ぷるぷるぷりん

ぷるぷるぷりん

夜雨に朝まで寄り添って


それは、窓の向こうから聞こえてくる、薄いノイズのような雨音だった。
いつから降っていたのだろう。彼はそっと耳を澄ませてみる。

澄んだ響きの中に、他の音が聞こえてくる。
雨粒が、アスファルトを打つような音。
柔らかい若葉を打つような音。
窓を開けると、雨と土の匂いを感じた気がした。
彼はこんな時間が好きだった。
特に意味もない。意義だってない。


あれ。
彼はふと思う。
意味のあることなどあるのだろうか、と。
逡巡する。
意味。
意味。意味。
その言葉の、意味。


彼は懐疑は消え去り、1つの考えが生まれる。

この世に意味のあるものなどないだろう、と。
今まさに、天から降り注いでいるこの雨にだって、この思考にだって。意味はないだろう。
雨が降ることは地球が、自然環境が成り立つ為に欠かせない、とても大きな意味を持つ。そう思う人もいるだろう。
だが、彼はそうは思わない。
それは人が後付けしたものだ。
意味ではない。後付けだ。と。

雨はただ降るだけであって意味はない。ただ、そう在るだけだ。
では、この思考はなんだろう。
彼は考える。
おそらく、意味はない。
人の行いなんて、全て後付け。理由も理屈も意味も意義も。
そんなもの、存在しない。
人が後からとってつけただけ。
ほら。今、そうやって僕がしたように。
人が意味を、意義を。求める意味を、「全てのものに意味はないから」と理由付けしたように。

意味の意義を求める。
それが人の証明。
それが、無意味の証明。

「…まぁ、証明の仕方も否定の仕方もないと思うんだけどね。
それこそ、そんなものこそ、当に無意味。」
彼は、ようやく言葉を発した。
切なげで嬉しそうな、そんな表情で。



深く息を吸い、吐く。
窓を閉め、軽く伸びをしてみる。


雨はいつの間にか、やんでいた。



© Rakuten Group, Inc.
X
Design a Mobile Site
スマートフォン版を閲覧 | PC版を閲覧
Share by: