みち。


 不思議だった。いつから歩き始めたのだろう。どれ程歩いたのだろう。ふと気が付くと、俺はこの道を歩いていた。それからずっと、訳も分からず俺はただ歩き続けている。
 その道は時に平坦であり、坂道であり、曲がりくねっていた。前にも後ろにも、果てしのない一本の道に思えた。後に戻る事は出来なかった。振り返る事は出来たが、そこには見えない壁があった。
時々、俺は疲れて立ち止まった。その度に、少女と老婆が何処からともなく現れた。老婆は道の周りに広がっている野原から、俺の腕を掴んで、こっちへおいでと誘う。少女は俺の前で微笑んで、さあ行こうとばかりに手を差し出す。俺はその少女のあまりの可愛さに、二人が出て来た時はいつも老婆の手を振り払って少女の手を取った。その度に俺は元気を取り戻す。
そしてまた歩き続ける。だが少女に貰った元気も長くは続かない。道と野原以外本当に何もないのだ。そんな所をただ歩き続けるだけ。うんざりしない奴がいるだろうか?
俺がもう嫌だと思った時。ふと野原に目を遣ると、俺の方に向かってくるいくつかの人影がある。よくよく目を凝らしてみると…、俺の友人達だった。
「よう、六路。こっちへ来ないか?」
そいつらの一人が笑って手を差し出す。俺も笑い返そうとして――、その瞬間顔が凍りついた。
「うわあああっ!」
そいつらには、足がなかった。
 俺は逃げるように歩き出した。奴らは暫く俺の名を呼びながら追いすがって来ていたが、やがて消えた。
 ただひたすらに長い道を歩く。終わりはあるのだろうか…、この道に。何処まで歩けばいいのだろうか、いつまで歩けばいいのだろうか。そう思う度に、老婆と少女が現れた。毎回、俺は少女の手を取り歩き出したが、ある時、老婆と少女の立場が逆になっていた。老婆は俺の腕を引っ張って、「まだ歩くんだよ。道はまだ終わっちゃいないよ。」とせき立てる。一方、少女は野原の方から、「こちらへおいで。もう歩かなくて済むわ。辛い事なんて何もないのよ。」と微笑む。俺がその少女の顔と言葉の誘惑に負けて、野原に足を踏み出そうとしたその時、不意に声がした。
「………!」
何と言っているかは、分からない。
「……ろ!」
だが、聞いた事がある声だという事は、確かだった。
「六路!」
 気が付くと、目の前に目を涙で一杯にした道佳――俺の彼女の顔があった。
 俺は病院にいた。友人達(歩いている途中で出てきた奴ら)と車に乗っていて事故を起こし、俺は生死の境をさまよっていたのだと、そして友人達は死んだのだと道佳が教えてくれた。
 あの道は一体何だったのだろう。…思うに、あれは俺の人生だったのではないだろうか。すなわち、あの時少女の誘惑に負けて野原に足を踏み出していたら、今頃は…。

icon羽根2


 高2の頃、友達数人と題材を決めて、いろいろと話を書いていました(文字数制限付きで)。コレはその中の一つ、題材は「みち」です。殆どの友達が「道」という意味で書いてきたのに対し、一人だけ「満ち」できたのはビビりました。う~ん、柔軟な発想。
 他にもいろいろ書いたんですが、今やもう忘れちまってます。ある友達が書いた物はどの題材であっても秀逸な物ばかりで、正直また読み返してみたいです。でもその原稿(といってもルーズリーフ・笑)誰が持ってるのさ~(本人は持ってないそうです)!
 あ、ちなみに、「六路」は「りくろ」と読みます。変な名前でゴメンナサイ(笑)。

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