うちの夫の前世はサムライ?


やっぱり米国系航空会社と比べると、
ずっと快適で、よく利用していた。
なんといってもフライトアテンダントの
丁寧な日本語は心地よかった。

やがて、日本人以外の東南アジア系の方も
ちらほらスタッフに加わるようになって、
「コーヒーいかがでございますか?」
と、フルセンテンスを言う代わりに、
「コーヒー、コーヒー」
と、歩きながら手に持ったポットを
左右にブンブン振る様は、
「なんだか、駅弁売りみたいだなー」
と思ったりもしたけど、彼女の笑顔がカバー
していてそれはそれで、味わいがあった。

うちの夫が想像していた日本語というのは、
黒澤映画に出てくる侍言葉の響きだった。
「おのおのがたぁ、出陣にござぁる!」
みたいな力の入った感じ。
付き合い初めの頃、
私を驚かせようと大学の図書館で
日本語の本を借りてこっそり勉強した。
そして、迎えにきた私の車に乗るや否や
「行きましょぉおお!」
と、覚えたてのセンテンスをのたまうった。
もちろん、発音は思いっきり「侍」風。
「・・・・・。」
彼の口から日本語が飛び出すとは
夢にも思わなかった私は、一瞬沈黙した後、
大笑い。
もう、普通に言ってよお。
涙、出た。(笑いすぎ)

その後、リクエストにこたえて
彼の前で日本語を披露してみた。
「へえー、なんだかCreek(小川)の
 流れる感じだな。」
でかい図体をしている割には、
まるで詩人みたいな感想を言う。

でも、あまり抑揚のない日本語の響きは
言ってみれば、小川のさらさら流れる音に
似ているかもしれない。

夫になってから、いつだかのクリスマスに
友達から、日本語マスター用のカセットを
もらい、通勤途中に聞いて覚えたのは、
「新宿通りは、どこですかあ?」
だけ。
今でも、ふと思い出してたまに言っている。
でも、使えないと思う。


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