楽哉

楽哉

花が咲くと喜ぶ人がいる


『死刑囚042』 小手川ゆあ著(集英社)

ヤンジャンに2ヶ月に1回くらいの割合で、短期連載する。
ちょうど今も、3週連続連載の2回目だ。
最初の頃は、ちょっと読み辛かった。
テーマが重い。
死刑制度の是非を問うているから。
これについて語りはじめると、多分ここじゃ足りなくなると思うし
他のページにする話でもないし、何よりやはりその是非の境界を見つけるには至らないだろうからやめとく。

それなのに何でハマったか。

主人公が…(照)
か………………………………………………………………… かわいいの。
顔とか、そういうんじゃなくて。

人を殺して、殺しても何も感じなくて、名を奪われ、ずっと死刑囚として物のように扱われて、
何より「人を殺しても何も感じない」ようにされて生きてきた男が
今までと全く違う角度で社会に触れて、その感触に驚いたり泣いたりする様子が、
こんな言い方はおかしいけれど、とても愛しく感じる。

人の命を奪った、しかも7人もの命を。
人はそれを悪と呼び、確かに許されることではないけれど
それを悪と判断できずに生きてきた。
いや、判断できても悪と感じられなかった。

それを悪だと、感じることが出来た時。
彼はどうなってしまうのだろう。

でも今、無慈悲なチップを頭に埋められながらも
草木の成長に一喜一憂している彼は、子供に戻ったように無邪気だと思う。

いつも思う。
行為の善悪を疑いもせず、己を悪と自覚せずに悪を働き続け
存在そのものが悪と恐れられた人間が、その行為の悪性を自覚する。
悪いことをしたなんて、これっぽちも思ってなかった。
だけど、これは悪いことだったんだ。
自分の存在を、誰でもなく自分が否定しなくてはならない。
その大きな衝撃に涙する姿は。

全部が全部とは言わないけれど、私には無防備に見えて仕方がない。

幸か不幸か、現実の世界でそういった光景を目にしたことは無く、
あくまでお話の中の事なんだが。
でも、この話も『お話』の中。
つまりは、そういうこと。

だって作者本人も、後記で『ファンタジー』って言ってるし。


© Rakuten Group, Inc.
X
Design a Mobile Site
スマートフォン版を閲覧 | PC版を閲覧
Share by: