PR
北欧のそれらの音楽はきみにとって、天気予報のBGMにすぎなくて、やはりきみの好きなRAPのような喧騒は、ぎくしゃくした踊りで、それは16ビートの裏打ちなのかもしれないが。
しかしぼくにも感情というものは、歴然としてそこにあった。きみはぼくの人生をコンバイルするといっていたが、極度に抑圧された感情の、やがて無意味な饒舌を嫌うようになった。そしてそこに無口になったぼくは、その愛情さえ、表現することを忘れてしまった。
次第に色あせていく記憶はむしろ、意味のないたわむれの意図を、おしはかることのできないFACTというものを、迷い子のように手繰り寄せていく。
そしてそこにもどる。眠れない夜の廊下の月明かりをたどると、満月は容赦なく都市を照らしている。無防備な夜をさらけだして、そこによこたわっている。
「なにがいいたいのか、よくわからないわ」
そういった言葉を、きみから聞く。それはぼくがいわせている、そうナーバスに自己をさいなんでみても、ノーレスキュー。
「あなたは自分を特別視しすぎなのよ」
拝み奉った灰を崇めることはできない。その言葉で蝕まれていく、自己のイメージ。そしてそれらの会話は苦痛をともなうもので、鼓舞されていく、励ましのような暴言にも聞こえはしなかった。
「男はやさしいだけじゃだめなの」
どこかで聞いたような言葉をふりまわして、ぼくの怒りをまっているのだろうか。あるいはやさしさというものは、単なる弱さ、許容を超えた受容なのか。気の強い言葉を聴いて、それをむしろ脆弱なやさしさと、勝手な解釈を繰り返しているのだろう。
愛という言葉をつかわなくなったのは、むしろその枯渇しかかっているFACTを、なすすべもなく眺めているわけではない。
健やかなるときも、病めるときも、、
「どうしてだまっているの」
「うまくつたえられない、むしろ謝罪にしろ、弁明にしろ、申し開きにしろ、これ以上きみの怒りを大きくはしたくはない」
そういった実直な感想のようなそれは、きみを激怒させることになる。
「わたしたち合わないわ」
ぼくは混乱して、いったい今日なにが起こったのか思い出せないでいた。きみの饒舌はとどまることをしらない。助手席に乗ったぼくは、いったいどこにつれていかれるのだろう。
ぼくはゆっくりと運転席のきみの横顔をみた。ぼくのしらないきみがそこにいた。
Comments