蘇芳色(SUOUIRO)~耽美な時間~

「シュガータイム」

書籍名:シュガータイム
著者名:小川洋子
出版社:中央公論新社

感想:かおるという名の女子大生の話。
ある時から過剰に食欲が肥大し、食べることに邁進し、自分が食べたモノのリスト日記をつけるということを、しばらく続けている。
かおるの周辺には、友人の真由子、弟の航平、恋人の吉田さんらがいる。
不思議なのは、主人公も含んだそれぞれの人物のかかわりが、なぜか淡白に感じられること。
もちろん、出来事としては恋人との関係の変化など、(その過程もかなり)劇的な動きがあるにもかかわらず、毒々しい感情のうねりが感じられない。
それは小川洋子という作家の持ち味なのかもしれない。
ただ淡々と透明に時間が過ぎてゆく。
かおる自身の奇妙な食欲も、あるいは航平の病気、吉田さんとの性生活なども、全てさらさらと描かれている。
自分自身の大学時代を思い出してみると、『こんなに透明な感情でいられるはずはない』という結論に達するのだけれど、かおるのような生き方もあるだろうし、またそれがとても魅力的に感じたのは、さすがに小川洋子という作家の力量なのだろう。
ただ文庫本の解説を、林真理子が書いていて、少々鼻についた。
彼女は苦手な私。




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