第13話 組織のおうち(前編)


 なぜか昨日、気絶する前のことがよく思い出せない。くんこは上体をおこし、目をこすった。
 ふと、くんこの手が何かに触れた。目の前にもってきてよく見ると、それは1本のビデオテープだった。ラベルも何も貼られていないそれは、どこか禍々しい雰囲気を持っていた。くんこは何も考えず、それを持って立ち上がった。
 太陽が昇っているので、見通しもいい。くんこは出口を探すため歩き出した。

 歩くこと10分。くんこはあっけなく森の外に出ることができた。しかし、そこは見たこともない場所だった。とりあえず、そこの住宅街を歩き続けるくんこ。
「あー、おなか減ったなー」
 くんこは昨日の夕食も食べていなかったのを思い出した。とりあえず、まずはコンビニでも探すことが先決だろう。
「あれ、くんこ?」
「え?」
 くんこは聞きなれた声にふりむいた。
「ガッちゃん!?」
「昨日どうしたの?それに、なんで私の家の前にいるのさ?」
「え?ガッちゃんの家って・・・・・どこ?」
 くんこは驚いて回りの家々を見まわした。辺りにある家は、いわゆる豪邸。ここは超高級住宅街のようだ。まさか、ガッちゃんはお嬢様!!?
「ここだよ」
 そういってガッちゃんが指さしたそこは、ここら一帯でもとくに大きな豪邸・・・・・・。くんこは開いた口がふさがらなかった。
「なっ・・・なんでこんなところに・・・・・・・私でさえ安アパートなのに・・・・」
「いいから、気にしない気にしない。くんこ、服汚れてるよ。私の服貸してあげるから、着がえていきなよ」
「あ、ありがと・・・・」
 ということで、くんこはガッちゃんの服に着がえた。
「今からみんなの家行くんだけど、くんこも行こう」
「え、みんなの家?」
 組織の家・・・・気になる。まともなほうのガッちゃんの家でさえこのとおりなのだ。他のメンバーの家は、いったいどんなものなのだろうか。しかし、BOSSのいとこのゆいこの家は、くんこと同じ安アパートである。期待はできないかもしれない・・・・・・・。
 くんこは先に歩き出したガッちゃんのあとを、黙ってついていった。

「まずはカナエの家だよ」
 そういってガッちゃんは、なんと川にかかった橋の下へ降りていくではないか。まさか、カナエは水中に住んでいるのか!?
「・・ガッちゃんどこ行くの・・・・・?」
「だから、カナエの家だってば」
「家って、まさか川の中にあるわけじゃないんだよね?」
「まさか。そんなわけないじゃんか」
「ハハ、そうだよね・・・・・・・」
 笑いながらも、くんこはガッちゃんのあとに続いて橋を降りた。と、そこには鉄製の謎のフタが。
「カナエー、遊びに来たよー」
 ガッちゃんがフタにむかって呼びかけると、すぐにそのフタが開き、中からカナエが姿を現した。
「よ、入れば」
「おじゃましまーす!」
「・・・・まさか・・・・・・橋の下に家があるなんて・・・・・」
「くんこ何ぶつくさ言ってんの?はやく入りなよ」
「ハ、ハイ・・おじゃましまぁす・・・・」
 おそるおそる中に入ったくんこ。
 壁の全面が鉄張りで、どこか機械的な雰囲気をかもしだすその家には、かなり大量の衣類やマンガ、ポスターなどが散乱していた。そう、カナエは俗にいう片付けられない女・・・・。それでも食器や生活ごみだけはきちんと始末しているので、さほどひどくはないのだが。
「そこに座ってて。いまなんか出すからさ」
 そういってカナエはそこだけきちんと片付いている台所へひっこんだ。くんことガッちゃんは、散らばる衣類をかきわけ、ようやく空いたスペースに腰を下ろした。
「汚い家・・・・」
「カナエ、片付け嫌いだから・・・・・」
「カナエって、ここに一人暮らしなの?」
「違うよ。他にフシュギたちが・・・あ、来た」
 ガッちゃんの声に、くんこはふりむいた。
 山となる衣類の中に、光るたくさんの目・・・・・。その生物は、ずりずりと衣類から這いだしてきた。くんこに近づいてきたその生物は、しばらく品定めでもするようにくんこをながめまわし、なんと、くんこの指にかじりついた。
「いったぁぁぁぁ――――!!!」
「お、くんこ、フシュギに気に入られたのか。よかったなー」
 台所から出てきたカナエは、のんきにお菓子を皿にあけている。くんこたちにくれる・・・と思いきや、そのお菓子はすべてフシュギと呼ばれた生物たちに与えられた。
「もう可愛くてさー、こいつら♪」
 安物のジュースを飲みながら、うまそうにお菓子をむさぼり食うフシュギたちをじろりとにらむくんこ。目が4つ。身体は10センチくらい。黄緑色のその生物は、どう見ても可愛いとは思えない。しかも、それが数匹も群がっているのである。むしろ、不気味なぐらいだ、とくんこは思った。
「ねえ、なんでカナエはこんなところに住んでるの?」
「橋の下が好きだから」
「なんで橋の下なの?ほかにもいいところってあるじゃない」
「いいんだよ。好きなんだからさ」
 カナエは群がってじゃれているフシュギのなかから1匹抱いて立ち上がった。
「んじゃ、そろそろ幹部の家行くか」
 カナエの一言で、くんこたちも立ち上がった。くんこのひざから2匹、フシュギが転げ落ちた。

「幹部の家はちょっと遠いんだ」
 そう言って、カナエとガッちゃんは駅に入った。どうやら電車に乗るようだ。くんこは財布から500円玉を取り出し、切符売り場へ向かおうとすると、
「そっちはちがうよ」
 とガッちゃんに止められてしまった。切符売り場でなければどこへ行くのだろう。くんこが不審に思っていると、二人はコインロッカーへ向かって歩いていく。
「コインロッカーに何か荷物でも預けるの?」
「ちがうちがう。いいから来て」
 ガッちゃんはカバンから鍵を取り出しロッカーのひとつを開けた。そしてなんと、そのロッカーに滑りこむようにして中に入っていくではないか。
「な、なに―――!??」
「くんこ、はやく来いよ」
「え!?ちょ、ちょっとやめ・・・・・イヤー!そんなところ入りたくない――!!」
 くんこはカナエに襟首をつかまれ、ムリヤリロッカーの中に引きずりこまれてしまった。

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