あたしはあたしの道をいく

2007.08.06
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会社の人が貸してくれました。

彼は泣ける話が好きらしくて、色々洗脳してくれるのですが、

ちょーっとばかりタイミングが悪くて、会社の人に内緒にしてる手前、

ムキーっとなりそうでした(笑




でも、とても良かったです。



ただ、彼がオススメしてくれたように「泣ける話」ではありませんでした。

ちょっと重すぎて、泣くどころじゃないです。

ヒロシマを題材にした話なんですが、題材が身近すぎて泣く余裕はありませんでした。

「泣く」には、ある程度他人事である必要があるのだなあ、ということを知りました。







10年経ったけど、また一人殺したと思ってもらえるだろうか。


この重さが、分かるだろうか。

原爆を「仕方が無かった」と言う人たちに、分かるだろうか。

これこそ、原爆が許されない原点に近いことばだと、思う。

この言葉は、ぐさりと響きました。



でも、作品全体を通しては、軽い違和感。

それは、私には無いものが、主題の一つになっていたからでもありました。









広島って、カタカナ表記「ヒロシマ」だと特定の意味を持ちますよね。

だけど、広島に住む人間にとっては、「ヒロシマ」も日常の一部です。

広島地縁の人であれば、被爆者は普通に広島で生活しています。

逆に、広島に代々住んでいる人で、親戚に一人も被爆者が居ない人は珍しいでしょう。



私自身について言えば、私の祖父(故人)は入市被爆者です。



縁者の消息を案じて原爆投下後の広島を歩き、被爆した人のことです。



祖父が被爆したのは、広島市内に住んでいた祖父の弟家族を探してのことです。

いわゆる政界の人だった祖父の弟は、当然のことながら広島市内で働いていたので、

被爆し、8月9日に救護所で亡くなったそうです。

その祖父の弟の娘は、建物疎開のために駆り出されて被爆し、遺骨もありません。





夫自身、被爆三世です。

夫が被爆三世なのですから、義父は被爆二世ですし、大姑は被爆者本人です。



身内に「ヒロシマ」が関係しない広島人は、とても少ないと思います。

年寄りの繰言の中にも、普通にヒロシマは語られます。

被爆証言を訴えて平和運動をされている人も多いですが、

幼少時の思い出話の一つとして、普通に語られることも多いのです。

なので、私たち広島に住む人間にとって、ヒロシマは特別なものではなく、

日常の一部分になっているのです。


私にとって、この『夕凪の町』を読んで、重すぎ、近すぎたことは、差別の存在でした。


先に書いたとおり、私の夫は被爆三世です。義父は被爆二世です。大姑は被爆者です。

それは、今の広島がヒロシマの延長にある以上、私には全く違和感が無いものです。

夫だけでなく、従兄弟にも友人にも、被爆二世・三世は普通に居ます。

広島人がカープ党なのと同じくらい、まったく違和感無く、ふつうにある事実です。

なので、「差別」という言葉を全く思いつきませんでした。



被爆者が差別を受けてきた、というのは聞いたことがあります。

でも、それはずいぶん昔の話だと思っていました。

ケロイドを負ったりして、外見で見分けられる程の被爆者の話だと思っていました。



被爆二世も、差別の目で見られる。

それも、舞台となっている平成16年の時点で。

それはとても重い事実でした。



私の父は原爆以前の生まれですから、直接には原爆をしりません。

ですから、私は遺伝的に原爆の影響を受けていません。



でも、私の義父は被爆二世で、夫は被爆三世です。

つまり、私の子どもは、被爆四世です。



私自身は、原爆の遺伝の中に組み込まれていないのに、

私の子どもはその遺伝の中に組み込まれている、というのは考えたこともない事実でした。



今日は、8月6日、原爆の日です。

ヒロシマは還暦を迎え、直接ヒロシマを知っている人は少なくなってきました。



タロウやハナコが成長して社会を知る歳になったとき、

おそらくもう、被爆者の血をひくことで差別を受けることはないでしょう。

でも、それがヒロシマの記憶が薄れたことによるものだったとしたら、

それは広島に住む人間として、望ましいことだとは思えない……。



平和公園の賑わいを見ながら、タロウとハナコに伝えていくべきことを、

考えてみたりしました……。








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Last updated  2007.08.06 12:57:30
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長崎の・・・  
えみくりん  さん
高校生に対する調査で、8月9日が何の日か知らない高校生が半数以上も居る事に、日本も終わりだと思いました。。。

忘れない・語り継ぐ、それだけでは足りないような気もしますね。
(2007.08.06 13:57:42)

Re:『夕凪の街』(08/06)  
あめふりん  さん
ずいぶん前ですが筑紫哲也さんのドキュメンタリーだったか?記憶が曖昧ですが、当時アメリカで原爆を作った化学者がまだ生きていて、当時の様子を語り、来日し原爆記念館を見て、当時の被爆者の人3人と話しをしている番組を見ました。結構見ていた人も多いのでは・・・?

アメリカ人の彼は原爆を作ったこと、兵器として使用したことに全く反省の念を抱いていなくて、単なる視聴者であった私はそのとき、ものすごく腹が立ちました。

なんでなの?自分たちが同じことをされたら、どんな気持ちになるのか・・・このいつ亡くなってもおかしくないようなおじいさんにはわからないの?

見ていて悲しくなりました。あまりの冷徹な発言の数々に、もしかして政治的な意図でもあってアメリカ政府に発言の制限でもうけているの?と思ったほどです。

逆に過去に日本が中国、韓国でおこなってきたこと、真実の出来事も私たちは知らなければならないと思います。

戦争について、平和について・・・遠いイラクで起こっていることと思っていてはいけないと思います。

未来の子供たちのために大人の私たちが無関心でいることが一番いけないことですね。 (2007.08.06 18:01:50)

Re:『夕凪の街』(08/06)  
愛矢菜 さん
今では ヒロシマやナガサキを教えない学校もあるんだとか。

広島や長崎に、縁もゆかりもない私でも
それでいいのか…と思います。

小学校の修学旅行で、広島に行きました。
子供にとっては 怖くて気持ち悪くて恐ろしくて…
というのが本音だったけど、
それでも そのぶん、原爆がどんなに怖いものかというのが
ずしーんと心に刻まれました。

知らない ってことが、
一番 怖いことなのかもしれません。
(2007.08.06 23:03:48)

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