カナダ


短期間のステイならば、と薦められたのが「ファームステイ」。
ファームにステイして労働力を提供するかわりにベッドと飯が与えられるというシステムのもの。

よし。それだ。それでいい。
10日間もカナダにいれないんだし、思いっきり手伝ってやろーじゃないか!と、張り切った時はすでに初秋。
申し込んだのは秋も真ん中過ぎ。
行ったのはすでに初冬。
初冬のカナダ・・・草木も枯れる時期にファームに一体何の手伝いをしに行く気なんだ。

バンクーバー到着。入国審査官の執拗な質問にも負けず、入国完了。
ステイ先のママが迎えに来てくれた。彼女の名はパズ。どうみても東南アジア人であるよ。

パズに腕を引っ張られ、連れて行かれた先には藁が大量に乗った小型トラックが停まっていた。
トラックから降りてきたお爺ちゃんがパパ。彼の名はフロスティ。

そして見知らぬアジア人青年が後部座席で消音状態で座っていた。
彼は本当に何も話さない。イヤなのか?なにか気に入らないのか?ちゅーか誰?

パズが「彼は日本人で、大学を卒業してからこっちに来たんだ。名前はユーヒ」と紹介してくれた。
え?日本人なの?ちゅーか大学まで卒業してんのに自己紹介も出来ないんかよ。

等と心の奥底で冷ややかに彼を評価しつつ車は1時間半程度かけてAldegroveという地区に到着。
この間、ユーヒ一言も発さず。

だいたいユーヒってどういう意味の名前だ?夕陽?
日出処天子、日の本一の黒田節、日本は日の出を賞賛する文化なのに、ユーヒの親はなぜ彼に沈む名前を与えたんだろう。
名前の通り、彼は誰よりも沈んでらっしゃるわよ、親御さん。

パズ約70歳、フロスティ85歳。一攫千金を夢見たパズ一族は50年くらい前にフィリピンからカナダへ移住したそうだ。
フロスティはアメリカ、シアトル出身。さすが移民の国、カナダ。

パズ&フロスティ宅の敷地に入ると、とにかく山羊が大量に出迎えてくれた。
よく見ると、庭の土の8割が山羊の糞である。踏まないように歩くなんてとても出来ない。
パズは早速私の長靴を用意してくれた。

朝起きて、フロスティが作ったパンケーキの朝食(美味)、鶏と山羊に餌をやり、適当にお片付けしてる内にパズが作った謎のシチューで昼食。
お掃除したり、家の中を探索(広い)してる内に夕食タイム。
夕食はフロスティお手製のハンバーガー、コールスローなどとても美味。

パズが作る謎のシチューであるが、ユーヒが「あれ食べん方がええで・・何入ってるか分からん」と言ってた。
ユーヒはすでに数週間いるので、あのシチューの具体的な製造方法を把握してるようだ。

毎日毎日山羊と雑木林に散歩しに行ったり、ビーバーの巣を見に行ったり、本当にのんびりと過ごさせてもらった。
近所のおっさん(エル)と歌って踊って台所作って(DIY)忙しくもあった。
ユーヒとバスでバンクーバーへ行った。案内してもらった気はしない。無言だし。

ユーヒとは何の交流も出来なかったなぁ。
ユーヒは途中で引きこもり、それにパズは大激怒して「あの子は何なの!!??」と一緒に行ったスーパーで愚痴を聞く羽目になったし。

こんな調子だったので10日間はあっという間だった。
彼らはまだ元気にやってるんだろうか。パズとフロスティに会いたくなる時がある。

そうそう、ユーヒ。本当は「ようへい」らしい。よう=You=ユー、へい=Hei=He=ヒー→ようへい=ユーヒが変換の経緯のようだ。

「俺日本は肌に合わない」と言ってたユーヒ。カナダも合ってないように見えたのは私だけだろうか。
是非全世界飛び回り、自分の肌にあった国を見つけてください。

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