蘇芳色(SUOUIRO)~耽美な時間~

「女が映画を作るとき」


書籍名:女が映画を作るとき

著者名:浜野佐知

出版社:平凡社新書


浜野佐知という女性映画監督の名前を知っている映画ファンって、どれくらいいるんでしょう。もしかしたら大きな声で「彼女の作品をたくさん見ましたっ!」って、言いにくいかもしれないですね。だって、彼女は高校を卒業して、映画監督を志し、ピンク映画の世界に飛び込んだ女性なんですから。1970年に監督デビューをしてから、300本を越えるピンク映画を作ってきた女性なんです。

実を言うと、私も浜野監督の作品は1本も見ていないんです。でも40年も前にピンク映画界に入り、今以上に男だけの世界だった映画界で孤軍奮闘してきたという彼女の自伝のような本 「女が映画を作るとき」 (浜野佐知著 平凡社新書)を読むと、彼女の映画作品を見たくてたまらなくなってきました。

彼女はピンク映画を作るうえで、彼女なりのポリシーがあり、児童買春モノとレイプは決して描かなかったとか。また男性監督の描く「理想の女」「幻想の女」ではなく、真っ向から「女の性」を描こうと決め、そして実行してきたそうです。
だから2001年に発表した長編映画2作目の「百合祭」では、高齢女性の性を取り上げ、原作にはないラストを付け加えたわけです。
この「百合祭」も、彼女の長編映画第1作目の「第七官界彷徨ー尾崎翠を探して」(1998年)も、機会がなくてまだ見ていないんですよ。この2作はどうしても見たいのですが・・・。 


「女が映画を作るとき」には、浜野監督がピンク映画界という男社会に飛び込んで、口でいえないほどの苦労を重ねたことや、長編映画の「第七官界彷徨ー尾崎翠を探して」、「百合祭」を作るきっかけや、その過程をていねいに書きとめています。
私は彼女の長編映画が見たいので、その制作過程のエピソードを読むときはとても楽しかったのですが、ピンク映画界での生活を読むのは、同じ女性として辛かったです。今では(まだ残っている部分もあるのでしょうが)考えられないほどのひどい扱いを受けながらも、果敢に映画制作に打ち込む浜野監督の姿は、とても美しいと感じました。
勇敢に進んできた彼女の功績が、映画界に女性監督が増えてくる土台になったんでしょうね。

今ではカンヌ国際映画祭でグランプリを受賞した河瀬直美監督をはじめ、西川美和、荻上直子、安田真奈、蜷川実花など、まるで百花繚乱です。
昔は女性というだけで、映画監督の職を得られなかったのですが、今は違いますね。
これからも女性映画監督のますますの活躍を期待したいと思います。


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