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たけし8535

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2005/08/21
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カテゴリ: カテゴリ未分類
 友人が大阪の病院で腫瘍の手術をした。以前から予定されていたその手術は命に別状がある類のものではなく、彼は電話でも元気そうだった。しかし、僕はわざわざ東京から手術のためにやってきたこの友人を見舞いに、大阪の隣の駅天満へと向かった。

 京都のど真ん中に住む僕にとって、梅田という街はさほど重要度の高い街ではない。それでも僕は、去年ずいぶんこの駅と街に来たようであった。手をつなぎながら街を歩き、夕食をとり、酒を飲み、手を振って別れた。京都から愛しき人を見送るときも、僕はこの駅までやってきてここでさよならをした。僕は何度、ここで手を振って「さよなら」と言ったのだろうか。僕が彼女に言う“さよなら”はいつも優しさと愛情に溢れていた。それはきっと彼女も同じであったはずだ。でも今、僕にはここで“さよなら”を言う相手はもういない。
 病院からの帰り、僕は一人になってJR大阪駅から阪急梅田駅まで歩いた。外は雨が降っていた。数え切れないほどの足音が雨を踏みしめていた。僕は幾度となくこの道を歩いたはずだった。二人で手をつなぎながら、また時には彼女を見送った後、一人で。僕はこの道を歩み、どこへ向かおうとしていたのだろうか。今となっては何もわからない。人ごみの中を歩くのは、僕にとってとても困難な作業のように感じられた。
 彼女を送った後、何度となく一人で乗った梅田から烏丸までの電車に、僕はあの時と同じように一人で乗り込み、あの時と同じように本を読んでいる途中でぐっすりと眠った。電車を降りるとそこは日曜の夜の静かな京都の街だった。僕はやっとどこかから戻ってきたような気がした。すでに梅田は僕にとっては終わってしまった街であった。多くのものは失われてしまい、もう決して戻ってくることはなかった。僕は、僕の手元に残ったわずかばかりのものたちを、もう一度再構築しなければならない。この街で。





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Last updated  2005/08/21 11:08:09 PM
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