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ホンダ・ビート




 プジョーを手放し仕事用にアクティーバンを購入以来しばらく空白の時が流れます。
またクルマ(乗用)が欲しいと思い始めたのは生活が安定しはじめ
気持ちにもゆとりが持て始めた頃でした。

 もちろん、まだまだ外車への未練はあったものの
とくに何が欲しいというモノはありませんでした。
生活が安定したとはいっても相変わらずな貧乏生活。
アクティもあるので維持費のかかるクルマは買えません。
そこで思いついたのが軽自動車です。
軽なら税金も保険も安いので2台目として合格です。

 「軽で愉しいクルマは?」思いつくのは
カプチーノ・ビート・AZ-1・アルトワークスぐらいでした。
消去法で行きます。
FRが嫌い→カプチーノ脱落
ターボが嫌い→アルト・AZ-1脱落
この時点で既にビートしか残りませんでした。

 ビートに魅力を感じた最大の理由はミッドシップであること。
そしてシングルカムであることです。
オープンであることも魅力でした。

 ミッドシップは以前友人がFIAT X1/9というクルマに乗っており
「オン・ザ・レール」というモノはこういうモノなのかと思い知らされた経験があります。
それに背中から聞こえるエンジン音はとても魅力的でした。

 ビートはすぐ近所の中古車屋で見つけました。
買うなら赤と決めていたのですがそこにあったのは深いグリーンメタリックの車体でした。
小さく可愛いはずのボディーはとても落ち着いた雰囲気で
ビートの持つイメージとは少し違って見えました。
ドアを開け乗り込むとあまりにも窮屈な狭さに驚きました。
そしてバイクのようなメーターや安っぽいプラスチックの内装に
少々ガッカリしたものの、とても低い着座位置から見える世界にワクワクしました。

 幌を降ろしエンジンをかけ少し渋いショートストロークのギヤレバーを操作し
走り出すとまさにスポーツカーの世界が広がりました。
エンジンはアクティーバンと同じE07という形式を持ちますが
ビート用にリファインされたそのエンジンはシングルカムのままでも
9500回転までストレスなく回っていくモノでした。
絶対的なスピードはツインカム・ターボには敵わないでしょう。
でも小さなオープンボディーを快適に走らせるには十分なパワーです。
なによりも「回るエンジン」はスポーツカーには大事な要素です。
ハンドリングに関して言えばX1/9ほどクイックではないものの
初代のMR2よりは全然気持ちよく曲がってくれました。

 その日の内に購入を決めすぐに納車となりました。
納車当日に事件は起こります。
友人を乗せ通い慣れた峠道へと向かいました。
納車されたばかりだし人が乗っているので無理はしません。
6割程度の力で走りを愉しんでいました。
さすがはミッドシップ、今までのどのクルマよりも曲がってくれます。
そしてその峠道の見せ場でもある直角コーナー(言葉へん?)も難なくクリア!
「スゲ~~っ!!」僕と友人は同時に声を上げました。
その先にあるこれまた難しい右のシケイン。
ガシャーーーン!!
気が付くと反対車線を超えて測道に止まっていました。
何?何が起こったの??
クルマを降りると左側を大きく破損したビートがありました。
どうやらガードレールか何かにぶつかったようです。
何が起こったの?? まだ状況がよく飲み込めてませんでした。
とりあえずその場を急いで立ち去り近くのコンビニへ行きました。
明るい所で見ると破損状況はかなり酷く左の前足は後方へ大きく曲がっていて
更に後ろ足は右側へ押されていました。
「やっちまった・・・・」
ここにきて初めて事故ったことを認識しました。
しかし何故あんな所でぶつかったのかが解りません。
難しいコーナーであることは10年走って十分に知っています。
しかも限界ギリギリで走っていた訳でもありません。
これは今もって謎なのです。

 ぶつかった場所はカーブミラーの足でした。
足だけが30cmぐらい車道へ曲がって出っ張ってるやつです。
直前で跳ねたか滑ったか・・・ それが一応の見解です。
10年間何度も限界で走ってきた峠での初事故だったのがショックでした。
しかも納車されてから6時間のクルマで・・・。
「とりあえず走れるから帰ろう」と大破したままのビートで帰りました。
ここでビートの凄い所は大きく曲がった前輪と後輪を持ってしても真っ直ぐに走るのです。
手放しをしても真っ直ぐ走るなんて凄すぎでした。

 翌日の朝すぐに中古車屋に電話して大破したことを伝えるとしばし絶句した後に
「納車当日に大破させたのはあなたが初めて!記念すべき第一号です!!」という
ありがたくない称号を与えられ修理するから持って来てくれと言われました。
幸い車両保険に入っていたので修理代は保険でまかなえましたが
保険屋からは「本当はボロボロのを買ってわざとぶつけて直すんだろ!」と
疑いを超えて非難されました・・・。
約1ヶ月ほどで修理は終わり再納車となりましたが
「大事に乗ってくれ」と中古車屋から釘を刺されました。

 ビートは約3年ぐらい所有していましたが
普段の足にはアクティーバンを使っていたのであまり乗るコトはありませんでした。
それでもオープンで走る気持ちよさやミッドシップの走りは堪能しました。
実はこの頃から趣味が変わり自動車一辺倒だったのがサーフィンなどを始め
サーフボードも積めないビートを乗る機会が少なくなっていたのです。

 ビートはとても愉しいクルマではあったものの
心のどこかで本気で好きになれないモノがありました。
その理由がなんなのかそれは未だによく解りません。
今まで所有した中で一番思い入れが無いクルマ。
それがビートでした。

 あまり乗らないクルマを持っていても仕方がない。
そう思いビートは手放しました。
ビートを持っていた約3年間は自分の中で本当に色々な出来事があり
クルマどころではなかったという時でもありました。
ビートを好きになれなかったのは決してビートが悪かったのでなく
ビートが持つ領域の中で生活できなかったからなのかも知れません。
そしてある意味一番思い出が詰まったクルマだったのかも知れません。

 これ以降、僕は趣味のクルマを持っていません。
「クルマっていったいなんだろう?」いつも考えるテーマです。
でも、クルマが好きです。
次に持つ趣味のクルマはなんだろう・・・?
そのクルマでどんな生活ができるんだろう・・・?
そんなコトを考えるのはとても楽しいコトです。
クルマが好きだから。




ビート

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