ。
「・・・ってなんでこんなことになったんだよ」
「え~?だってくんこのこと気に入っちゃったし。いいだろ、別に」
 カナエがBOSSのほうを見る。最終決定をくだすのはBOSSだ。BOSSは頭のてっぺんから足の先まで、じっくりくんこを眺め回している。どうやら悩んでいるようだ。
「・・・・カナエは、何で気に入ったんだよ。こいつを」
「なんかカワイイじゃん。バカみたいなところとかぁ」
「おまえ、本当にフシュギとかバカモンとか、バカみたいなやつ好きだよなぁ・・・・」
 くんこは「バカみたい」という部分にかなり傷ついていた。それにしてもフシュギやバカモンとはは何だろう。
「みんな、聞いて」
 BOSSが口を開いた。みながいっせいに注目する。くんこも緊張の一瞬だ。
「くんこを、正式に組織のメンバーにします!」
「やったぁぁ!!」
「・・・・・・・・・;」
 くんこは言葉を失った。なぜ、自分がこんなめにあわなければならないのだろうか・・・・・。涙がこみ上げてきた。
「よろしくね、くんこ」
 ガッちゃんがくんこの背中を叩く。
「しょーがねーなー・・・これからみっちりしこんでやるからな」
 幹部もまんざらではなさそうだ。
「みんな静かに!」
 BOSSが言った。
「じゃあ、これから毎日くんこを洗脳して立派な組織のメンバーにするよ!いい?」
「意義な~し!」
『せ・・せ・・洗脳・・・・・』
 くんこは本当に倒れそうだった。
「今日の活動は思いっきりゲームすること!くんこも遠慮なく好きなのしていいんだよ」
 組織はちりぢりに散っていった。
『チャンス!今なら逃げられる・・!』
 くんこはそっと出口へ近づいていった。しかし・・
「くんこー!いっしょにスマブラしよー」
 BOSSに強制連行されてしまった。これでは逃げられない。くんこはおとなしくゲーム機の前に座った。―――結果は・・・いうまでもない。
「次はオレとぷよぷよだー」
 次はカナエにつかまってしまった。―――これも結果は・・・・いうまでもない。
「くんこ、俺とポケモンバトルしようぜー」
 今度は幹部につかまった。ポケモンはもちろん本物を使ってバトル。―――これも結果は・・・いわないでおこう。
 そんなこんなでもう夕方である。
「じゃあね~」
「また明日~」
 それぞれの帰途につく組織。くんこもやっと開放されていた。もういろんなことがありすぎてへとへとに疲れきっていたくんこ。
「くんこ」
 後ろから声をかけられくんこは振り向いた。
「明日もポケモンバトルやろうぜ。大丈夫だよ。俺のほかにもみんな持ってくるから、ポケモン」
「・・・はい・・」
 断りたくても断れない。くんこはうなずくしかなかった。
 くんこの苦労の日々はまだ始まったばかりである。



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