第9話 ナビィの死



「残念ながら・・すでに手遅れです。ここについたときは、もう・・・・・」
 医者は、おごそかにそう告げた。
「そ・・そんな・・・・ナビィ・・・・・」
 リンクはその場に座り込んでしまった。その双眸から涙が流れ落ちる。ナビィの遺体が寝かしつけられている霊安室にはリンクの嗚咽だけが低くひびいていた。
 くんこは、そんなリンクの肩にそっと手をかけた。
「リンクくん・・・・・・・。私がついててなぐさめてあげるから・・・・・」
 どさくさにまぎれて何を言っているんだくんこ。まったく不謹慎なやつである。もちろんくんこも悲しくないわけがない。ムカつくやつだったとはいえ、ライバルが死んでしまって、くんこも少なからずショックを受けているのだ。ただ、リンクを励ますのは自分しかいないと考え、必死で我慢しているのだ。リンクのためなら、いいやつだ、くんこ・・・・・・。
 ナビィの死因はショック死だった。リンクにああ言われたことがこうもショックだったとは。
「ナビィ・・・・・ナビィ・・・・なんで・・」
 泣きじゃくるリンクと、それを涙を抑えて優しくなだめるくんこ。ふたりは、一見なかのよい恋人同士のようでもあった・・・・・。

「大丈夫?リンクくん」
「うん・・・・少し落ち着いた・・」
「よかった・・・・」
 リンクは大きく息を吐いた。
「ナビィ・・・・」
 リンクは真っ赤に泣きはらした目を手でこすった。くんこはリンクが痛ましくて、そっと目頭を押さえた。(ナビィのときは泣かずに、こんなリンクを見ると泣き出すのである、くんこという女は・・・)
「リンクくん・・あのね、死んじゃったヒトはもう帰ってこないけど、私たちの心の中ではきっと、ずっと生きてるよ。泣いちゃだめとは言わないけど、あんまり泣いちゃ、天国(地獄の間違い)でナビィが心配するよ・・・」
「うん・・そうだよね・・・。ありがとうくんこちゃん。・・・・・でも、これから一人か・・・・。さびしくなっちゃったなぁ」
 くんこはこの言葉を聞いてひらめいた。
「じゃあ、今日泊まりに行ってあげる!いいかな?」
「え、いいの?もちろん大歓迎だよ。よかったぁ、一人でいるのは、ちょっとさびしくて・・・」
 リンクは純粋にくんこの宿泊を喜んだ。しかしくんこは。
『フフvリンクくんとラヴになるチャンスだわvv』
 またいやらしい妄想をしていた。まったく、救いようのないやつだ。
 くんこはこの日始終ゴキゲンだった。(ナビィは・・?くんこ・・・)

「くんこちゃん。入って」
「うん、おじゃまします」
 くんこはリンクの部屋に入った。前回とはうってかわって部屋はきれいに整頓されていた。おそらくくんこが来るということでいそいで掃除でもしたのであろう。
「リンクくん、私今日どこに寝ればいいの?」
 くんこがきいた。
「あ・・ベッド、ひとつしかない・・・・」
 ―――ベッドはひとつ・・・。くんこは密かにほくそえんだ。こんなチャンス、もう他にはない!
「リンクくん、ご飯まだでしょvお刺身作ったんだ。食べよ♪」
「うん、ありがとう」
 とりあえず今は寝床の話題は避けておかねばならない。へたをすれば自分の部屋に戻らなくてはならなくなるからだ。そうなっては元も子もない。
 くんこは持ってきたカバンから刺身と思われる物体を取り出した。
「私の自信作なんだv」
 一口食べたリンクの表情は、ひきつっていた。
「どう?」
「味ない・・・・・・・・;」
 リンクはボソリとつぶやいた。
「えー?そんなはずは・・」
 くんこもひときれ食べてみたが、なるほど、たしかに味がない。
「ごめん、失敗しちゃったみたい。ハハ・・・;;」
 二人は黙々とまずい刺身をおかずにご飯を食べ続けた。

「先にお風呂はいる?」
「うん、じゃあお先に」
 食事後は、すぐにお風呂。これがリンクの生活リズムらしい。くんこもそれにあわせて入浴することにした。
 シャワーを浴びながら、くんこは一人でムフフとにやけていた。なんとも気味の悪い女である。入浴後の“あんなこと”を妄想しながらも、くんこはしっかり浴槽にこびりついた湯あかを採取しておくのも忘れなかった。
「リンクくんあがったよー。次どうぞー」
 リンクが風呂に入ったのを見届けたくんこは、パジャマに着替え、勝手にリンクのベッドにもぐりこんだ。
 くんこは燃えていた。きょう、これからリンクとピーvをするのだ。いや、くんこがいやでもそうさせるのだ。なんとしても、今日、この日に・・・・・!!
「リンクくんとピーvができるかもしれないなんて、超ウレシーvvリンクくん、早く来ないかなぁv」
 くんこはもうヤる気満々。もうこうなってはくんこを止められるものはなにびとも存在しない。夢はすぐそこだ、がんばれ、くんこ!!
 と、そのとき、玄関の方でなにか物音がした。
「?・・なにかな?」
 くんこは布団から顔を出した。
「おっじゃましまぁーすっ!」
「・・・・・・・へ・・・?」
「あ、おじゃましてまぁす!」
 なんと、玄関からまったく見知らぬ人が入ってきたではないか。もしや、不審者・・・・・!?
「キ・・キャア―――――!!変質者が―――!!」
 くんこは布団を頭までかぶり、叫んだ。
「は・・はぁ・・?」
「どうしたのくんこちゃん!わぁ!!誰!!?」
 風呂場から飛び出してきたリンクは、そこにいる人を見て、思わずみがまえた。やはり、リンクの知らない人だったらしい。その人はくんこに変質者呼ばわりされ、完全にあきれているようだ。
「あのさぁ・・あんたたち、なんか勘違いしてない?私のどこが変質者に見える?」
「え・・・・・?」
 くんことリンクは同時にその人を見た。・・・・・・たしかに、その人は小柄で、とても犯罪を犯すような凶悪な顔でもない。まだあどけない子供のような・・・・って子供だぁ――――!
「私はゆいこ。小学4年生!よろしく――!」
「しょ、小学4年生!?」
 二人は同時に顔を見合わせた。
「そ。今日ここに引っ越してきたんだ。ところで、あんたパンツぐらいはいたら?」
「え?・・・・・・・あっ!!///」
「キャッvvリンクくんったらぁ♪」
 リンクはあわててそばにあったタオルで前を押さえた。くんこは赤面して顔を引っ込めた。しかし、気のせいだろうか。先ほどのくんこのセリフに「ハートマーク」がついていたような・・・。ゆいこはそんな二人をやれやれといった顔で眺めていた。
 ゆいこはこのラブコメが一段楽したところで、口を開いた。
「ところで、泊めてよ」
「は?」
 リンクとくんこはまた顔を見合わせた。


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