蘇芳色(SUOUIRO)~耽美な時間~

美輪明宏音楽会<愛>



今年も 美輪明宏さん のコンサートに行く。
大阪のシアター・ドラマシティにて、午後3時より。

相変わらず客層は、女性が多い。年齢はさまざま。
今回は、男性の姿もけっこう目に付いた。
ほとんどがカップルだったけど。
年配の男性が、娘くらいの女性と来ている姿も見受けられた。
(ホントの娘かもしれないケド)

さて、開幕。
相変わらず艶やかな姿の美輪さん登場。
黒髪のショートヘアに、淡いピンクのふんわりとしたドレス。
袖はシフォン生地のようで、肩の部分からまるで羽根のように流れるように作られている。
美輪さんが舞台に現れると同時に、お決まりのタブーの香り。
この香りを感じると、『ああ、美輪さんの舞台を見に来たんだな』と思う。

いつものようにトークは軽妙だが、パターン化したギャグは今回は少なめ。
今回は、日本の叙情歌がテーマらしく、第一部は「朧月夜」「夏は来ぬ」「白月」「冬景色」「忘れな草をあなたに」「爪」「アカシアの雨がやむとき」「惜別の歌」を聴いた。
「朧月夜」「夏は来ぬ」「冬景色」などは、幼い頃よく聞いた歌。
特に「朧月夜」は好きな歌だった。
美輪さんが歌うには、少々優しすぎる?歌のような気がして、彼女?の持ち味が生かされないかも・・・と思う。
「白月」「惜別の歌」は、少しばかりの古めかしさが、美輪さんの雰囲気に合っていて、素晴らしかった。
この懐かしい歌の数々に、まるで母親の子守唄を聞いているが如く、うつらうつらとても気持ちが良くなった。(笑)

休憩を挟んで第二部。
第二部は大人の歌。
「夜のタンゴ」「18才の彼」「今日でお別れ」「知りたくないの」「ボン・ヴォワヤージュ」「アコーデオン弾き」「愛する権利」
やはりこういう歌が美輪さんの真骨頂を発揮すると思う。
歌を歌う前に、その曲についての解説をしてくれるのだが、それが物語を聞いているようで、とても面白い。
短い曲の中に、多くのドラマが凝縮されていると言うことを、あらためて感じることができる。
特に感動したのは、曲の前に一人芝居をしてくれた「ボン・ヴォワヤージュ」
1人の女が、男にだまされて転落していく様子を、女の若い頃から老女になるまで演じわけていたのには、感動した。
年齢が違う人間を演じわけるのに、美輪さんは、声と姿勢を変えていた。
若い娘の頃は、高い声でちょっと甘えたように、そして育ちの良い上品さを出している。
それが港であった男に騙され、男を食べさせるために稼ぐ手段として、街角に立つ女になっていくと、声が枯れて太くなる。
年をとり、ふと自分の顔を見ると、目立つ皺。
ギクリとしながらも、「まあ、いいわ」と居直る。
そんな女を、男は裏切り、別の女と去っていく。
自分の人生を振り返り、虚しくなる女だが、男が去る直前には男の幸せを願ってやり、手を合わせる。
一曲の中に、1人の女の人生が凝縮されていて、曲が終わると、聴いていた私も、長いお芝居か映画を見ていたように、どっと疲れをおぼえる。快い疲れだけれど。
次の曲、「アコーデオン弾き」も、愛した男が死んでしまった女の、哀れな末路を歌った歌。
アコーデオン弾きの男と愛し合った女は、男が死んだ後も、ホールに足を向ける。
懐かしいアコーデオンの音色に、男が戻ってきたかのような錯覚を覚え、嬉しいような寂しいような、引き裂かれるような気持ちで佇む。
美輪さんの歌唱力、演技力はもちろんのこと、照明などの演出効果も素晴らしく、主人公の気持ちの変化を感じ取ることができる。
最後の「愛する権利」も心に染みた。
お互いに愛し合っているのなら、他の人間が介入するのはおかしなこと。
どんな人間にも、人を愛する権利はあるのだから、誰もそれを邪魔することはできない。
そういう意味の歌。

今回のコンサートで、特に気がついたのは、照明の素晴らしさ。
第二部の舞台は、空をバックに百合の花の橋が、左上から右下に向かってかかっていた。
舞台の上にも、百合の花が十数輪ずつかたまって咲いている。
百合の花には金の粉がほどこされているのか、照明の当たり具合によって、キラキラと輝く。
バックは雲が浮かぶ空だと思うが、見ようによっては海の波にも見える。
光の色やあたり方によって、百合の花か浮かんでいる空が、波打つ海に見えたりする。
曲の内容によって、照明の色や分量が変化し、さまざまな世界が目の前に開かれていく。
照明の素晴らしさによって、より一層、歌の世界に酔いしれることが出来た。

アンコールは「愛の賛歌」
曲が終わると、美輪さんは舞台の中央へ。
すると上から、金色の花びらがハラハラと落ちてくる。
どんどん激しくなり、美輪さんが金色に輝いた、と思ったとき、幕が閉じた。

言葉に出来ない世界を垣間見たような、芳しいコンサートだった。




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