如意宝珠を求めて、、、

如意宝珠を求めて、、、

ガラスのむこう



 どうやら新たな住人が越してきたようだ。いや正確に言えば、既に半年ほど前に引っ越してきていた二人暮しの老夫婦の許に、30半ばのやけに紅い口紅の女が、まだ小学校に入ったばかりであろう女の子を連れて、ある日突然転がり込んできた。

 時折階段で顔を会わしたりすると、「いつもうるさくてすみませんねえ、、、」と申し訳なさそうにその女の母親であろうおばあさんが頭を下げてきた。

 でも不思議なことに、いつも聞こえてくるのはその女のかん高い怒鳴り声だけであって、怒鳴られているであろう当の小学生の女の子の泣き声や許しを乞う声などは、ついぞ聞こえてきたためしがない。

 はたしてその娘は、誰もいない部屋で、居るはずもない相手に向かって、一人大声で叫び続けているんだろうか。

 それとも、訳もなく怒鳴りつけられることに対し、ただじっと無言で時の経つのを待っているのだろうか、その女の子は。


 女の子のことを思うと哀しくなる。

 おばあさんのことを思うともっと切なくなる。

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