シャチョ~が行く!

シャチョ~が行く!

第十章 ~留守録~



とりあえず段審査の説明をしてから回想に入ろう。

段審査というものは、武道なら何でもある「どれぐらい上手いか」ってのを簡単に数字化したものである。

はい、説明終わり。

補足しておくと、中学から初めて、高三までには一般人は「三段」まで取れる。

このことを覚えておいてほしい…。


…
……
………


俺はその日、「二段」を受けに市内の大きな武道館へ足を運んだ。

それまでに俺は二回ほど受けるチャンスを失っており、一回目は顧問が


「ごめん、申し込むの忘れてたwwww」


っつぅ意味不明な言動を起こしたままスルー。

もう一度は俺が剣道形の審査で思いっきりミスをした結果であった。

どちらにしても、他のメンバーより二段を取るのが遅れているのは確かであって、それを口実にして二段を取れてないというのは大先生以下になってしまうのでやめておこう。


俺は武道館に着くなり、ある圧倒的な存在に出くわした。


「よぉ!シャチョ~!俺も受けに着たわ!!ww」


ん?誰だこいつは?

もとい、大先生ではないか。

こんな所で何油売ってんだ?さっさと練習行けよ。


案の定言葉通りの意味で、大先生は「三段」を受けに来たらしい。

この時、彼、高二である。

まだ猶予はあるものの、他の同学年の面々は既に三段を合格している。

焦りがあったのだろうかねぇ。


挨拶もそこそこに、俺は二人でアップをする。

アップはこの間説明したな。あの体力消耗運動だ。

二人で同じ空間にいるということが地獄なのに、俺はたった二人で、しかもつばぜり合いの状態にある。

息が止まりかけたが、何とか意識を取り戻し、アップ終了。

「ええ運動になったわww」とかいう、近所の爺さんが家の周りを小走りで二、三周回った後に言いそうなセリフを吐いて、意気揚々と開会式に行ってしまった。


俺もついていくハメになったんだが。


いざ出陣!といわんばかりに俺は段審査の実技を受け、合否発表で自分の番号があることを確認し、観客席の自分の荷物の所へ向かう。


ん?


俺はある異変に気づく。

辺りを見回してみた。



───大先生の荷物が無い───



何だ何だ?

物好きな奴が彼の荷物を持ち去ったか?あるいは大先生が帰ってしまったか?

答えは簡単、後者である。


俺の予想はノストラダムスより当たると評判なので、ココで一つ説明しよう。


大先生は受験後、意気揚々と合格発表を見て、自分の番号が無いことを悟り、荷物をまとめて帰った。


こうだろう。いや、そうであるに違いない。

大先生の行動の必然性を確かめるべく、俺は携帯電話を取り出し、大先生に電話をかけようと画面を見ると、

「不在着信:5 留守番電話:1」

の文字が網膜にこびり付いた。


不在着信はもちろん、大先生。留守番電話もいわずもがな。

さて留守録を聞いてみよう。


「ごめんシャチョ~、グスン俺グスン落ちてたわ…。先帰ってグスンるし…」


すまん大先生、俺、大爆笑。

大先生のとはまた違う種類の涙を流しそうになりつつ、俺は自宅への帰路を歩んでいた。


………
……
…


俺は今高校一年、二段である。

大先生は今高校三年、二段である。

そこのキミ、自分の目は信じていいぞ。

彼は未だに合格していない。ってかするわけないけどねぇあの実力で。

暇な奴がいたら、是非彼の応援に行ってあげてくれ。



そんなこんなで俺は今、中三のオーストラリア研修旅行の前のことを考えている。

そう、アレは研修旅行出発三日前のことだった…。


(つづく)

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