Original Collector

M

あるのでないだろうか。それは、もちろん
自分に置き換えて、こんな人間になりたいと
考える時もあれば、理想の異性を求める時も
あるであろう。
　あれは2003年の秋だった。当時私は大学受験
戦争の真っ只中。毎日のように放課後、教室に
残り合格切符を手にする為だけにペンを動かして
いた。
　出会いとは・・偶然の重なりである。私が今
ここにいるのも偶然なのである。
　黒髪で目は細め、丸い顔で肌の綺麗な少女が
気が付けば、私の前に立ちはだかっていた。
彼女(M)は、私の世界史の問題集を取り上げ言う。
「へー、世界史これやりゆがやー。」
(・・なんだ・・この人は?確か・・Mさん・・?)
　これが、Mとの出会いだった。
今までに一回しか会話をしたことがない、ほとんど
面識が無いと言っても可笑しくない。そんなMが
私の中に入ってきた。するりと・・。
　聞けば彼女は私と同じ国立大の推薦入試を受ける
らしい、そして留学を夢見る少女であった。その
日は信じられないくらいい息が合い、意気投合した。
こんな感触は初めてだ・・。そして、こんな人は
初めてだった・・。
　その後Mは私のクラスにも時々通うようになり、
語り合い、受験の悩み、家族のことなどを聞き
支えあった。そしていつしか、一緒に合格して
海へ行こうという約束まで交わした・・。

二人は付き合ってたのか?答えは見つからない・・。

Mと一緒にいるととにかく落ち着いた。Mも私といると
そう感じるらしかったのは何よりも嬉しかった。
私はよくMに言ったものだ。
「Mって、ほんま太陽みたいなヤツやなー」
Mは少しはにかんで、少し否定して喜ぶ。このしぐさ
がたまらない。笑うと細い目がより細くなるのだが
何ともいえない、ヒール作用を感じていた。

少しずつ、違う感情が芽生えていく・・・。

残酷なことに・・大学合格をしたのは私だけであった。
彼女は茨城にある有名大学T大学を落ちた・・。
彼女の努力は無駄ではない、次がある・・そう励ます
以外方法はなかった。
しかし・・彼女は結果的に現在浪人中である。
この時期の前後から関係は薄れていく・・。
そして・・。
久しぶりMと連絡を取った・・。調子はどうだ??

「彼氏ができたー☆」

・・私はこの時どんな顔をしていたのだろう・・。
こうなる前にMの気持ちを確かめておけば、後々
落ち込むこともなかったであろう。残念である。

「理想の人」と感じていた、「好きかもしれない」
と感じていた矢先に、そこから先はシャットダウン
されてしまった・・。

次の出会いに期待をして、私は大学に入学・・。

Mみたいな人とは出会えないとは分かっている。
色々な片思いをする・・そんな時、Mの顔が
頭の中をよぎってしまう。そんな自分に少し
「なぜ今更?」と腹立たしい気持ちさえ抱いてしまう。
なぜ?　私は妥協して大切な人と付き合いたくはない。

課せられた課題は何??

常に何か理想を心の中で創造して、今ある環境で
「理想に近い人」を探すべきなのか・・。

この答えはおそらく・・手探りでは見つからない。
もう少し自分を見つめなおしたい・・。

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