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カテゴリ: 今日読んだ漫画


蟲師【10】  漆原友紀著

詩のように美しい物語だった。

深い山、滴る緑、地の底を流れる光の川。淡く揺らぐ光に心奪われるとき、人は蟲にからめとられていく。

蟲――思考を持つというわけでもなく、ただ本能に従って在る様に在る、此処と異界の狭間に生きるモノ。。。想像の産物と言ってしまえば、そうなのだけれど、それらを通して世界を見ることで、私たちの失った感覚―自然に対する恐れや、敬い尊ぶ心、美しさに感動する気持ちといったもの―がありありと浮き彫りにされる。不思議に心揺さぶられるのである。

10巻は「光の緒」「常の樹」「香る闇」「鈴の雫」の4編から成る。

「光の緒」蟲師が妖質と呼ぶ光るモノを糸のように紡ぎ出せる女とその息子の話。何となくお伽話のような雰囲気を持つ、珍しく明るい結末のお話。

「常の樹」里の守り神のような1本の大木の、長い長い記憶を受け継いでしまった男の話。人間のキャパを超えた記憶を一人の人間が持つというのは、なんだか空恐ろしい気もする。大木が山や里を長年やさしく見守ってきたことを思わせるラストが感動的。

「香る闇」
時の回廊をぐるぐる回り続けるような、少しSF仕立ての話。
何度かからくりに気づいてしまいそうになるけれど気づかずに来た。しかし、そのループはギンコによって破られる。しかし、新しい時を刻もうとしたその時。。。

「鈴の雫」
山からヌシに選ばれた少女の話。
ヒトはヌシになれるのか。少女は山と一体化していくに従って人間性を失っていく。しかし、ふとした拍子に人間であることを思い出してしまう。兄や親を恋しく思う少女はもはや山と一つにはなれなかった。

――ならばヒトは山から外れていくことになる   山の声の届かぬモノになる

この言葉が重く響く。ギンコは「ヒトも山の一部」だと、「決してはずれはしない」と言ったけれど、果たして現代に生きる私たちはギンコのように胸を張って言えるだろうか。

そんな風に懐疑的にならざるを得ない時代。だからこそ、今この物語が必要なのだろう。

物語はここで終わってしまうけれど、ギンコの旅はこれからも続くらしいことが、私は嬉しい。

美しい物語を、美しい余韻を持って幕を降ろされたことに心から拍手を贈りたい。






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最終更新日  2008.11.29 21:25:35
コメント(11) | コメントを書く


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蟲師  
shimikotoshiori  さん
ありそうでいて、卓越した設定でしたね。
物語をどう終わらせるか、も大切ですよね。

遺伝子さえも自由にしようとする、ある意味傲慢になった私たちは、
もう一度自然への畏れに気づかないと破綻してしまいそうです。

(2008.11.29 22:36:13)

Re:蟲師(11/26)  
shimikotoshioriさんいらっしゃいませ。

>ありそうでいて、卓越した設定でしたね。

始まった時には、難しい設定だな。すぐに終わるかも。。。と思っていました。こんなにたくさんのアイディアを持っておられたことに驚きます。

>物語をどう終わらせるか、も大切ですよね。

長編になればなるほど、終わらせ時が難しくなりますよね。この作品は程よく終われたなあと思います。
置き去りにされた謎がいくつもあるのですが、語りつくされないというのも、この作品らしいような気がします。

>遺伝子さえも自由にしようとする、ある意味傲慢になった私たちは、
>もう一度自然への畏れに気づかないと破綻してしまいそうです。

無宗教の私たちにとって、自然を畏れる、敬うということは、唯一の心のよりどころという気がするのです。

だから、ふっとそういう場所へ行って木々の向こうを見て怖いと思ったり、高い樹を見て厳かな気持ちになったりするということを、日常生活の中に取り入れていった方がいいのかもしれませんよね。

これから技術も科学も否応なく進歩していくでしょうが、一人ひとりがそういう気持ちを忘れずにいたいですね。それが破綻を防ぐと信じたい。

(2008.11.29 23:26:51)

Re:蟲師【10】完 漆原友紀著(11/26)  
珍しく雑誌の1話から追えた作品だったので、完結の感慨も一入です。

当初から高クオリティーを保ちきった稀有な作品になりましたね。短編なのに凄いと思います。マジで。
去り際も見事。安易に続けようと思えば蟲ネタ枯渇してもセンセイとかのキャラ押し出したりすれば続けられたでしょうが、それをしなかった漆原さんやアフタ編集部に拍手を送りたいです。

蟲の設定も八百万神の日本ならでは、といった感じでたまらんかったです。
イメージや夢想や現象までも「蟲」という形で絵にする巧みさとセンスに最後まで脱帽でした。

10巻の中では最終話は別格として、やはり「香る闇」が1番好きだったかも。SFっぽくてw
「常の樹」もエマノン思い出して良かったんですが。

エコバックとかエコ替えとか意味のわからない言葉に踊らされるより、この作品を読んで共感するほうがよっぽどエコですよね。本来の意味で。
(2008.11.30 10:12:53)

Re[1]:蟲師【10】完 漆原友紀著(11/26)  
喫茶まんがすマスターさんいらっしゃいませ。

>珍しく雑誌の1話から追えた作品だったので、完結の感慨も一入です。

私も、単行本の第1巻を手に取った時のワクワク感を今でも覚えています。

>当初から高クオリティーを保ちきった稀有な作品になりましたね。短編なのに凄いと思います。マジで。
>去り際も見事。安易に続けようと思えば蟲ネタ枯渇してもセンセイとかのキャラ押し出したりすれば続けられたでしょうが、それをしなかった漆原さんやアフタ編集部に拍手を送りたいです。

本当に1話1話高いクオリティを保たれていましたね。
全てを語りつくされることは無かったけれど、不思議に欲求不満ではないんです。そして作家の終わりたいタイミングで終わらせることが出来た。幸せな作品だなあと思います。これは仰るとおり編集部が素晴らしいですね。どこかの少年誌も見習うべきでしょう。

>蟲の設定も八百万神の日本ならでは、といった感じでたまらんかったです。
>イメージや夢想や現象までも「蟲」という形で絵にする巧みさとセンスに最後まで脱帽でした。

確かに、蟲は日本の神に通じるところありますね。だから、私たちの心に潜む感情を揺り起こされるのでしょうね。

>10巻の中では最終話は別格として、やはり「香る闇」が1番好きだったかも。SFっぽくてw
>「常の樹」もエマノン思い出して良かったんですが。

香る闇は、あの二人が結局どうなるのかがわからないところがちょっと怖いんですよね。
エマノン。ボチボチ読んでるんですが、忙しくてまとまった時間が取れなくてなかなか進まない。確かに常の樹はエマノンっぽいですね。特に今、未来を見ることの出来る少年とエマノンが記憶を交換しようとする話を読み終えたばかりなので、殊更リンクして考えてしまいます。
(2008.11.30 11:53:04)

茶ま太さんへ、続き  
>エコバックとかエコ替えとか意味のわからない言葉に踊らされるより、この作品を読んで共感するほうがよっぽどエコですよね。本来の意味で。

エコバック、使ってますけど、何となく胡散臭いというか騙されてる感じはしますよね。
実際、これでスーパーの袋の生産量は抑えられてるのか疑問だし。

この作品を読んでぜひ、共感して欲しいですね。それだけでなく、周りの自然に対して思いをはせて欲しい。
(2008.11.30 11:53:37)

完結してたのですね  
初めて目に入ったのはアニメ化の話題のとき。
好評だったとあとで知り興味はあったのですが観てなくて、今度BSで始まるのを楽しみにしています^^♪

アフタ何年も買っててほとんど読んだことないんですよぉ~x_x;
(2008.11.30 15:32:35)

はじめまして  
さくら さん
こんにちは。
読書メーターで、ここ最近読んだ漫画がおんなじだったので、お気に入り登録させていただきました☆

>美しい物語を、美しい余韻を持って幕を降ろされたことに心から拍手を贈りたい。
ステキなレビューですね。
大好きな漫画でしたが、終わってしまって残念ではありますが、ホントに余韻がいいなと思いました。

また遊びに来ます♪ (2008.11.30 17:50:51)

Re:完結してたのですね(11/26)  
ロサロサ×紫 織×プルプレアさんいらっしゃいませ。

>初めて目に入ったのはアニメ化の話題のとき。
>好評だったとあとで知り興味はあったのですが観てなくて、今度BSで始まるのを楽しみにしています^^♪

あ、BSで始まるんですか。
このアニメもすごく出来が良かったです。私ももう一度見ようかな。

>アフタ何年も買っててほとんど読んだことないんですよぉ~x_x;

あ~、これはお勧めですよ。何だか読んでると森林浴しているような気持ちになります。

しかし、アフタ読んでらっしゃるのに何故接点が無いのでしょう。面白いですね。

(2008.11.30 21:11:08)

Re:はじめまして(11/26)  
さくらさんいらっしゃいませ。

>こんにちは。

どうもはじめまして。ご訪問いただきありがとうございました。

>読書メーターで、ここ最近読んだ漫画がおんなじだったので、お気に入り登録させていただきました☆

私もさくらさんのメーター覗いてきました。nanaco☆さんもお気に入りに入ってましたね。
何だか最近メーター経由のお客様が増えてとても嬉しいです。書痴の輪というか。。。(くおんの森に出てきたこの言葉がとても気に入っています)
私も登録させてくださいね。 

>>美しい物語を、美しい余韻を持って幕を降ろされたことに心から拍手を贈りたい。
>ステキなレビューですね。
>大好きな漫画でしたが、終わってしまって残念ではありますが、ホントに余韻がいいなと思いました。

ありがとうございます。照れます。(*´ェ`*)
漆原さんという方はホント、そういう余韻の残し方が絶妙ですよね。

>また遊びに来ます♪

ありがとうございます。

(2008.11.30 21:17:46)

Re:蟲師【10】完 漆原友紀著(11/26)  
なた5963  さん
漫画が綺麗に終ると嬉しいねー。

人間は、すでに自然の一部ではないと考えてしまう私は異端児
(´・ω・`)
(2008.12.01 01:26:23)

Re[1]:蟲師【10】完 漆原友紀著(11/26)  
なた5963さんいらっしゃいませ。

>漫画が綺麗に終ると嬉しいねー。

すごい幸せな気持ちになりますねー。

>人間は、すでに自然の一部ではないと考えてしまう私は異端児
>(´・ω・`)

私は反対に、人間が何をしようとそれもまた自然の一部と思っています。

(2008.12.01 20:31:34)

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