蘇芳色(SUOUIRO)~耽美な時間~

「ノッティングヒルの恋人」

「ノッティングヒルの恋人」をTVで放送していた。ビデオレンタルするほどでもないけれど、ヒュー・グラントが見てみたいと思っていたので、好都合。
しかし面白くなかった。
旅行専門書の本屋のオーナー、ウィリアム(H・グラント)と、有名な美人女優アナ(J・ロバーツ)との恋物語。
疑問に感じたのは、どうして平凡で目立たないタイプのウィリアムにアナが突然キスをしたり、電話をかけてきたりと「押せ押せムード」なのか?という点。
頭の回転が速いわけでもなく、アナを前にして緊張しているのか、言いよどんでばかり。
彼女のウィリアムに対しての恋心が理解できない。

同様の設定なら、フジテレビ「スタアの恋」(2001年冬クールオンエア)のほうが、よっぽど説得力があった。
平凡なサラリーマン、中田草介と有名美人女優、桐島ヒカル子(藤原紀香)との恋。
ヒカル子がどんどん草介に惹かれていく過程が、丁寧に描かれていた作品だった。
草介はとにかくいい人。生半可ないい人ではなく、自らが犠牲になっても微笑んでいられるほどのいい人なのだ。そして自分の仕事(ハムの営業)に対するプロ意識もある。ハムに関する知識の豊富さは、彼の右に出るものがいないほど。
今までの恋愛相手とは正反対の草介の魅力に、ヒカル子は惹かれていく。
二人の恋愛模様を軸に、マネージャーの三枝のヒカル子への想いや、草介を慕う同僚のつぼみの恋も絡めて、立体的な作品に仕上がっていた。(つぼみを好きな牛山も魅力的なキャラだった)

それに比べて「ノッティングヒルの恋人」は、登場人物の感情を描くのが雑ではないだろうか。
ウィリアムに草介のような魅力が無い。
アナの想いを受け止めなかったクセに、友人達に相談をする。
そんなことは自分で決めましょう、大人なんだから。
友人達の誘導によって、ようやくエンジンがかかる男なのだ、ウィリアムは。
そして友人達と共に、アナのいるホテルへと急ぐ。おいおい。
普段はうじうじしていてもいいからさ、ここ一番って時には決断してよ、主人公なんだから。
これじゃ、ウィリアムの恋や気持ちに共感できないよ。

ウィリアムを取り巻く登場人物たちは、魅力的で素敵なキャラがたくさんいたけどね。
特に同居人のスパイク。ちょっと変わっているけど、気のいい奴。ウィリアムの妹も、彼の親友とその妻も、いい感じ。(ただ親友の妻が、車椅子を使っていると言う設定は、必要ないと思うが)

1つ不愉快になったシーン。ウィリアムがホテルに行き、アナの居所を教えてくれたフロントの男性の頬にキスをする。するとそれを見ていた日本人ビジネスマン風の男性も、マネをしてフロントの男性の頬にキスをしてから用件を言う。日本人はホテルマナーを知らない、と馬鹿にされているようで気分が悪かった。現在世界中のどこにでも出没している日本人なんだから、イギリスのホテルのマナーは知っているでしょう?

映画で夢を描きたいのなら、細かい点を矛盾が無いように演出し、確固とした基礎固めをした上で、素晴らしい夢の世界を表現して欲しい。




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