すめらぎ処

すめらぎ処

図書館



国の真ん中にあるこの図書館には、天井まである棚が所狭しと並べられていた。

一通り中を見てまわった旅人は、少女を探して棚のあちこちに目を通す。

旅人がやっと見つけたその少女は、歴史の本がおいてある棚の前に、座り込んで一つの本を読んでいた。

「床に座り込んで読んでいたら、係りの人に怒られるぞ」

少女の本を取り上げた旅人は、本の題名を見て少女に問うた。

「旅をしているお前が、この国の歴史なんか見て何を勉強するんだ?」

「あのね、せんそうのおべんきょう、しようと思ったの」

少女は座り込んだまま、旅人を上目遣いで見ながら答える。

旅人はそんな少女の頭に手を置いた。

「そうか戦争か…。で、お勉強は進みましたか?」

「あのね、いっこだけ、分からないことがあるの」

「なんだ?」

「あのね、これだけせんそうをたくさんしてるのに、どうして、この国のにんげんは、いなくならないの?」

少女は、本を見つめながら聞いた。旅人は片手をあごに当てながら、口の端をあげて言った。

「そうだなぁ、そりゃ戦争やってる人間が、にんげんが絶滅しない程度に殺りあってるんだろ?」

「なんで、そんなことが分かるの?」

「そいつは簡単だ。自分が飯食って生きるためには、それを作るヒトがいる。それで自分がもっと食料を欲したら隣の土地がいるだろ?

そしたら、そこにいるヒトが邪魔になる、だから戦争を起こして土地を奪う。でもヒトを殺しすぎたら今度はその土地で働くヒトがいなくなる。

それが困るからヒトは戦争でヒトを滅ぼさない」

だから、これだけ戦争は続くんだ、と旅人は締めくくった。

少女は感心したようにしきりに頷き、納得したと顔をほころばせた。

そして少女は、最後に言った。

「ヒトってなんだか、かなしいね」

それに旅人が修正を加える。

「いや、ただ食い意地が張ってるだけだよ」

旅人と少女は図書館を後にした。




© Rakuten Group, Inc.
X
Design a Mobile Site
スマートフォン版を閲覧 | PC版を閲覧
Share by: