「I Love You」と言わない男
始めたうちの夫。
「今回は相当やる気！」だそうだ。
始める度に違うテキストブックを
買ってくるので、本棚を見れば、
うーん、本屋さんになれそう。
夫：「Pleaseってなんて言うんだっけ？」
私：「お願いします、でしょ。」
夫：「そうそう、おねげぃします、だ。」
英語で「A」は、「あ｣ではなく、「えぃ」と
発音するから、「おねがいします」の「が」が
「おねげぃします」と東北弁調になってしまう。
再び夫：「じゃぁ、More Kiss Pleaseってのは
もっとキスおねげぃします、だ。」
再び私：「うーん、・・・。」
（あげたくないなあ、それじゃ）
ロマンティックになれないうちの夫は、
「I Love You」なんて滅多に言わない。
よく電話での会話の終わりに、
「じゃあね」の代わりとして、
夫：「I Love You 愛してるよ」
妻：「I Love You，Too 私もよ」
と言うアメリカ人は多いのに、うちの夫は
「See Ya！ じゃ、またあとでね！」
と、しっかり言う。
しかも、
妻（私のこと）を「Honey」と呼ぶわけでもなく、
「おまえは明治生まれの日本男児か？」
と聞きたくもなる。
どうしてかと聞けば、
そういう家庭に育ったからだそうだ。
そういえば，彼のお母さんはとっても
クラシックな人。うん、納得、納得。
そういう私もバリバリの日本人だから、
寝ても覚めても「愛してるよ」と言う
生活にはどうしてもなじめない。
だって、四六時中言ってたら
挨拶みたいになっちゃうような気がして。
３６５日、毎日の「I Love You」よりも、
年に数えるほどの「I Love You」の方が
私には向いてると思う。
こうして、
ロマンティックになれない者同士だから
似合いかもねと自分を慰める妻だった。
チャン、チャン。
P.S.後記
上の息子が生まれ、初めて3人で迎えた
ニューイヤー。
それから数日後のある夜、電話がなった。
「ご主人が交通事故で、こちらの救急室に
運ばれています。至急、来てください。」
頭が真っ白になった。
どこをどう、車を運転したかも覚えていない。
９ヶ月の息子を抱っこして、駆けつけた。
廊下で、首にコルセットを巻かれた夫が
病院の簡易ベットに寝かされていた。
いつもは、明るくお調子者の彼だから
目だけを動かして私たちを見つけた姿は
よけい痛々しかった。
「I Love You Very Much.」
夫が言った。・・・・・思わず、涙が出た。
なんで、いつも言ったりしないのに
アメリカ人の夫とは、
こういうことが自然にできるヤツである。
こうして文章にしてしまうと、
なんだか昼間のソープオペラみたいだけど、
私の中では、心に残るほんのいくつかの
「I Love You」である。
夫、今日も元気でアリガトネー。
今日は、ちょっとシリアスモードで書いて
しまいました。
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