グリーンカード当選物語~その2~


確か9年前の今日、95年7月28日。

「DV96」というプログラムで、
そのまま問題なく書類審査が通れれば、

翌年早々にも大使館での面接を経て、
晴れて渡米できる算段でいた。

移民をすることに対して何の迷いも
感じなかった私が、

まず最初にしたこととは・・・、

そう・・・実家に帰ることだった。

高校を卒業して、夜間の短大に進み、
昼間はフルタイムの仕事もあったし、

ほとんど寝に帰る状態の実家では
あったけれど、

19歳になったある日、父と大喧嘩をし、
家出同然に飛び出した実家。

その後、お互いほとぼりが冷めてから
和解はしたものの、

一度出てしまった家というのは何だか
他人行儀な気がして戻らずにいた。

そして、2度の転職、ほぼ1年置きの
引越しを繰り返し、

若さだけを武器に自分探しの毎日。

それでも、本人は挫折や失敗も経験し、
いつも自分のことだけで精一杯で、

親の気持ちなど考えていなかったと、
遅蒔きながら気が付いた。

父の怒った顔、それから、
引越しをするたび母が私に言った、

「アンタはどんどん遠くに言っちゃうね」

の言葉が嫌でも思い出されて。

ごめんね・・・、お母さん、

今度の引越しはアメリカだよ、しかも
片道しか買わない航空券だよ・・・。


実際、母に当選の件やアメリカ移民の
話をしたのは、

ある程度の書類が整ってからだと思う。


「行くつもり」と私。

「アンタの話はいつも事後報告だから」
と呆れられた。

それでも、一度言い出したら聞かない
娘のことだから、

「お父さんにまだ言わないほうがいいね、
悲しむから・・・」

、とだけ言った母。

これ以上、心の底から「ごめんなさい」と
思った夜は無かった。

             ~続く~

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