蘇芳色(SUOUIRO)~耽美な時間~

「翼をください」

以前借りたビデオの新作紹介で予告を見ていた。何となく気になっていたので、今回DVDをレンタルしてきた。
いやあ、心を動かされた。繊細ですべてのエピソードが無理なく胸を打つ。
マウスという少女が女子校の寄宿舎に入ってくるところから、話は始まる。
彼女のルームメートは、少々不良っぽいポーリーと美人のトリー。彼女達は
とても仲がいい。その仲の良さが・・・。
本当に繊細な作りの作品だった。特にトリーが妹に、ポーリーとの仲はレズビアンではない、と言い訳したあとの表情。妹に背を向けて歩いていきながら、顔をくしゃくしゃにして泣き顔になる。その表情や演出の切なさに、胸が痛くなった。
失恋をしたポーリーの、行き場の無い哀しみ。そして激情。
ポーリーという少女のキャラが秀逸だった。とても魅力的で、私は完璧にポーリーにノックアウト状態。トリーの彼氏に決闘を申し込み、剣を使って決闘するシーンは、トリーの彼氏や友人達より数倍潔くて情熱的で素敵だったぞ。

そういえば私も10年間女子校で過ごしたんだった。さすがに寄宿舎ではなかったが、思春期には周りは、教師以外は女ばっかりだった。
まず第一段階。先輩に恋をした。異性愛に進む前にはよくあることらしいが、憧れの先輩の姿を見て胸キュンしたり、写真を手に入れたり、靴箱に手紙やバレンタインのチョコ(今思えば不衛生)を入れたりする行動は、すべて男性へすることと大差なかった。別に相手を女だから好きになった・・・ということではなく、彼女という人間を好きになったと言うことなのだ。(ま、当時はそんな大袈裟なものではなかったが)
ポーリーもマウスに言っている。「トリーを愛している。でもレズビアンじゃない。」そうなんだ。ポーリーはトリーのことを、女だから愛したのではない。トリーという人間を愛したんだ。こういう感覚は、理解できる。
またトリーの少々逃げの姿勢も、何となく責められないな・・・と思う。
こういうストーリー運びはジェイムズ・アイヴォリイ監督の「モーリス」に似ている。男同士のカップル。片方が世間体を気にして女と結婚する。残されたほうは、失恋に苦しむ。「モーリス」のラストと「翼をください」のラストは大きく違うが、登場人物の心の葛藤は共通のものがあるのではないかな。

監督はレア・プール。やっぱり女性だった。男性監督、女性監督とことさら区別されるのを嫌がる女性監督がいると聞く。「男女の別ではなく、いい映画かどうかで判断すべきだ」と言うらしい。確かにそうなのだが、「翼をください」を見たとき、とっさに女性監督の作品か?と思った。演出の繊細さが際立っていたからだ。もちろん男性監督も繊細な演出をする人がいるだろう。が、なんと言ったらいいんだろう。女が女を嗅ぎ当てる嗅覚とでもいうのだろうか。女子校経験者だからわかるのか。とにかく女の肌の匂いのする映画だ。好きな作品の一つになった。

公式サイト http://www.tsubasa-movie.com/




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