自由人の舘

自由人の舘

PR

Keyword Search

▼キーワード検索

Profile

たけし8535

たけし8535

Freepage List

2005/07/22
XML
カテゴリ: カテゴリ未分類
 頭の遥かに上のほうで電話がやかましく僕を呼んでいる。僕はその音で現実世界へと引き戻された。やれやれだ。手を伸ばして携帯を手にしようと思ったが、手が届く範囲にそれはないようだった。自分の姿に目をやると、下半身があらわになっていた。上半身にはTシャツが着てある。僕はとっさに隣に目をやった。もちろん隣には見知らぬ女の子なんていなかったし、見知っている女の子もいなかった。現実はドラマのようにはいかない。記憶にある範囲では僕はしっかり女の子を家まで送ったはずだ。酒に酔っていたわけではなかったが、とにかく眠かったのを覚えている。どうやら僕は家に一人で帰ってきた後に風呂に入ろうと思い、パンツを脱いだところで力尽きたようだった。体を起こそうと思ったが、まだ僕は目覚めてはいないようだった。そう、僕はまだ眠っているのだ。

 相変わらずわけのわからない話は続いていた。彼女は会話の中で僕がしゃべった後に何度か、「はっきり言って」という単語を使った。彼女が「はっきり言って」と言ったときには、決まって何もはっきりとは言わないし、当然のことながら内容だってよくわからない。そもそも僕には彼女の話を聞く気なんてないのかもしれない。彼女が「はっきり言って」と言うときには、僕に対しての攻撃的な意味合いが含まれているのだ。彼女と議論をする気なんてさらさらないのだが、それでも攻撃的に話をされれば苛立ちを覚える。きっと昔の僕なら完膚なきまでに彼女を叩き潰して、彼女は泣きながら電話を切ったであろう。でも僕は今、疲れている。それに僕は未だ眠っているのだ。僕は電話口で寝たふりをして、何も話をしなくなった。彼女は僕が寝てしまったと思い、電話口から何度も僕の名を呼んだ。うるさい、僕の名を呼ぶな。“僕は未だ眠っているのだ。”
 しばらくして電話が切れた後、僕は熱いシャワーを浴びた。前日から引き継いだ汚れと疲れは、なかなか取れそうもなかった。僕はいろんなことを洗い流してリセットしなければならない。どれだけ熱いシャワーを浴びても、まったく目が覚める気はしなかった。水滴が飛びはねる音はやがて、だれかが僕の名を呼ぶ声に聞こえてきた。でも実際は誰も僕のことなんて呼ばない。いや少なくとも、僕が僕の名を呼んでほしい誰かはもう、僕のことなんて呼ばない。僕は水を止めることも忘れて、その誰かの名を声に出して呼んでみた。その頼りない声は風呂場の壁にぶつかって下に落ち、僕の体の汚れとともに水に流されていった。僕は未だ眠っているようだった。





お気に入りの記事を「いいね!」で応援しよう

Last updated  2005/07/22 02:40:48 PM
コメント(2) | コメントを書く


【毎日開催】
15記事にいいね!で1ポイント
10秒滞在
いいね! -- / --
おめでとうございます!
ミッションを達成しました。
※「ポイントを獲得する」ボタンを押すと広告が表示されます。
x
X

Favorite Blog

水曜どうでしょう等… 百年遅れの屯田兵さん

Comments

乗らない騎手@ ちょっとは木馬隠せw あのー、三 角 木 馬が家にあるってどん…
ボーボー侍@ 脇コキって言うねんな(爆笑) 前に言うてた奥さんな、オレのズボン脱が…
開放感@ 最近の大学生は凄いんですね。。 竿も玉もア○ルも全部隅々まで見られてガ…
通な俺@ 愛 液ごちそうたまでしたw http://hiru.kamerock.net/b8lc49u/ フ○…
ヒゲメタボ@ クマたんと呼ばれてます(^^; 最近はこれが流行ってるって聞いたので …

© Rakuten Group, Inc.
X
Design a Mobile Site
スマートフォン版を閲覧 | PC版を閲覧
Share by: