ミャゴラトーリ「ドン・カルロ」演奏会形式

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2020年12月05日

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Photo Album
©Shevaibra, courtesy of the artist

ミャゴラトーリ「ドン・カルロ」演奏会形式
（イタリア語上演・四幕版）

2020年12月4日(金)14時開演
セシオン杉並（東高円寺）

ドン・カルロ/寺田宗永　
エリザベッタ/髙橋絵理　
ロドリーゴ/藪内俊弥　

エボリ：向野由美子　
宗教裁判長/ジョンハオ　
テバルド・天の声/森真奈美
修道士：志村文彦
聖職者、レルマ伯爵：押見春喜
フランドルの使者：龍進一郎　

指揮　柴田真郁
ピアノ平塚洋子

ミャゴラトーリ「ドン・カルロ」演奏会形式
すばらしかった！
そもそもドン・カルロを普通に上演したら休憩含め5時間はかかる大作。

それをぎゅっとほぼ3時間に凝縮した今回の公演。
集中力と緊張感がすごかった！
見終わったときの疲労感たるやすさまじかった。
演じている方はさらにすごかったと思う。
ドン・カルロを合唱なしでソリストだけでやるなんて

不可能を可能にした。
合唱部分は1台のスタインウェイのピアノ
もしくは
一人合唱（押見さん）であった。
詳細後述します。
また会場が非常によく響き、しかも大きすぎない箱で、ちょうどよかった。
功労者の一人は柴田真郁さんかもしれない。
オペラ指揮者として非常に優れている。
彼のゆったりした牽引はヴェルディに必要な優雅なレガートを存分に可能にさせた。
アンサンブルがすごくて2幕の重唱ではできないと思っていたシーンをソリストだけでやってのけた。感謝しかないです。
3時間一人で弾き続けたピアノ平塚さんにも感謝しかない！
譜めくりにも大物が！
今回はソリストはミャゴラトーリオールスターと言ってもいい豪華な布陣
本当にその役にあった声を豪華にキャスティングしていて
非常にはまっていた。

エリザベッタの髙橋絵理さん、リリコ・スピントというのだろうか？爆発的なパワーがすばらしく、高音も美しく、まさに理想のヴェルディのヒロイン。

ロドリーゴの藪内さんが名唱だった！
すばらしいレガートと天が与えし美声。
まさに入魂の演奏で酔いました。
ありがとうございます！

題名役の寺田宗永さん、すばらしかった。高音も絶好調で、悲劇的な運命をたどる、悲痛なカルロの声にぴったりであった。彼は、高音を伸ばした時の独特の甘やかな響きがあって非常に美しい。

ハオさん、素顔はとてもお茶目で素敵な人のようなのにオペラの舞台ではカリスマティックなプレゼンシーを見せる。彼は東京二期会本公演でフィリッポをやっている。今回は宗教裁判長だが響く低音を長く伸ばしたり、すばらしいことこのうえなかった。

フィリッポの大澤さん、高音も美しく、意外なことに今回、リリック・バスのおもむきがあると思った。フィリッポは声の万華鏡だから高音も表現力も要求されるハードルが最高峰のものがある難役。演奏会形式と言いながらめいっぱい演技していてさすがだと思った。特にエリザベッタへの複雑な感情、カルロへの愛と憎しみが交錯するところなど本当にすばらしかった。

エボリの向野由美子さん、美しく華麗に難役エボリを演唱。すばらしかった。

テバルドと天の声の森真奈美さん、軽く明るい声でどちらもすばらしかった。

修道士・志村さん、声のパワー。半端なかった。カルロ5世の亡霊でもあるのだが、豪華なキャスティングにビックリ、至福だった。

＊＊＊
第1幕　第1部
サンジュスト修道院の中庭を囲む回廊

修道士、志村さんはしもてのそでで歌う。

Ei voleva regnare sul mondo

L'orgoglio immenso fu, fu l'error suo profondo

合唱部分はピアノで表現する

L'orgoglio immenso fu, fu l'error suo profondo

e Grande è Dio sol
(最低音）

第二場

カルロ
Io l'ho perduta!

Io la vidi e il suo sorriso

e speme, sogni... amor!

Io l'ho perduta!

第3場
ロドリーゴが来る

O mio Rodrigo!

時は熟しました。

Carlo mio, con me dividi
Il tuo pianto, il tuo dolor!

Amo... d'insano amor... Elisabetta!
愛しているのだ、エリザベッタを

Dio che nell'alma infondere
(友情の二重唱）

Tu déi di libertà

第二部
サンジュスト修道院の門の前

合唱カットでいきなりヴェールの歌

Nei giardin - del bello

このアリアは大変難しいコロラトゥーラがある。
エボリは後半のドンファターレや呪われた息子よなどではパワフル歌唱を要求される、非常に難役。

テバルド
Sono i veli più cari all'amor.

エリザベッタが来る
憂い顔
ロドリーゴが来てカルロからの手紙を偽って渡す

エボリ
Che mai si fa nel suol francese

エボリとの三重唱すばらしい！

優雅な宮廷のうわべだけの会話とその中で揺れる心を抱えたエリザベッタ。
ヴェルディは天才だ。

ロドリーゴ
Carlo, ch'è sol - il nostro amore
カルロ様のことですが…

すばらしい！

Se tornerà - salvo sarà

第4場
カルロが来る

Io vengo a domandar grazia alla mia Regina

Un giorno sol mi diè, e poi rapillo a me!

Ah! perché mai parlar non sento

Insan! piansi, pregai nel mio delirio

Perduto ben - mio sol tesor

Sotto il mio piè
dischiudasi la terra

エリザベッタ
Compi l'opra a svenar corri il padre

カルロ
Ahi! maledetto io son!

エリザベッタ
貞操を守ったわ

テバルド
王のお成りです！

フィリッポ登場

どうして王妃は一人なのだ
そば付きは誰だ？

そばの椅子の足を蹴り飛ばす。
さすが大澤さん、役になりきっています！

（アレンベルク伯爵夫人（黙役）は当然のことながら登場せず。

Contessa, al nuovo sol in Francia tornerete
フランスに帰るがよい。

エリザベッタ
Non pianger, mia compagna

退場。
フィリッポはエリザベッタを冷たい顔で見ている。

フィリッポ
（ロドリーゴに）お前は残れ。
野にくだったそうだな

わしに何も望まぬのか

他の人に

なに？
申すがよい

ロドリーゴはフランドルの有様を訴える
地獄絵図

Sia benedetto Iddio

なんてノーブルなお声

フィリッポ
La morte in questa man ha un avvenir fecondo.

フランドルにも血が流されることによる平和を

ロドリーゴ
それは墓場の平和です。

フィリッポはロドリーゴをにらむ

ロドリーゴ
後世、皇帝ネロと呼ばれたいのですか？

Come un Dio redentor

すばらしい！
なんというレガート

Per voi si allieti il mondo!
Date la libertà!

フィリッポ
理想主義者だな
聞かなかったことにしといてやろう
だが大審問官には注意するのだぞ

陛下…

第2幕
第1部
第1場
王宮の庭園

月夜　甘い花の香
満点の星空の下でエリザベッタを待つカルロ

有頂天のカルロ

Sei tu, sei tu, bella adorata

しかし現れたのは…エボリ

王妃じゃない！

私はあなたを助けられるわ

人違いと分かって怒るエボリ
しかも相手はエリザベッタ？

ロドリーゴが来る

三重唱すばらしい！

死ね！

いや、しかしまだ手はあった

Trema per te, falso figliuolo

カルロ様、重要な書類を私にお預けください。

お前にか？王の側近の

di me!.
私をお疑いなのか

いや。
In te posi ogni fidanza

Io m'abbandono a te

第二部
ここは本来のドン・カルロでは火刑の大スペクタクルシーン。
スカラ、MET,ザルツブルク、新国立劇場と見ているので、またこんなすごいシーンが上演される日が来るのか、焦燥にかられる。

エリザベッタ、ロドリーゴ、ほか入場する。
合唱はすべてピアノで表現されたかカットか。
国王の布告者（テノール）のソロはピアノで表現される。
客席にいた金山さんにカメオで歌ってほしかったｗ

第3場

教会から出てきたフィリッポ

フィリッポ
Nel posar sul mio capo la corona

ブラバンドの6人の使者を連れてカルロが直訴に来る。
ブラバンドの使者はたった一人、龍進一郎さんが歌う。瞠目の発想ですね！ブラバンドの使者の部分は確かに重唱ではなく斉唱だが…

Sire, no, l'ora estrema

e salva il nostro suolo,
O Re, che avesti il tuo poter da Dio

フィリッポ
Guardie, lontan vadan da me

ここのエリザベッタ含めた重唱で押見さんが歌いだす。
まだ押見さんが歌っていないのでどうするのかと不思議に思っていたら彼は…。
反逆者を許さない厳格なカトリックの聖職者たちの役をたった一人で歌ってる！これも瞠目でした！

ここは最高にすばらしいシーンでした！
全員ソリストで合唱なしでドン・カルロのこのシーンが再現できるとは正直驚きでした！

フィリッペのにべもない態度にカルロが切れる。

ドン・カルロ
Il Brabante e la Fiandra a me tu dona

フィリッポ
なんだと！
わしに刃向かう剣を与えると思うのか

カルロ
Sarò tuo salvator,

ここは最高音のHが出てくる難関です。

フィリッポ、剣を抜いたカルロの剣を取り上げろと命ずるが誰も動かない
ロドリーゴが割って入る

その剣を私に！

ロドリーゴ、君が…⁉

フィリッポはロドリーゴを侯爵に任ずる。

かみてのそでに下がった森さん、天の声を歌う

火刑にされた人々の魂を悼んでいる

第3幕
第1部
第1場
王の執務室
椅子に座ったまま（寝ている設定なので）歌うのかと思っていたら、立ち上がって歌った。
フィリッポの最大の見せ場
Ella giammai m'amò
彼女は私を愛していない。

Dormirò sol nel manto mio regal

Ah! se il serto real a me desse il poter

まさに入魂の歌唱でした。
このアリアはただ歌うだけではなく、どんどん変化していくフィリッポの弱さや嘆きがすべて表現される実に人間臭いアリアなのである。Papeなんかも実に見事なのだけど、強面の王がここでだけ顔を歪めて泣き顔になって歌うのである。そのへん大澤さんもよく表現していました。高音も美しく、すばらしかったです！

レルマ伯爵（押見さん）
大審問官がおつきです。（レルマ伯爵は本来テノールの役。ザルツブルク音楽祭ではリリックテノールのバンジャマン・ベルネームがやってました。）

大審問官はハオさん。モデルのようにスレンダーでかっこいいです。オーラ半端ない！
大審問官が目が不自由という芝居はもちろんいっさいないです。
声はもうメガトン級ですばらしいです。

このシーンはバス歌手2人が競うという世にも珍しいシーンなのです。

La pace dell'impero i dì val d'un ribelle

すばらしい！

Allora son io che a voi parlerò, Sire

Sire…ハオさんの最低音すごすぎる！
響く！

大審問官はロドリーゴを処刑するよう示唆する

Sire, se alcuno v'ha pari a te?
今度はSireは高音

Ritorna al tuo dover; la Chiesa all'uom che spera

ポーザ候を渡しなさい。

いやだ！

退出しようとする

仲直りしようではないか

仲直り？
さあな。

Dunque il trono piegar
dovrà sempre all'altar!
王座も神には屈するのか。
最低音です。

エリザベッタ
宝石箱が盗まれたと訴える。

フィリッポは残酷になっている。

それはこれのことか？
カルロの肖像がお前の宝石箱に。

王はエリザベッタを侮辱し、
エリザベッタは気絶する。
ロドリーゴ、エボリ、フィリッポの三重唱
すばらしい！
そして
ロドリーゴ、エボリ、フィリッポ、エリザベッタの四重唱へ。
すばらしい！

もう溶けそうでした！

王が退出。ロドリーゴも従う。

エボリは不貞の罪をエリザベッタに告白する。

去りなさい

エボリの
最大の見せ場
O Don Fatal
呪わしき美貌よ

すばらしかった！

牢獄
囚われているカルロの元にロドリーゴが。

Per me giunto

O Carlo, ascolta

ここがもう～
最高にすばらしいロドリーゴのアリア二連発！
藪内さんのお声はサイモン・キーンリーサイドを連想させる。
さらに美声。
そして徹底的にレガート！
柴田さんの牽引も見事だが
そのレガートの完璧さにもう～
打ちのめされました
感動しかありません！
彼はノーブルでまじめでまさに理想のロドリーゴ！

ロドリーゴが殺され、フィリッポがやってきます。

民衆がなだれこみますが大審問官が一喝します。

＊＊＊
最終場

エリザベッタ
最大の見せ場
Tu che le vanità conoscesti del mondo
♪この世の虚しさを知る神よ

これが本当にものすごかったです！
すばらしい！
パワフルでそれでいて美しい！
大感動でした。

エリザベッタはひざまずく。

カルロ
二重唱
これまたすばらしい！

フィリッポが聞いています

Addio!

Per sempre!

カルロは消えます

カルロ5世の声が響きます

恐れおののく大審問官と
フィリッポ

全幕了

お疲れ様でした！
すばらしい公演を2020年というこの年に企画してくれてありがとうと言いたいです。
ヴェルディは大きな山ですがやっぱり登ってほしいです。
よろしくお願いいたします。

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