一日ひとつありがとう

一日ひとつありがとう

夏目漱石

『草枕』  夏目漱石


山道を登りながら、こう考えた。
智に働けば角が立つ。情に竿させば流される。
意地を通せば窮屈だ。
とにかく人の世は住みにくい。

住みにくさが高じると、
安いところへ引き越したくなる。
どこに越しても住みにくいと悟った時、
詩が生れて、画ができる。

人の世を作ったものは神でもなければ鬼でもない。
やはり向こう三軒両隣りにちらちらする唯の人である。

唯の人が作った人の世が住みにくいからとて、
越す国はあるまい。

あれば人でなしの国へ行くばかりだ。
人でなしの国は人の世よりもなお住みにくかろう。




『ほととぎす』  まね芋


仕事への道でこう考えた。
私の思いとちがうじゃないか

我をとおせば、腹がたつ。

いいじゃないかと笑うとすると

笑うに笑えぬ我がいる。


ならどうするとほととぎす。

ほーほけきょというばかり。
ケキョケキョケキョと早口に
泣けば誰かがくるのかい?

ほととぎすは今日もなく。

ケキョケキョケキョと我に泣く。

ほーほけきょと口笛で
ケキョケキョ走って仕事する。

なんだ疲れと汗となり
甘いまんじゅで流れ行く。

われの悩みはいつの日も
時の流れが流し行く。

ケキョケキョケキョとながれゆく。




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