自由人の舘

自由人の舘

PR

Keyword Search

▼キーワード検索

Profile

たけし8535

たけし8535

Freepage List

2005/07/18
XML
カテゴリ: カテゴリ未分類
 僕は混乱したり、気分が迷った日には洗濯をする。これは僕が4年と少し前に一人暮らしを始めてから行っている習慣だ。前回洗濯済みの服をたたんで片付け、汗や汚れを吸い込んだ服をきれいにし、しわを伸ばして干す。そうすれば少しは気分が晴れるような気がする。結局、それはあくまでもそんな気がするだけで大抵は、洗濯物と違って僕の心はちっともきれいになんかならないし、しわだって伸びないし、それをどこに片付けたらいいのかだってわからない。さて今日はどうだろうか。洗濯機は思わせぶりに今も回り続けている。

 そんなことを思い出しながら、僕は食事中に携帯電話に目をやったが、もちろん電話は鳴らなかった。
 久しぶりに僕は一人ぼっちを実感した。僕は誰にも話すべき科白を持たなかったし、もしそれがあったとしても、誰もそんなものに耳なんて貸さなかっただろう。そう、僕は一人になったのだ。4年間の一人暮らしの生活を思い出してみると、どうやら僕は一人の期間とそうでない期間を、一年ずつ交互に過ごしているみたいだった。僕が一人でいる期間はなんら珍しいものではないのだ。でもそんなことがわかったからといって僕の気持ちが軽くなるわけではなかった。むしろ余計に寂しくなった。僕は、今までの僕が一人で暮らしていた期間に、自分がどうやって生活していたかを思い出そうとしたが、どんなイメージも湧いてはこなかった。それらの記憶はすっかり洗い流され、しわも伸ばされた上にきれいにたたまれて、どこかに片付けられてしまったみたいだった。
 僕は、僕の隣で誰かが一緒に夕食を食べているところを想像してみた。きっと僕はビールを飲んで顔を赤らめているだろうし、それを見て隣にいる誰かは僕から3本目のビールを取り上げるだろう。そしてそれを自分のグラスに注ぐ。冷蔵庫の中にはもうビールはない。だから僕はきっと心の中で“やれやれ”などとつぶやきながらタバコに火をつけるのだ。本当にやれやれだ。
 気がつくと思わせぶりな洗濯機は答えを出した様子であった。僕はタバコの火を消して飲みかけのビールの缶を置き、おそるおそる彼に近づいてみた。蓋を空ける、という行為を僕が行うのは、ひどく間違ったことのように感じられた。僕は目をつぶって息を大きく吐き出しながら蓋を開け、ゆっくりと両目を開いた。僕の目に映ったものは、案の定、複雑に絡み合った洗濯物だった。今の僕にはそれをほどいていけそうな気がしなかった。





お気に入りの記事を「いいね!」で応援しよう

Last updated  2005/07/19 04:15:19 AM
コメント(6) | コメントを書く


【毎日開催】
15記事にいいね!で1ポイント
10秒滞在
いいね! -- / --
おめでとうございます!
ミッションを達成しました。
※「ポイントを獲得する」ボタンを押すと広告が表示されます。
x
X

Favorite Blog

水曜どうでしょう等… 百年遅れの屯田兵さん

Comments

乗らない騎手@ ちょっとは木馬隠せw あのー、三 角 木 馬が家にあるってどん…
ボーボー侍@ 脇コキって言うねんな(爆笑) 前に言うてた奥さんな、オレのズボン脱が…
開放感@ 最近の大学生は凄いんですね。。 竿も玉もア○ルも全部隅々まで見られてガ…
通な俺@ 愛 液ごちそうたまでしたw http://hiru.kamerock.net/b8lc49u/ フ○…
ヒゲメタボ@ クマたんと呼ばれてます(^^; 最近はこれが流行ってるって聞いたので …

© Rakuten Group, Inc.
X
Design a Mobile Site
スマートフォン版を閲覧 | PC版を閲覧
Share by: