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こんなに売場が広いんだから、私が欲しいものも多分あるだろう。
『売場面積が広けりゃ置いてある』
そんな根拠なしの理由づけでご来店のお客さま
結構いらっしゃる。
グリャマンボ店最強のメンバー・ニシキバラさんに男性が声をかけてきた。
「ありゃあのぅ、ポリエステルのボタン糸はどこかいのぅ。」
男性で手芸用品を尋ねるのはめずらしい。
しかも年配の男性である。
キッチンに立つ男性は増えてきたものの
裁縫をするのはどこの家庭でもほぼ女性だろうに。
「ボタン糸ですか? はい、これでいいですかね?」
ニシキバラさんがご案内した糸に
男性は首を横にふった。
「ちがうわい。これはミシン糸。ワシがいるのはボタン糸じゃが。」
ニシキバラさんはミシン糸でボタンもつける。
実はあたしもそうなんだけど、細くて丈夫だから
別に手縫い用のボタン糸じゃなくてもいいんだけどね。
でも、男性はボタン糸にこだわっていらっしゃる。
しかも。並んだボタン糸は絹糸だった。
「あー、申し訳ありません。糸はここだけなんですが・・・。」
「ポリエステルのボタン糸はないですねー。」
ニシキバラさんがそうご案内したが、男性は納得しないもよう。
「いやぁ、そんなこたぁあるまいが」
「そう言わずにもう少し探してえや」
「こがあに売場が広いんじゃけぇ、ポリエステルの糸くらいあるじゃろう。」
「前にも買うたんじゃが。」
男性、ニシキバラさんのご案内に倍にして返事をした。
しかし、最強のニシキバラさんですから
こたえやしなかった。
「お客さま~、売場が広くてもないものもあるんですよ~~。」
「え~~~? まぁそう言わんと、こっちらへんも探してみんさいや」
「そうはおっしゃってもですねぇ~。
廃番になったりメーカーで在庫切れのものもあるんですよ~。」
「え~~~? 裁縫の道具だけでもこがあにあるんで?
ボタン糸くらいあるじゃろう~~~~。」
そのやりとりにイラッとしながらも
ボタン糸の表示を確認するニシキバラさんは
だんだん口調にもイラつきぶりが現れ始めた。
「お客さま、でもですね、ないものはホントにないんですよ」
「そう言わんと~~、もうちょっと探してくれえや。ひひひひひ。頼むで~~」
「こがあに売場があるんじゃけぇ、ボタン糸くらいあるじゃろう~~。」
おじいさん、どしてもポリエステルじゃないとダメなんかしら。他の糸ならいっぱいあるんだけど、代用できんのかねぇ。
「こーーーんなに広いんですけどねっ
ないもんはないんですっ」
あーあ。ニシキバラさん、バッサリやっちゃった。
そのとき。
「ないもんはない」両手を大きく使ってジェスチャーを交えてそう言いきったニシキバラさんの片手にはつかんだままのボタン糸。
お客さまのやりとりの間に手縫い用のボタン糸を一つずつとって表示を確かめていたボタン糸だったが。
その手縫い用ボタン糸の台紙の部分には、
"ポリエステル 100%"
「・・・・・・・・・・・・。」
ニシキバラさん、それを確かに認識したあと
(これが糸でなく包装のビニールの材質表示であってくれーー)
と念じながら間近で確認をした。
手縫い糸の台紙には確かに
"糸 : ポリエステル 100%"
と、記載されていた。
「コ、コホン、お、お客さま。」
「こちらの商品ですね。」
ないもんはないんですっ! と言い切ったニシキバラさんだったが
何事もなかったかのようにポリエステル100%のボタン糸を
お客さまにさしだした。
「おお、これよこれよ」
「ほれ見んさいや~~~」
「やっぱりあったじゃろう~~~」
「こがぁに売場が広いんじゃけぇ~~~」
「ひひひひひ。」
「こんなに売場が広いんですもんね~~~」
「へへへへへ」
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事務所に戻ってきたニシキバラさん。
さっきのいきさつをその場にいたメンバーに話して
「いやーーー! 冷や汗かいた!」
「売場が広いけぇあるじゃろうって言われてもねぇ!」
「じいちゃんが笑いながら強気でおしてきた。」
「何回ゆうても多分あるって根拠なくゆうてくるけぇ!」
「ないものはないんですっっ!てバッサリ斬っちゃった。」
「・・・そしたらあったけど。」
「じいちゃんに悪い事した!」
「あたし、あのじいちゃんが死んだら葬式でてもいいわ」
上司をも恐れずたてつくニシキバラさんがお客さまに完敗。
じいちゃん、笑って帰ってくれてありがとう。
ツールも人によりけりか。 2011年08月28日 コメント(2)
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