オペラ工房アヴァンティ外套＆ジャンニ・スキッキ

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2020年02月15日

カテゴリ： OPERA

Photo Album
Photo:©Shevaibra, courtesy of the artist

オペラ工房アヴァンティ第3回公演
外套＆ジャンニ・スキッキ
夜の部

2020年2月15日（土）18：00～
みどりアートパーク
（横浜市緑区長津田二丁目1番3号）

指揮：高野秀峰
演出：大島尚志

「外套」
ミケーレ：平尾弘之（バリトン）
ジョルジェッタ：上木由里江（ソプラノ）
ルイージ：宗像成弥（テノール）
タルパ：西山栄治（バス）
フルゴラ：岩本久美（メゾ）
ティンカ：磯沼　良（テノール）
流しの歌手役：佐藤薫（テノール）
若い恋人（女声）：小野愛子（ソプラノ）
若い恋人（男声）：町村彰（テノール）
オルガン弾き（黙役）：加藤豊房

「ジャンニ・スキッキ」
ジャンニ・スキッキ：植村憲一
ラウレッタ：齊藤祐紀
ヅィータ：斎実希子
リヌッチョ：中井亮一

ネッラ：内田昌美（ソプラノ）
ゲラルディーノ：阿部颯那（ソプラノ）
ベット：平岩英一（バリトン）
シモーネ：鈴木敬治（バス）
マルコ：戸村優希（バリトン）
チェスカ：村上尚子
医者：中原和人
公証人：宇田川慎介
ピネッリーノ：柿崎真央（テノール）
グッチョ：桑原理一郎（バリトン）
ほか

＊＊＊
中井亮一さんがリヌッチョを歌うというので長津田に行ってきた。
オペラ工房アヴァンティのダブルビルでプッチーニ　三部作の中の外套とジャンニ・スキッキ
演出もいつもすばらしい大島さんなので期待していた。
果たせるかな、すばらしい演出だった。
プッチーニの作った曲のすごさをきっちり聴かせるためのきっちりシンプルな演出。

そしてなんと中井亮一さんはリヌッチョ初役だったという。
まるで光り輝く鳩のように抜きん出た美声！
役にぴったりの声ですばらしかった。
思えばジャンニ・スキッキは日本での上演はレアな部類に入るのだが昨年末から望月哲也、澤崎一了、中井亮一と、いずれも日本を代表するすばらしいテノールのリヌッチョを聴いた。
本当に感謝です。

他にもすばらしい歌手が出演していて楽しかったです。

キャスティングの妙というか
ちゃんとプッチーニの声の歌手を適所にキャスティングしていてさすがだった。
やっぱりプッチーニの主役クラスは日本人にはとてもハードルが高いのですがキャスティングの妙でプッチーニになっていた。

「外套」は主役のミケーレのバリトン平尾弘之さん、ジョルジェッタのソプラノ上木由里江さん、ルイージのテノール宗像成弥さんがすばらしかった。
ミケーレ平尾弘之さんはノーブルな美声でパワフルでレガートも強靭だった。
ルイージ宗像成弥さんはスピント・テノールで迫力があってプッチーニのテノールを感じさせた。
ジョルジェッタのソプラノ上木由里江さんがパワフルでドラマチックで主人公の悲哀を表現してあまりあった。

バスのタルパ西山栄治さんも良い声だった。

恋人たち役の男性、町村彰さん、リリックテノールで美しく歌った。

「ジャンニ・スキッキ」は題名役の植村憲一さんが重い深い美声のバリトンで存在感あった。イタリア語の発音も明瞭で演技も面白く味があった。

マルコのバリトン戸村優希さんが美声イケメン演技もうまいと三拍子揃っていて今後期待の逸材だった。

ツィータ斎実希子さんがすごくパワフルで演技もすばらしかった。ちゃんと悪役していた。

＊＊＊

外套
セットは一段高い段を作り
恋人たちや歌歌いはそこを歩く
背景に輝く月
揺れる水面を表す照明
月は輝きを増していく。
今回衣装が下斗米さん
この人の衣装はまさにぴったり
ヴェリズモだった
外套は大きく長く漆黒で迫力があった。

ミケーレがルイージを絞殺するシーンが迫力で
死に際の一言
ターモと苦しそうな泣いているような悲痛な声で搾り出すように叫ぶのがすごかった。
これがヴェリズモだな～と納得した
ベルカントの対極にいるのだ。

急にミケーレへの申し訳ない思いでいっぱいになった
ジョルジェッタがやってくるが
ミケーレが外套を開くと…

死体となって倒れるルイージの演技がすごい
そのまま
ばったりと倒れる

骸に近寄って見て
気絶するジョルジェッタ

誰も悪人でもないのにみんなが不幸になっていく
これが人生の真実
ヴェリズモなのでしょう。

大島演出はいつも台本そのままの世界をいかにわかりやすく表現するかに長けています
彼の演出を最初に見た人は幸せです。その作品の持つ本当の世界観がわかりますから。

＊＊＊
ジャンニ・スキッキ

大島演出ではプッチーニが指定したようにプログラムに年齢を書いています。
ここで驚くべき付け加えが。
ゲラルディーノは実は今回たいそう重要な役にされていたと私は思うのですが
彼のプロフィールとして「両親に虐待されている」とあるのです。
確かにひとりっこでネグレクトされている演出になっていました。
虐待といっても今なら虐待ですが一昔前ならふつうの光景です。
お尻を叩かれたり相手にされなかったり
あっちにいけと言われたり、追い払われたり。
昔はこどもはそういうものだったんですね。
こういう指定をしたことで演出家の演出の方向性が見えてきます

ブオーゾが亡くなり駆けつけた親族たち

噂話をし始めます

シーニャの噂では…

なんだって！

真実を確かめるために遺言書を探し始める一同

すぐに遺言書を見つけてそれを知らせているのに徹底的にゲラルディーノは無視されます。

客席に下りてまで探し出すリヌッチョにゲラルディーノが遺言書を手渡すと、

Il testamento di Buoso Donati!

ようやくみな信用します。

遺言書を読み、お金は彼らには一文も入らず、全部教会に行ってしまうことが明らかに。
彼らはブオーゾの死体にあたりますｗ。

シモーネに年嵩なので知恵を出させようとします。

リヌッチョは知恵を借りようと恋人ラウレッタの父親ジャンニ・スキッキを呼びに行かせます。

来るよ

誰が？

Gianni Schicchi!

リヌッチョのアリア

Firenze è come un albero fiorito

Viva la gente nova e Gianni Schicchi!

すばらしい！
軽やかな輝きのある声。
彼の声の明るさでホールが明るく照らし出されたような錯覚すら覚える。
テノールの声は光だ。

彼だ！

ジャンニと娘。

Rino!

愛し合う恋人たちの再会。

やってきたジャンニに冷たい親戚達。

Brava la vecchia! Brava!

お金が入らないとラウレッタと結婚させてもらえないリヌッチョ。若い二人は必死です。ジャンニ・スキッキに手立てを相談します。

ヅィータは大反対。
ヅィータとリヌッチョ、ラウレッタとジャンニ・スキッキが4人並んでの重唱
これが演出も見事でした。
ヅィータがリヌッチョ、ジャンニがラウレッタの腕を引っ張り引き裂かれる恋人たち
その4人のすばらしいアンサンブルが立ち位置からも伝わってくるのです。
これぞまさに音楽を表現した演出
演出を表現した音楽
でした。

ジャンニはにべもなく無理だと言います。
ニエンテ、ニエンテ、ニエンテとジャンニが拒否して音楽が不協和音を繰り返す
ジャンニの感情を音楽で表現しているプッチーニすばらしい。
この音が鳴ると次は
あの名アリアだと期待させる。

私の大好きなお父さん

O mio babbino caro,

Babbo, pietà, pietà

お父さんにめいっぱい甘える娘。

お父さんの演技秀逸。

遺言書を持って来い！

ここには誰も入ってないな？

親戚たちに命じて死体を移動させようとしているさなかに
医者が往診にやってきます。

慌てるマルコ
ブオーゾのご遺体はへなへなと床に崩れます（爆笑）

スキッキは死体の影に隠れ、死体の手を持って振りながら
ブオーゾの声色を真似て追い払います。

親戚たちは色めき立ってスキッキを賞賛します。

これで自信を深めたジャンニ

公証人を呼んで来い！

スキッキは本格的にブオーゾに変装します。

態度を豹変させしなをつくるヅィータが最高ですｗｗ

親戚達はそれぞれ欲しいものを告げ、一番価値のあるラバと粉挽き場とこの邸宅は自分に欲しいと告げます。
ジャンニの記憶力はすごいです。

スキッキは遺言書改竄は重罪だから万が一発覚したら手首を切り落とされてフィレンツェの街をさまようことになると親戚達に忠告します。

公証人とピネッリーノ、グッチョが到着します。

ピネッリーノの柿崎真央さん（テノール）すばらしい体格と声でした。今後期待できます。

ジャンニスキッキは、白い布で顔を隠しつつ遺言書を書き換えさせていきます。

驚くべき記憶力で親戚達にそれぞれ希望の物を与えたあと、ラバと粉挽き場とこの邸宅はジャンニスキッキに与える！と宣言します。
超笑える演技です。

ラードロ〜

呪詛の声

アッディオ・フィレンツェ

グウの音も出ない親戚達

公証人が靴屋たちと帰り
親戚達はスキッキを罵ります。

出て行け！ここはわしの家だ。

親戚達は怒り、叫びながら出ていきます。

Lauretta mia

一方幸せな二人。
すばらしい！
テノール最後の高音も！

スキッキのモノローグ。
ここのモノローグも完全にイタリア語！
さすがのレヴェルの高さでした。

お疲れ様でした！！

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