Original  Collector

Original Collector

ノックの音がした・・


 丁度シャワーを浴びたばかりの南 次郎は、首にタオルを巻いて、覗き窓

から外を覗いた。

誰も居ない。不審に思いドアを開けてみる。周りを見渡した。やはり誰の姿

もない。振り返った瞬間、次郎の動きがピタッと止まった。

「あ、あんた・・誰!?」黒のタキシードとシルクハットに赤の蝶ネクタ

イ。一昔前のマジシャンを連想させる、一人の女が立ってこっちを見て笑っ

ている。少しの沈黙の後、女は言った。

「1ダースの幸せをお届けに来ました。ハッピーデリバリーサービスで

す!」

「何だそれは?てか、何処から入った?気味悪いなぁ。」女は続けて言っ

た。         「この1ダース入りのチョコでどんな願いも叶える

事ができます!」さっと次郎の前に差し出した。チョコで願いが叶うという

漫画の様な話に、次郎は驚きを隠せずにはいられない。

しかし、気づけば女から受け取っていた。なぜなら、大学の卒論に追い込み

をかけていたので暇がない。また、就職先の最終の採用通知を待つ身。そし

て、最近恋人と別れたばかりなので、面倒くさい事は早く済ませたい。「た

だし、気をつけてください。このチョコは大変貴重で現在は製造しておりま

せんので、よく考えて使ってください。」女は言うと、フッと消えた。

「わっ!!・・き・・消えた・・。」次郎は半信半疑だったが、とりあえず

一つ願い事をしてみる事にした。最初の願いは、就職先の採用。願いを言う

と次郎はすぐに床に就いた。

 翌日、今日は土曜日。暖かな日差しがカーテンの隙間から差し込む。次郎

が起きたのは昼過ぎ。

新聞を取りにポストに手を伸ばした。そこに一通の茶封筒があった。

「まさか!?」大胆に破り、一枚の用紙を取り出した。手が震えた。

「おおおおお!!!採用だーーーーーー!!!」チョコのおかげか?次郎は

部屋中を駆け回った。

調子に乗り始めた次郎。確認の為に、すぐに二個目の願いをしながらチョコ

を口にする。

「彼女と仲直りさせてくれ!!」

ピンポーン

次郎がドアを開けたと思ったら一人の女が次郎に抱きついて言った。

「次郎ぉぉぉお―――――!!!」二つ目の願いが叶った。話はとんとん拍

子に進んでいく。

次郎はその後、あっという間にチョコを食べては願いを叶えていった。気が

つけば無くなってしまった。次郎は豪邸を手に入れ、高級車を乗り回し、一

変してゴージャスな生活を送るようになっていた。そして、ある夜のことで

ある・・。

「ハッピーデリバリーサービスでーす!余ったチョコを回収に来ました。」

チョコはもうないと次郎は軽く言い放った。そして、「あなただけの幸せの

為に運んでいるのではありません!!気をつけてと言ったのに・・。」と女

が言った後に、次郎の周りは暗闇に包まれ、闇の底に突き落とされた。「う

わあああああ!!」

ガバッ

「は・・?」前にも見たことある風景。日は落ちてカーテンの隙間からそよ

風が流れてくる。

「夢か?」汗だくの次郎はシャワーを浴びた。そして、丁度浴室から出た時

だった。

ノックの音がした・・。             


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