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たけし8535

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2006/09/15
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カテゴリ: カテゴリ未分類
 テレビのニュースなどで数年前の事件の裁判が報じられたりすると、ふと「ああもうあの事件は2年も前のことなのか・・・」なんて思うことがある。きっと僕だけじゃなくて誰にでもあることだと思う。そんなときにはそのころは自分が何をしていたかを思い出す。もちろん細かいこと(例えば3年前のある日に僕が何を食べていたかなど)は思い出せるはずもないし、思い出そうとも思わない。かと言ってあまりにもおおまかなこと(3年前僕は大学生でした)を思い出すほどに僕はまだ老け込んで過去の人間になってしまったわけではない。僕が思い出すのは大抵ある一人の女の子との思い出と、彼女への僕の思いだ。

 彼女とは僕がまだ20代に入って間もない頃に出会った。それはあっという間に終わりを告げたのだけど、彼女は僕にとって初めてのガールフレンドであった。その後も僕は彼女のことを思い続け、再び彼女が僕のガールフレンドになったとき、彼女は僕が初めて本気で愛した女性になった。そしてそれは僕の学生時代かつ若かりし時代の(ありとあらゆる意味で大学院は除く)最後の恋になった。
 その頃、僕とそして僕たちはとても無邪気で無垢で無遠慮であった。確かな未来なんてどこにもなくて、それでもそれと同じくらい迷いもどこにもなかった。ただ見えない希望と確証の何一つない明日があった。僕らと、僕らの未来にはまったく何の障害もないと信じていたのだ。
 街を一人で歩いていたり、家で一人ビールを飲んだり、一人で電車に乗ったりすると突然、隣に今でも彼女がちょこんと立っていたり座っていたりするような感覚に襲われることがある。そして一度目を閉じて再び開いたとき、彼女はもちろんそこにはいなくて、僕は自分がずいぶん大人になってしまったことに気がつく。不意にポケットの奥や引き出しの隅から出てくるその思い出は、僕に若かりし日々の甘酸っぱい感情を運んでくるのだ。僕はそれをどう処理すればいいのだろうか?
 彼女との別れを経験して以来、僕は自分でも信じられないほど、自分と自分の未来と人生についてクールで合理的になった。不確かなものは結局、どこまで行っても確かにはならず、無邪気で無垢で無遠慮な希望はいつか終わりを告げる、ということに僕は気がついてしまったのかもしれない。だから僕はその日から、たとえその手段は不確かなものであっても、確かな目的を立て未来を手に入れるために努力を重ねることにした。きっと人はこうやって若くなくなるんだ、と自分を納得させながら。それでも、いや、だからこそ僕は最後の若かりし日々を忘れえないのだと思う。

 数時間前、かつて暴力的なまでに若く幼かった僕が変化していくのを間近で見ていたガールフレンドが僕にふと、僕にかつての恋人の事を聞いた。瞬間、僕はひどく動揺した。僕はこれまで僕の思いを自分の胸の内のみに留め置き、それを素直に披瀝することはなかったからだ。僕の中でそれは最低限の「ルール」であり「マナー」だった。僕はとっさに彼女の質問をはぐらかした。しばらくして僕は彼女の質問と自分自身に対して誠実でなかったことを恥じた。僕はもちろん、かつてのように昔の恋人を愛しているわけではない。しかしながらかつてとは異なり、僕は今、昔の彼女との思い出と彼女との日々を心から愛している。これを明らかにすることが結局、「確かな」ことなのかどうかは僕にはわからないけれど。

 いつか「生きるということは変わるということだ」なんて誰かがしたり顔で言っていたのを思い出した。それでも僕が明け方に飲むビールとタバコの味は、あの日と何も変わらないように感じられた。





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Last updated  2006/09/15 06:27:31 AM
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開放感@ 最近の大学生は凄いんですね。。 竿も玉もア○ルも全部隅々まで見られてガ…
通な俺@ 愛 液ごちそうたまでしたw http://hiru.kamerock.net/b8lc49u/ フ○…
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