第6話 病院ゲロ事件(前編)


「うあー、何この臭い。くっせー;;」
 大量のくんこのゲロは、便所をぬけ、各病室まで臭いが届くほどだった。しかも相当臭い。この臭いで吐き気をもよおした人約数十名。容態が悪化し、昏睡状態となった人は1名。これだけでも惨事である。
 ゲロの臭いが嫌いなBOSSは、今にも失神しそうだ。他のメンバーも鼻をつまんで顔をしかめている。
「は・・早くここでないと・・・ウチ死ぬ・・・・」
「BOSSー!」
「これ、吐いてるのくんこだよなぁ。あいつどんだけ吐いてんだよ。たった1本食っただけなのに。そんなに嫌いだったのか・・?」
 4人はBOSSをかばいながら、病室の窓へむかい、そこから飛び降りた。ここは3階。助からない・・・と思いきや、したで待機していた幹部とカナエのMSの手に見事着地。組織、病院脱出。
 そのころ病院では、アナウンスが流れていた。
“たっ・・大変です!ただ今病院中を原因不明の毒ガスが満たしています!患者の皆様、直ちに病室のドアを閉め、窓を開け放してください!1・2階におられる方で、歩行が可能な方は、早く病院から出てください!歩行不可能な方は医師が迎えに参りますので落ち着いてください!脱出経路は・・・・・”
 このアナウンスにより、1・2階の医師、患者脱出。しかし、まだくんこのいる最上階の3階にはたくさんの人がとり残されている。ついには、3階の人を救出すべく、はしご車が呼ばれた。

 そのころの便所は、とてつもないことになっていた。床にはゲロのじゅうたん。個室の便器はゲロに埋もれて使い物にならなくなっている。ゲロを吐き散らしながら、くんこは意識が遠のいていくのを感じた。閉めきった便所には、廊下以上の臭いが充満し、とても常人では耐えられない空間となりはてていた。その空間にいたさすがのくんこにも、限界がきたのだ。自らのゲロの臭さとキモさで倒れてしまったくんこ。ゲロは止まったが、これはヤバイ状況である。
 リンクは病室にいた。もちろん、アナウンスどおりにドアは閉めてある。のうてんきなリンクは、別にこの事態を特別深刻なものとは考えていなかったらしい。
「なんなんだよー。廊下はそんなに危険なのか?毒ガスって医療ミスで出たんじゃあ・・・。・・・でも・・・・う・・・ぁぁ・・・もう限界だぁぁぁぁ!!」
 リンクは言うなり、ドアを開け、病室を飛び出した。向かう先はもちろん便所。しかもくんこのいる便所である。廊下に出るなりリンクは、ひどい悪臭に襲われた。
「うお!!くさっ!!どうなってるんだ!?・・・そんなことより・・もれるぅぅぅ!!」
 ついこの間まで自分も日夜ゲロを吐き続けていたため、においにはなれていたリンク。
 しかし、便所に近づくにつれ、さらにひどくなる悪臭。さすがのリンクも限界が近づいてきていた。しかし、リンクはそれよりとにかく早く便所に行きたかったのだ。こんなになるまで我慢するからだ。
 そんなこんなでやっとリンクは便所に到達した。すると、リンクは女子便所のドアの隙間から何か白っぽく、臭い液体がもれ出ているのに気がついた。見覚えのあるこれは・・
「わぁぁぁ!!なにこれ!ゲロじゃん!!」
 リンクは好奇心も手伝って、女子便所のドアを開けてみた。先ほどよりさらにひどい臭いが中からあふれ出てきた。
「・・・くんこちゃん!?」
 リンクは便所のゲロの中に倒れているくんこを発見。
「大丈・・・っとその前に・・・」
 リンクは一度女子便所から男子便所へ移動して・・・・・・・・。・・・・・・・・・・・・。それをすませると、あわてて女子便所へ戻り、くんこの上体を助けおこした。
「くんこちゃん!しっかりするんだ!!」
 リンクがくんこの身体を揺さぶるが、くんこは目をさまさない。必死になっているリンクはいつもより勇者っぽく見えた。
 リンクはくんこの鼻の前に手をやった。
「息をしてない!こ・こんなときどうすれば・・・・・・・。そうだ!!」
 リンクは一度大きく深呼吸して・・・なんと・・くんこに・・口づけ!??く・口づけをした!!リンクは人工呼吸をするつもりだったらしい。自分の口にくんこのゲロが付着するのも気にしないでくんこを助けようとするすがたは、本当にいつもより勇者っぽかった。
 と、その瞬間、くんこがはっとしたように飛び起きた。
「・・・・!!キャー!なにここ・・・!!ゲロだらけで・・・おえ――――っ!!」
「うあぁぁぁあくんこちゃんこれ以上吐かな・・・・うえ――――っ!!」
 なんと、くんこが吐いた拍子にリンクまでもがもらいゲロ!やばい、やばすぎる!!
 リンクの分もプラスして、ゲロの量はいまや窓からあふれるまでになっていた。
「助けてぇ~;;」
「くさいよぉ~くさいよぉ~」
 3階の患者たちも、この異臭に耐えきれなくなったのか、ついにはハンカチを鼻に当て、点滴を引きずりながら病院を脱出していく。
 便所では、なおも二人が吐きつづける。
「ううっリンクくん・・・・。うっ!おうえ―――;;」
「くんこちゃん・・・うえ―――おえ―――;;」
 ゲロは、もう二人の肩の高さまで到達していた。このままではゲロで溺れ死ぬのも時間の問題だ。(物理法則を無視してるとかそういうことは突っ込まないよーに)
 病院の外では、てんやわんやの大騒ぎ。病院内からあふれ出たゲロで、街まで異臭に包まれていく。とうとう消防署にまで通報されて、はしご車で逃げ遅れた患者たちを救出するというしまつ。マスコミもやってきて、全国に生中継。なぜか『決死の潜入 ゲロ病院に調査隊が!』という特番まで組まれてしまった。
 そんなことをしている間に、病院から流れ出たゲロの中に、人が発見された。リンクであった。リンクは
「くさいよ~」
と言いながら、なおもゲロを吐き続ける。リンクはそのまま別の病院へ搬送されていった。
 リンクはその際うわ言で
「まだくんこちゃんが・・・・」
と言ったが、小声だったため、だれの耳にも届いていなかった。
 と、そのとき、
「ガラスにヒビが・・・」
誰かが言ったと同時に、パリ~ン!!とガラスが割れ、中から大量のゲロとともにくんこが飛び出してきた。
 すでにくんこの意識はなかった。それに、息をしていない。
 すぐに医師たちによる応急処置が施され、くんこは息を吹き返した。くんこはもうゲロが止まっていた。くんこはそのままリンクと同じ病院へ運ばれていった。

 この『病院ゲロ事件』は、死者12人(内一名医師)、重態2人、行方不明者1人を出す大惨事となった。
 ゲロにまみれたこの病院は、きれいに掃除されたあとも、ご町内の人々から『ゲロ病院』とよばれ、敬遠されたという・・・・・。

 次の朝、病院には(ゲロ病院ではない)、メンズポッキーを食べるくんこと組織の姿があった。
 くんこはあのあと、2時間後に意識を取り戻した。ゲロの吐きすぎで死ぬほど空腹になっていたくんこは、山のように食事をむさぼり食い、腹を満たした。面会時間になると、すぐに組織がお見舞いに来てくれたのだった。
「ホント、昨日は大変だったよなー」
 ポリポリとポッキーをかじりながらカナエが言った。
「あれって、私たちのまっちゃポッキーが原因なんだよね;」
 ガッちゃんがつぶやいた。
「すっごくキモかった・・・。ウチ、思い出しただけで吐きそう・・・」
 BOSSは考えただけなのに、もう青くなっている。幹部は次のポッキーに手を伸ばしながら、
「12人死んだんだってさ。くんこ捕まるかもな」
と、さらりと言ってのけた。
 リンクのことを考え、ボーっとしていたくんこは、はっとした。
「そうか・・私のせいなんだよね・・・」
「大丈夫だよ。ほら、くんこ被害者になってる」
 テレビのニュースを見ながら、ガッちゃんが言った。テレビでは、くんこはトイレに閉じ込められた被害者として報道されていた。
 ほっとしたくんこであったが、次の瞬間、飛びあがるほど驚いた。
「リンクくんっ!!?」
 なんと、ニュースではリンクが今回の事件の容疑者として報道されているではないか。どうやら救出された時に、ゲロを吐きつづけていたのが原因らしい。
『リンクくん・・・・・・・・』
 リンクが容疑者になったことなど気にせずに、のんびりポッキーをかじる組織をおいて、くんこはひとり自分の世界にひたっていた。
「おい!」
 幹部の声に、くんこは現実に引き戻された。
「え、何?」
 くんこは少し不機嫌だった。
「リンク裁判にかけられるんだってさ」
「・・ええ!?」
 テレビを見ると、リンクが地方裁判所にはいっていくところであった。
「ど、どうしよう!」
 くんこはおろおろするばかり。
「心配してもしかたないだろ。それにリンクはまだ14歳だからせいぜい少年院送りだろ」
「え・・・;」
「なんか文句あるのかよ?」
「い、いいえ・・・」
「あ、そろそろ帰ろう」
「じゃーね、くんこ」
 組織は帰ってしまった。一人とり残されたくんこ。まだ放心状態である。
『リンクくん・・・』
 果たしてリンクの運命やいかに!!


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