たこたこのまったりライフ

たこたこのまったりライフ

龍は眠る



台風の夜に車で東京に向かっていた雑誌記者の高坂昭吾は
自転車をパンクさせ立ち往生していた少年・稲村慎司を拾った。
子供が行方不明になった事件に遭遇した彼ら。
超能力を持つ慎司は事件の真相を語り始めたことがきっかけで事態は思わぬ方向へ流れ出す。

超能力を活かしたい慎司、隠し通したい彼の友人の織田直也、
そして彼らを信じていいのか迷う高坂。
翻弄されている様子がうまく描かれている。
そして高坂の元恋人の誘拐事件が起こり、なぜ誘拐されたのか超能力のない私は
高坂と一緒に何故だろうと考え込んでしまった。

宮部みゆきは度々特殊能力を持った人間とその苦悩を描いているが、
本作では普通の人間が語り手となる点が他の作品と異なる。
自分がそういう人と出会ってしまったら、やはりすんなり信じられないだろう。
慎司の父親が「信じる、信じないの問題ではない、そこにあるのだから」と言うのだが、
ずっと側で見てきたからそういう結論が出せるのだと思う。
理解してもらうことを諦めた特殊能力者も大勢いるのかもしれない。

それから高坂の元恋人の小枝子に対してはフィクションだと分かっていても複雑な心境になってしまう。
高坂に子供を作る能力が欠けていることを知ると、
「家庭には子供がいなければ完璧でない。中途半端な人生を押し付けるな」と別れを告げる。
私は子供がいないことが不幸せだと思わないが、
「人の親とならない限りは一人前の人間ではない」という通念を押し付けられたら、いい気はしない。
いろんな生き方があることを受け入れるのは難しいと改めて思った。

宮部みゆきの長編では「火車」、「レベルE」、「魔術はささやく」と並ぶ私のお薦め作品です。

© Rakuten Group, Inc.
X
Design a Mobile Site
スマートフォン版を閲覧 | PC版を閲覧
Share by: