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タスマニア紀行 (04年3月)
た。
<< タスマニア島 >>
テンドルマンで扱っているハーブティーのうち、オーストラリア産のハーブがあるのはご存知だと思います。それらはすべて、オーストラリアの南東に位置するタスマニア島で生産されています。
そこで、その生産者のGreg Whitten さんに会いに行くため、タスマニアを訪れたのです。まずは、旅行案内書にも載っているようなタスマニアの紹介から始めさせて頂き、その後A-YOU的な話に入っていきたいと思います。
タスマニア島は日本の北海道より少し狭い島ですが、そこの人口が約40万人、私が住んでいる昭島市と隣の立川市を合わせた位しか人がいないというのですから驚きです。私が伺ったのは、タスマニアの州都がある「ホバート」という街で、ここはシドニーから航空機で約2時間、メルボルンからですと約1時間という所で、タスマニア島でも南に位置しています。飛行機に乗り、上空から眺めるタスマニア島は、なんと自然が豊かな島であったことでしょう。一面緑の林や牧草地が続き、人家はといえば、その緑の中にポツン、ポツンと点在しているだけです。ここの空気は世界で一番澄んでいて、多くの人が雨水を直接飲んでいるということですが、そのことはこの景色を眺めてみるとよく理解できると感じました。
<< タスマニアの玄関口 ホバート >>
タスマニアの玄関口ホバート空港は、街の中心部から少し離れたところにあり、いかにもローカルな雰囲気をかもし出している空港です。でも、なぜかとても「懐かしい」景色に思えるから不思議です。そうです、私はタスマニア滞在の極々短い時間にこの「懐かしい」という気持ちが何度も何度も湧いてきたのです。理由は分かりませんが、とても不思議な感覚でした。
空港からタクシーで約15分もすると、街の中心部に入っていきます。ここは漁業で栄えた町ということで、港の近くには大きなレンガ造りの古い倉庫がいくつも並んでいました。また、それらの倉庫のいくつかは、捕鯨のための貯蔵倉庫(鯨油倉庫)になっていたということで、今では倉庫としてよりも、そこを改造してショッピングモールのようなものになっているものがいくつもあるそうです。私が訪れたのが土曜日ということで、その日は倉庫街があるサラマンカ通りで、マーケットが開かれていて、そこに近郊の人たちが各々店を出してにぎわっていました。また、オーガニック野菜を出品している農家の人もいて、そこの店はどこよりもにぎわっているような気がしました。このあたりは、どこの国も同じかなと感じました。
<< サラマンカマーケット >>
実は、このマーケットが開かれることは、Greg さんから教えてもらい、行ってみたのですが、この野菜の店を開いていた人が、もとハーブの栽培農家だったのです。彼女の名前は、Ann と言い、ご夫婦で昨年までテンドルマンがタスマニアから購入するハーブを作ってくれていたのです。けれども、野菜の栽培が忙しくなり、それに集中するためハーブ栽培をやめてしまったのです。最初その話を聞いたときにはとてもショックでしたが、Greg さんは引き続き生産を続けてくれるというので胸をなでおろしたしだいでした。なんといっても、私がいろいろなハーブを見てきた中で、これほど素晴らしいハーブを見たことがなかった訳ですから、これがなくなってしまうと考えただけで、“ぞっと”したのでした。
このマーケットでは、タスマニアで取れる鉱物を販売している店があったり、エッセンシャルオイルやマッサージオイル、クリームなども売っていたりしました。もっと時間をかけてゆっくり見たいと思ったのですが、雨が激しく、また次のスケジュールに押され、さっと通り過ぎるだけになってしまいました。
次回行ったときはゆっくりと見物したいと思いました。
<< ホテルでの出来事 !! 1 >>
ホテルは、そのサラマンカマーケットが開かれているサラマンカ通りからタクシーで5分程度のCoros Hotel にし、その気さくなサービスは日本のホテルを思わせるような感じがし、とてもいい気分でした。昔、サンフランシスコのダウンタウンのホテルに泊まったときがあるのですが、その時のサービスとはまったく異なっていました。そのサンフランシスコのホテルも決して安いホテルではないのですが、、、。
さて、そのホテルのレストランで一つ困ったことが起きました。せっかくタスマニアに来たのだから、シーフードを注文しようと思い、サーモン料理を頼みました。ウェイトレスの女性も、快く受けてくれたのですが、数分後、その彼女が戻ってきて、何か言うのです。私も英語は余り達者ではありませんが、今までの会話においてはまったく不便はありませんでした。ところが、その彼女の言うことの半分も理解できなかったのです。
理解した部分としては、サーモンがすでに無くなってしまったので、代わりの魚を用意しようと思うがどうでしょうか?そこまではすんなり分りました。その後です。彼女がその魚料理を説明してくれたのですが、何がなんだかまっるきり分らなくなってしまったのです。
<< ホテルでの出来事 !! 2 >>
まず、魚の名前が全然分りませんし、その料理法を説明しているのですが、それも良く理解できませんでした。まぁ、とりあえず何でもいいや、という気になりそのお薦めの魚料理を頼むことにしました。運ばれてきた料理を見ると、魚のフライですが、その大きさといったらありません。そして食べてみてまたびっくりしたのですが、その美味しさです。鱈のようにあっさりした口当たりに、ぎっちり身が詰まり、それを上手にフライにしてあるのです。その魚の名前を聞いたら、Trevella(別名Blue-eye)という深海魚ということで、ここタスマニアではそれほど珍しい魚ではないそうですが、初めて食べたその魚の美味しさに驚きました。
また、このレストランのサービスで驚いたのが、迷惑を掛けてしまったので、コーヒーをサービスさせて欲しいということでした。日本のレストランでもこんなことは滅多に無いことですので、なんと気持が良いサービスなのだろうと関心してしまいました。
さて、夜も更け、せっかく地球の南半球に来たのだから、南十字星でも見ようと思い、外に出てはみたのですが、あいにくの曇り空のため見る事がきませんでした。それが、今回の旅での心残りの一つです。
さぁ、いよいよ明日はGregさんとの出会いです。
そして、これからがA-YOUらしい文になっていくと思います。
<< Mr.Greg さんはナチュラリスト >>
「ナチュラリスト」という言葉はご存知だと思います。「自然主義者」・「自然愛好家」などと約されていますが、実は本当のナチュラリストにはまだ会ったことがありませんでした。ただ、あえて言えば、秋田県稲川町の栗林さんは、ナチュラリストといってもよいと思いますが、それ以上の人がMr.Gregg Whitten だったのです。
テンドルマンでは数年前からハーブティーをタスマニアから輸入(ちょっと大げさな言い方かな?購入レベルかな)していますが、その生産者の一人が彼だったのです。
このハーブティーは、私が今まで出会ったハーブティーの中でも、もっとも素晴らしい物で、どんな場所で栽培され、どんな人がこの栽培に関わっているのか、とても興味を持っていたのでした。メール等でやりとりをしているうちに、どうしてもこの人の会ってみたい、話をしてみたいと思い、今回のタスマニア行きが実現したわけですが、会ってみて、「やはり、この人か」という感想を持ったのです。
<< Gregさんの周りの自然 >>
彼の家は、タスマニアの州都ホバートから南に約1時間の所にあるのですが、途中からものすごい上り坂になっていて、彼がメールで送って来た「どんな車で来るのか?」という意味がここで初めて分りました。
山道は日本の林道とう感じがし、木々の種類も常緑樹から針葉樹まで、幅広い種類が茂っていました。ただ、最近ではユーカリの木が自生を始めてしまい、その他の樹木が育たなくなってしまい、植生が変化してしまったということも、今回のガイドをしてくれた現地の人に聞き、改めてユーカリの生命力の強さに驚かされました。急な坂道をしばらく登っていくと、門があり、その奥に平屋建ての一軒屋が見えてきました。その庭に入っていくと、真っ白な髭を顔に蓄えた優しそうな目をした男の人が出てきました。すぐにこの人がグレッグさんと分りました。
<< Gregさんの家は全部手作り >>
ひととおりの挨拶をした後、家の中に案内されたのですが、ここでは日本式に靴を脱ぐように指示されました。中に入るとなんともいい香りがし、とても居心地が良い家という印象を持ち、そしてこの家が彼の手作りであることを聞き、さらにびっくりしてしまいました。壁の素材や床の素材は天然のものを使用し、その壁や床の色も自然の色であることを説明してもらいました。床には、ミツロウを塗りこんであるということは理解できたのですが、その他何を使用しているかは、聞き漏らしてしまったのが残念です。
<< ハウスシック症候群 >>
ハウスシック症候群というのを聞いた事があると思います。これは、建築材料に使用されている塗料や、壁紙の糊などの含まれている化学物資が、身体にアレルギー症状を引き起こさせることです。十数年前までは新築した家に引っ越した人が、その後原因不明の体調不良になり、これは何かの「タタリ」などと言われていたこともありました。しかし、近年では、これが家を建てるときに使用する建材に含まれている化学物質の仕業であることが分り、最近ではこれらを使用しない家が増えてきました。けれども、まだ安い建売住宅の中には、多くの化学物質が使用されていて、たくさんの人がこれにより苦しんでいるのを見かけます。
そもそも、家とは、人にとって最も安らぐことのできる場所であるのですから、それが原因で病気になってしまっては話になりません。
<< Greg さんの家はハウスシックとは無関係 >>
グレッグさんの家は、まさに天然素材100%(といっても過言ではない)でできている家ですので、これが原因でハウスシック症候群になるようなことはまず考えられないでしょう。また、そのような素材でできていますので、安らぎを感じる家になっているのです。
さて、家に入り自家製のハーブティーをご馳走してもらいました。ブレンドは、アンジェリカルート(Angelica archangelica)・マッシュマロールート(Althaea officinalis)・リコリスルート(Glycyrrhiza glabra)・ラズベリーリーフ(Rubus idaeus)などのブレンドです。その他にも数種類入れたと言っていたのですが、良く分りませんでした。このハーブのブレンドをみていると、女性のためのブレンドのように思われますが、彼は特にそんなことは意識をせずにブレンドし、実に美味しいハーブティーでした。
最近ハーブティーをブレンドする時に、効能を優先してブレンドしてしまい、香りや味を考慮していなかったので、このハーブティーを飲み、反省させられました。そのハーブティーは、かなり濃い目に抽出されていましたので、お湯で薄めて飲んでも美味しく頂くことが出来ました。
<< ハーブ畑 >>
ティータイムの後は、ハーブの栽培畑を見せてもらうことになりましたが、タスマニアにしては珍しい大雨のため、視界も悪く土地もぬかるんでいましたが、ここまで来てハーブを見ないわけにはいきませんので、長靴と大きな傘を借りて畑まで降りていきました。
雨は激しく傘をたたき、数十メートル先のユーカリの林がかすんで見えるほどでした。グレッグさんとガイドさんの話しによると、タスマニアに降る雨は、降ってもシャワーと呼ばれる程度の弱い雨で、一日中雨が降り続くことは、一年の内でも数えるほどしかないということでした。ちなみにタスマニアには、台風(サイクロン)も来ることもなく、また地震も無いことからとても住みやすい土地だということも聞きました。
さて、そんな珍しい大雨の中、私たちはハーブの畑を案内してもらいましたが、残念なことに、この時期はほとんどのハーブが刈り取られた後で、極少数のハーブの花しか見る事ができませんでした。
それども、普段目にすることが出来ない多くのハーブを見る事ができ、とても幸せな気分に浸ることが出来ました。
<< 初体験ベジタリアンの食事 >>
ハーブの農園や乾燥室などを見せていただき、もう少し外の景色を見ていたかったのですが、雨が激しく、私たちは家の中に入ることになりました。
ここで、皆で昼食を食べることになったのですが、この昼食は少し楽しみなところがあり、それはグレッグさんがベジタリアンであるということです。
私も数人のベジタリアンを知っていますし、私も出来るならベジタリアンにならなければ、と考えながらも、いつもそこで終わってしまい、反省をしているのです。そんな意思の弱い私ですから、ベジタリアンとして長年生活している人は、尊敬の的と言って過言ではありません。
食卓のテーブルにつき、出された食事は、私がかつてイメージしていたベジタリアン食とは程遠いものでした。でも、手が込んでいるものではなく、シンプルでとても美味しそうに見えました。
彼はベジタリアンと言っても完全なベジタリアンでは無く、卵と乳製品は摂ることの出来るベジタリアンでしたので、パンとバターが食卓には乗っていました。また、もし、私がベジタリアン食が嫌なら、他の食べ物を用意するとも言っていたので、他人に強制するようなベジタリアンではないのです。
<< ベジタリアン 1 >>
さて、ベジタリンと言ってもいろいろなタイプやそれになった動機など様々です。グレッグさんが何故ベジタリアンになったかについては、聞き漏らしてしまったのですが、アメリカなどの例では、宗教上の理由や健康のためなどが多いようです。私の知人の一人(日本人)は、お腹の周りの肉を取りたいという単純な理由からベジタリアンになった人もいます。また、突然、肉を食べたく無くなったという人もいるのです。
健康と食を論じる人の中には、ベジタリンになることをすすめる人も少なくありませんが、その根拠となるものは、動物性のたんぱく質と脂肪の過剰摂取が健康に及ぼす影響が多い事からこのようなことを言っているようです。また、食料危機に関して、人類が肉食をやめるか減らすことにより、地球上のあらゆる飢えを無くすことが出来ると言っている人もいます。
これは、牛を肥育するためには、広大な土地に彼らを育てる牧草地が必要になりますが、その牧草地の代わりに、野菜や穀物を栽培すれば、計算上は地球上の全人類に十分な食物を供給できるということです。
とにかく様々な理由があり、ベジタリアンになる訳ですが、彼らの「市民権」は決して安定しているものでは無いと言う事も、特に日本においては事実です。
<< ベジタリアン 2 >>
これは、ベジタリアン先進国のアメリカにおいては、彼らのための専門の食料品店が多く存在し、特に都市部においてはその食料の調達に苦労をしないと言われています。まぁ、農村部においては、自分の畑や庭で食料を育てることが出来ますので、そこにおいてもそれほどの苦労は無いと思いますが・・・。
また、ベジタリアンにとって最もつらいことが、会社の仲間や友人との食事と言います。友人に関しては理解を示してくれるようですが、会社のお付き合いになると、「変な宗教に感化された」などということを言われ、なんとなく疎外感を味わったと言う話も聞きます。食に関する問題は、個々の問題で、それぞれが自分の思うものを持っている人もいるので、あまり干渉をして欲しくないと思うのです。
<< タスマニアの自然 >>
さて、グレッグさんとの食事も終わり、ハーブティーを飲みながらいろいろな話をしました。彼はあまり英語が達者でない私のために、ゆっくりと話をしてくれますが、話に熱が入ってくるとどうしてもそのスピードが上がってしまいます。そんな時は聞き漏らすことが多いのですが、時折ガイドの「ケンさん」が助け舟を出してくれます。彼もプロでして、私が通訳ということではお願いをしていないので、余計な事は絶対に助け舟を出しません。ただ、重要なことを聞き漏らした時などは、時折声を掛けてくれるのです。
グレッグさんの話の中でも特に印象深いことが、タスマニアにおける自然界の植物の植生が、ユーカリが増えることにより、随分と変化してしまったということです。これは、ガイドのケンさんから少し聞いていたのですが、グレッグさんの話を聞きさらに納得する部分が多くあったのです。
<< タスマニアのレインフォレスト 1 >>
タスマニアを含むオーストラリアは、かつては南アメリカや南極と一緒に超大陸ゴンドワナの一部として、存在していました。その後、地形が変化してそれぞれが独立した大陸となったわけですが、その頃から生き延びた植物群があるのです。
学名に南極(Antarctica)という名前のついたシダなども存在しているのは、なんともロマンがある話だと思いませんか?また、オーストラリア州では珍しい針葉樹があるのもこの古代の名残と言われています。
タスマニアの植生は大きく3つに分かれていると言われています。湿って暗い森のレインフォレスト(冷温帯雨林)と言われている太古の森、乾いて明るいユーカリの森、そして湿原です。もちろん森は混合林も存在していますが、大きく分けるとこの3つになるそうです。(AJPRの文章より引用させていただきました)
<< タスマニアのレインフォレスト 2 >>
そして最近では、この森のうちレインフォレストが減少しているということです。それは、森には自然発火により山火事という問題がつきまとっていて、この森も決して例外ではないということです。レインフォレストは山の南側や南東側の斜面など、暗く湿った地域に存在しているのですが、一度山火事には会いこの森が消失してしまうと、元の姿に戻るまでには400年以上の年月がかかってしまうということなのです。
(南半球ですので、山の南側は日が当たらない)
山火事のすぐ後には、ユーカリのような生命力の強い木が根を下ろします。ユーカリは成長も早く、数十年のうちには森を形成するようになるのですが、精油を採る樹木だけに、葉に大量のアルコール分を含んでいるため、燃えやすい樹木とも言えるのです。したがってユーカリが増えてきた森は、新陳代謝(山火事が頻繁に起こり、また新しいユーカリが生まれる)が激しく、成長に時間がかかるレインフォレストが、少しずつユーカリの森に変わっていってしまうということです。
<< タスマニアのユーカリ >>
ここで私たちがユーカリと呼んでいる植物ですが、アロマセラピーの世界では「ユーカリグロブルス(Eucalyptus globules)」または「ユーカリラジアタ(Eucalyptus radiata)」
が良く知られていますね。ただ、ユーカリという植物は、豪州全体でも600種、タスマニアにおいても50種類はあるといわれている、とても幅広い属をもつ植物なのです。
そしてこのユーカリですが、グロブルスやラジアタなどのような精油を抽出する種類は、ペパーミント群と呼ばれ、その他にもガムツリー群(ゴムのような樹液をだす)ものやアッシュ群(巨大ユーカリグループ)に分けられると言われます。
タスマニアには、スノーガムやブルーガム、アボリジニがその樹液を発酵させて飲んだと言われるサイダーガムなどと言われるユーカリが多く存在していて、精油を採るユーカリは少ないとのことでした。ただ、ユーカリグロブルスは、グレッグさんの農場の近くにも成育していて、間近に見る事ができました。ラジアタは、タスマニアでも北の地域やオーストラリアの本土で多く生育しているとのことでした。次回ここを訪れる時には、ぜひタスマニアの北部地域のラジアタを見てみたいと思っています。
<<ショック 日本企業の進出 >>
また、日本のパルプ関連の企業が、タスマニアの森の木を切っているというショッキングな話も聞きました。「ここでも日本企業か」というのが、同じ日本人としてとても恥ずかしく感じたものです。
<< Gregさんと別れを告げて >>
ここで過ごす時間は、その時の過ぎるのを忘れさせてくれるような素晴らしい時間でした。あっという間に数時間が過ぎ、私も戻らなければならない時間になってしまったのです。名残惜しさを胸に秘め、彼との再会を約束して私はまた車に乗り、その山を下っていったのです。
グレッグさんの家から空港までは、直線距離にすれば40分くらいの距離です。時計を見るとまだ時間に余裕があったので、空港へ行く途中でちょっと寄り道をしてもらいました。もし、天気が良ければ、この近辺の観光案内をお願いしていたのですが、この雨やグレッグさんの家でゆっくりしたため、「観光」をする程の時間が取れなくなってしまったのです。そこで、空港とホバート市内の間にあるショッピングセンターを案内してもらうことにしたのです。これは、ハーブやアロマ関連の何か面白い物があるかどうかを探したかったのです。先日、この島に来る前の短い時間でしたが、シドニーの街へ行き、ガイドブックに載っているリラクゼーションスポットやショップを見て回ったのですが、このタスマニアでなにか発見があるかどうかを知りたかったのです。
<< タスマニアショッピングセンター 精油 >>
どのドラッグストアーにも、必ず言っていいほど、エッセンシャルオイルを販売していました。メーカーは初めて見るものばかりでしたが、学名表示はもちろんのこと、主だった成分が記載されているメーカーもあり、精油が雑貨という分野から一歩抜け出ているというイメージを持ちました。
日本でも、徐々にその傾向になるようですが、まだまだ得たいの知れない精油が販売されているのも現状です。精油は化学物質です。また、ハーブという“薬用植物”の成分が凝縮されている物であることは、すなわち薬に近いといっても過言ではありません。ですから、間違った使用方法をすることは、とても危険であるという認識を、アロマセラピーを行う者は常に持たなければならないのです。
<< 閉店時間 >>
そんなことを考えながらショッピングセンターを覗いていたのですが、午後5時前だというのに閉店している店が多いのには驚きました。
これは、タスマニアの人は、あまりお金にガツガツするということがない、ということらしいのですが、心にとても余裕があるといことだとも言っていました。
<< 遠く、そして近くに感じる島 >>
灰色で低く垂れ下がった雲は、1日中タスマニアの空を覆い、世界で一番きれいと言われる雨が、夕方になっても降り続いていました。24時間前、この島に着いたときには、きれいな夕日を眺めることが出来たのに、今は薄暗い中でこの島を離れようとしています。
タスマニアは、日本からシドニーやメルボルンを経由して約12時間もかかる遠い島です。でも、その島が何故かとても懐かしく、そして近く感じるから不思議です。
日本に帰ってからその理由をいろいろと考えてみました。
まず、時差がほとんどありません。3月であれば、向こうは夏時間のため、日本より2時間進んでいますが、4月以降は1時間しか差がありません。植生においても、日本にはユーカリこそありませんが、針葉樹や広葉樹など似ているような植物が多く生育していることも、原因かも知れません。
街の景色や住んでいる人はもちろん違いますが、車の左側通行は日本と同じですし、走っている車の80%位は日本車ということも、遠い国に来ているという感覚を麻痺させられてしまったのではないかと思います。
それと人間性かもしれません。タスマニアは、オーストラリア本土と同じようにイギリスからの移民が多い島です。もちろん先住民族たちも多く暮らしていますが、多くの国の移民を受け入れるという寛容さが、私のような旅行者に対しても持っているということが、この国を遠い異国と感じさせないものがあるのかと思いました。
<< 偶然の出会い >>
数年前、偶然に見つけたオーストラリアのハーブの業者さん。それはグレッグさんでは無かったのですが、その業者さんが供給するハーブの品質に驚き、少しずつですが取引を始め、そして去年、その会社をグレッグさんが引き継いだのをきっかけに、どうしてもタスマニアに行きたいという思いが強くなり、とうとう今年行ってきました。当初のイメージ通りこの島は素晴らしいところで、今回の旅では、ほんの一部分しか見る事ができなかったのですが、でもその素晴らしさは十分に感じることが出来ました。
多分、私の人生の中で今後も数回訪れたい場所の一つになるでしょうし、十数年前、秋田県稲川町の農家の人たちと出会った時と同じように、今回の数々の出会いが、私にとっていろいろな影響を与えてくれることと思います。
最後のこのタスマニアの素晴らしい自然が永遠に続くこと、そしてグレッグさんやケンさんなど、今回の旅で知り合った方々との交流が長く続くことを願いながらこのタスマニア紀行を終わりにしたいと思います。
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