"Wouldn't it be nice"(邦題:素敵じゃないか)はアルバムの冒頭を飾る曲で、イントロから通低する溌剌としたハープシコードが印象的。勢いのあるヴォーカルと、けたたましいハーモニーの拮抗はポップそのものですが、分裂気味な曲展開や破天荒なコード進行など負の要素が非常に興味深いです。異様なまでの圧を感じられるハーモニーは、ビーチボーイズの他のどの作品よりも複雑で難解。病んだブライアンの狂気の精神性に近づける、孤高のハーモニーポップとなりました。尚、ファンリリースと思われるブートレグに、「Pet Sounds」の全編アカペラヴァージョンが存在し、"Wouldn't it be nice"のアカペラも楽しむことが出来ます。コーラスの構成をより緻密に感じることが出来てオススメです。(試聴)
オ・グルーポは三枚のアルバムがありますが、「ムジカロコムンド2」記載は微妙で、恐らくradioセッション盤のこちらが69年2枚目。(因みに3枚目の71年「E Coisa E Tal」ではハイムンドがメンバーに見当たりません。)群を抜いて奇知に富んだ"Mutante"には絶句。軽快なイントロから紡がれる華麗なオーケストラが優雅そのもの。圧死寸前のユニゾンコーラスでも悶絶ものですが、中盤で解き放たれるハモリは重量感たっぷりで将に男声コーラスの醍醐味です。アウトロで不安定な転調をさせ、濃いテンションのまま持続する緊張感も聴き処です。ハイムンドの手法は流れるようなアレンジで、ハーモニー主体ではありながら決してそれを嫌味に聴かせない。録音の妙もあると思いますが、和音の角を感じさせない肌理の細かいハーモニーは絶品です。(試聴)
ブラジリアンコーラスの名盤数在れど、此処まで清涼感に溢れた一枚もないのではないでしょうか。ボカ・リヴリ、と云うブラジルポップス界(所謂MPB)の男声コーラスグループ、1979年自主制作盤だそうです。兎にも角にも1曲目の"QUEM TEM A VIOLA"には圧巻。爆発する疾走感と煌びやかなアルペジオ、難解な変拍子も独自のスパイスとなり目眩めくような感覚です。2曲目の"Toada"にしても壮大な曲想がメロメロに甘く心地よい名曲。この二曲だけでもアルバムを聴く価値ありそうですが、11曲全てがメロディ・リズム・ハーモニーの三要素で新しい肌触りを感じ取れる大傑作であります。
こちらの動画は恐らく当時のものではありませんが、後年のグループによる心温まるセッション。ドライヴがかかる1分50秒くらいからが見ものです。時々ハモらず、高い声苦しそう~ってのはご愛嬌、皆さん楽しそうですね。QUEM TEM A VIOLA(session)
メロディ
コーラス効果
和声純度
BPM効果
リヴァーブ
器楽
緩急
イントロ
長さ
ボーナス(ミナスの清涼感)
10
8
8
9
9
8
8
9
8
10
ハーモニー指数
87
OSMAR MILITO and Quarteto Forma / To Rio with Love
「...E DEIXA O RELÓGIO ANDAR」Som livre 1971
オズマールミリトはブラジリアンソフトロック界でマルコスヴァーリと双璧を成す偉大なるコンポーザー。こちらで取上げたサントラ「SELVA DE PEDRA」にも、オズマールミリトとクアルテートフォルマの傑作コーラスが収録されています。クアルテートフォルマはオズマールの専属コーラスグループの様な印象が御座いますが、そうとも限らず活躍は多岐に渡る職業コーラスグループのようです。いつかコンプリートしたい!
オズマールの1stアルバムより、噴き上がるハーモニーが只心地良い"Ao Rio,com amor(To Rio with Love)"を。汗染みの五月薫風さながら豊潤なトレモロに誘われて、清涼剤の様なテンションコードが飛び交う素晴らしいコーラス作品。お決まりの転調も軽やかに、淀みない混声ハーモニーの純度ときたら絶品。全体を包む柔らかいフルートの音色が楽曲の肝でしょうか、ひたすら埋れたい心地。ちょっと気持ちの良いお天気の日に歩くような速さで進行する透明な時間、至福の3分間です。
魂の浮遊するようなサイケ感覚のイントロから只ならぬ予感。カッティングの煌びやかな妙も絶妙の、世紀の名曲に相応しい面構えだと思います。胸に訴えかける気概溢れるメロディを、感極まったファルセットツインヴォーカルが完璧なラインを形成し、徐々に重なり合うヴォーカリーズ、コーラスで効果的に配置したこれ以上ないアレンジ。さり気なく転調させる技も感動的な展開です。ストリングスの駆け抜けるトレモロを筆頭に、ハーモニーアレンジと最高の食べ合わせとなったオーケストレーションも素晴らしく幸せな、ソフロ×グルーヴィソウルの傑作。(エムレコードの「Tony Rivers Harmony Works in the Studio 1971-1998」という良コンピにて、両方のヴァージョンを聴くことが出来ます。)
メロディ
コーラス効果
和声純度
BPM効果
リヴァーブ
器楽
緩急
イントロ
長さ
ボーナス(感極まる表現力)
10
9
9
8
7
9
7
9
7
10
ハーモニー指数
85
QUARTETO 004 / VIAGEM
「Retrato em branco e preto」1968
クアルテート004(ダブルオークアトロとでも呼ぶのかな??)はエドゥロボのアルバム参加、トムジョビン、マルコスヴァーリとの親交、クララヌーンとの共演などでも有名なブラジルの実力派コーラスグループです。ジョビンが演奏でサポートしている珠玉の名演"Vou Te Contar"がカルトな選曲で定評があるコンピ「Bossa Nova Exciting Jazz Samba Rhythms」に収録されたりしました。
Michel Legrand / Theme De La Piscine OST「La Piscine(邦題:太陽が知っている)」1969
ミッシェルルグランの『La Piscine(太陽が知っている)』一曲目"Theme De La Piscine"、ジャズのスキャット作品はじっとりと湿った圧倒的なコーラスでかなり高水準。コーラスはスウィングルシンガーズの方とのことで、外れることはない安定した充実感があります。それにつけても、ルグランの真骨頂、溜息が出るような珠玉のオーケストラアレンジには脱帽。盛り上がりにかけて高みに高みに上り詰める抑えが効かないコード進行が、単なる声の芸術を極みにまで昇華している感動があります。中盤にフッとラフなタッチに変化する様も粋そのもの、最高。10枚聴いて一曲くらいこのような大当たりがあると、報われますね。