蘇芳色(SUOUIRO)~耽美な時間~

「ナスターシャ」



ポーランドの映画監督アンジェイ・ワイダがドストエフスキーの「白痴」を映画化したのが、この「ナスターシャ」
ナスターシャとムイシュキン公爵の二役を坂東玉三郎が、ラゴージンを永島敏行が演じた。

「ナスターシャ」というタイトルと共に、ウエディングドレス姿のナスターシャが教会に登場。
結婚式のはずなのに、式に参列している人は、なぜか黒い服。
ナスターシャの白いドレスがより純白に見える。
白い礼服姿のムイシュキン公爵は、見るからに弱々しくナスターシャの傍らに立つ。
二人を後ろから凝視する目。
ムイシュキン公爵同様に、ナスターシャを熱愛するラゴージンだった。
司祭がやってくると、そわそわと後ろを向くナスターシャ。
と、見る間にラゴージンの元へ行き、「助けて」と一言。
待っていましたとばかり、ラゴージンはナスターシャを抱きかかえて馬車へ。
そして去っていった。
ラゴージンの家に、ムイシュキン公爵がやって来た。
そこで彼が見たものは・・・。

これは、そのまんま舞台劇になっている。
最初の結婚式の部分のみ、他の登場人物がいるが、あとはムイシュキン公爵、ラゴージン、ナスターシャの3人だけ。
といっても、役者の数から言えば、2人芝居。
映画のほとんどがラゴージンの家の一室で進行する。
ムイシュキン公爵とラゴージンの会話、それからお互いの回想。
その中にナスターシャが登場する。
冒頭の結婚式シーンでは、ナスターシャは栗色の髪をなびかせ、白いドレスに身を包んでいたが、ラゴージンの家のシーンはほとんどムイシュキン公爵の姿のままで、ナスターシャを演じていた。
玉三郎は、わずかにストールをまとうだけで見事にナスターシャになりきってみせる。
これはもうすごい、の一言。
身のこなしから話し方まで、別人になっている。
日本が誇るべき俳優の一人ではないだろうか。

玉三郎の舞台は何度か見たことがあるが、舞台の彼はそれはもう神々しいばかり。
体中からオーラが出ている。
私は彼のあまりの美しさに、息をするのも忘れたほどだった。
今回見た「ナスターシャ」での彼も、男の姿からストール1枚を羽織るだけで、胸がときめくほどの麗しい女に変化する。
ただ驚き、感心する。
相手役の永島敏行も、粗野なラゴージンをよく演じていたと思う。もう少し荒々しさが欲しかったとは思うが。

原作を読んでいないので、ストーリーがわかりにくかったのが残念だった。
原作は長編らしいが、映画はかなり短くしているとか。
短くしたストーリーの部分を、回想シーンに入れ込んで説明していたのだが、俳優がその姿のまま、時間が入れ替わるのでわかりづらかった。

もしかして、ドストエフスキーの「白痴」なんて、読んでいて当たり前の名作なのかも・・・・。(汗)




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