たこたこのまったりライフ

たこたこのまったりライフ

震える岩



普通の人間に見えない幽霊や残留思念が分かる少女お初。
深川で起きた「死人憑き」を与力の跡取息子の右京之介と調べ始める。
事件の背後には100年前に起きた赤穂浪士討ち入りがあった。

宮部みゆきの描く小説には不思議な力を持った人物がたびたび登場する。
人には見えないものが見えるお初はその能力を生かして、岡っ引きの兄の力になっている。
今のように科学が発達していなかった時代、お初の能力を知っている人々も彼女に暖かく接している。
そのせいかお初は明るく描かれている。
だが現在だとそうはいかない。
同じ宮部作品でも『クロスファイア』や『龍は眠る』で特殊能力を持った人物が登場するが、
彼らはお初よりずっと悩み苦しんでいる気がする。

赤穂浪士の討ち入りという史実をこの作品ではうまく絡めてある。
芝居やテレビでよく取り上げられる事件だが、その中で真実はどれくらい語られているのだろうか?
伝わるうちに変わっていくことも多いだろう。
私達が知ってることは歴史の断片でしかない。
お初が「仮名手本忠臣蔵」の芝居を見て「大石内蔵介がこの芝居を見たらどう思うのか」と
物悲しくなる気持ちが分かる気がした。

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