死とか


莉沙が今まで出会った身近な死。

婆ちゃんが死んだ時。みとってあげられなかった。
莉沙はまだ小5で、朝起きて家に電話が入って、急いで皆で病院に行った。
爺ちゃんは泣いてた。その時初めて爺ちゃんの涙を見た。
母さんと母さんの妹は走って病室まで行った。
莉沙と弟は母さんの妹の旦那サンと一緒に病室まであがってった。
病室についたら、狭い真っ白な個室に婆ちゃんが1人で寝てた。
母さん達は婆ちゃんに抱き付くようにして泣いていた。
廊下では看護婦サンが忙しく走りまわっている。
  「莉沙達、邪魔だから廊下にでてて」
母さんは莉沙と弟にそう言った。邪魔だって。そりゃ小学生で何もできないよ。
でも邪魔って言われたのがショックだった。大好きな婆ちゃんに何かしてあげたかったのに。
莉沙は廊下に蹲って泣いた。何もできない。子供だから。悔しかった。
大好きだったのに。婆ちゃんの事大好きだったのに。

親戚の叔母さんが亡くなった時もそうだった。婆ちゃんが死んで一年後だった。
婆ちゃんの妹にあたる人だった。本物の孫みたく可愛がって貰った。
火葬する時。莉沙は我侭を言った。堪えられなかったんだ。
  「やめて!燃やさないで!」
そんなの無理に決まってる。我侭言って周りを困らせた。何もできないのに。
親戚の兄さんが慰めてくれたけど、それもまた兄さんに迷惑かけたと思う。
火葬が終わって、出てきた叔母さんは細い骨になっていた。
銀の大きな台の上に乗った白い骨が未だに目に焼き付いている。

中1のある雨の日。学校に行く途中だった。カナリ大降りの雨だった。
猫だか犬だかが、車に轢かれたと思われる無残なカタチで死んでいた。
顔は無くて、雨で血が滲んで、内臓とかも色々出て仕舞っていた。
犬か猫か判別もつかないくらい。カラダのカタチは何とかわかった。
まだ轢かれた場所だと思われる、道路の真ん中で淋しそうに濡れていた。
でも莉沙は動けなかった。あまりにも残酷な死に方だったから。
学校にも遅刻しそうなギリギリの時間だった。
せめて道路の脇にでも寄せてあげれば良かった。今はそう思う。
でも莉沙はその子を置き去りに、学校へ行ってしまった。
  ごめんね。ごめんね。端にでも寄せてあげて、埋めてあげれば良かったね。
  学校なんて遅刻しても良いから、君を供養でもしてあげればよかったね。
  淋しかったよね。寒かったよね。痛かったよね。ごめんね。
学校に着いてからも授業もまともに手につかず、あの風景が浮かんできて泣けてしまった。

中2の2月。2月の初めくらいに、祭からメールがきた。祭はアキヒロの親友。
  アキヒロ今月いっぱいだって。俺そんな気全然しないんだけど、
  莉沙どう思う?アキヒロの奴が死ぬと思う?
正直信じられなかった。アキヒロが死ぬ訳ないじゃんって、普通に信じなかった。
2月の後半になって、アキヒロは滅多にチャットに来なくなった。
でも祭とかは来てて、少し嫌な予感がしたんだ。でも気付かない振りをした。
核心を持つのが怖かったから。信じるのが怖かったから。
2月の17日。祭は改まったように皆に話しがあると言った。
核心をつかれそうで怖かった。祭は言った。
  落ち付いて聞けよ。アキヒロは15日に逝った。
落ち付いてなんて居られる訳がない。莉沙はその発言を見た後すぐにブラウザを閉じた。
18日はパソコンには触れなかった。つらいのは自分だけじゃないのはわかってた。
でもネットなんてできる状態じゃなかった。何もできない状態だった。
皆つらいのに1人だけ逃げた自分に嫌気がさして腕を滅茶苦茶に切り刻んだ。
15日にアキヒロは逝った。どんな想いをして逝ったんだろう。
莉沙は15日。暢気に遊んでた。それが悔しかった。

その後、中3の6月、祭がアキヒロの後を追うように死んだ。
その時も莉沙は寝てて。朝、真里君から拓の転送メールが着た事に気がついて。

身近な死。この5つが特に自分の中で身近な、強烈な死だったと思う。
その時の情景。風景。感情。今でも痛いように思い出せる。
思い出せるってより、忘れられないって言った方が正しいかもしれない。

自分が凄い厭だった。何も気付かない自分が。


何もできない。誰にも何もしてやれない。
今も麻は植物状態で。生きてるのに何もしてやれない。

無力なんだよ。莉沙は。


死とかやっぱりよくわかんないよ。

2003/04/01 (Tue) +α(2003/08/02

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