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Jesus Christ! (1)
・帯刀一刃(たてわき・かずは) 主人公、男
・私市カヲル(きさいち・かをる) 男
・妹尾十夜(せのお・とおや) 男
・龍玉鈴(ロン・ユイリン) 女
・ジェライラ 女
薄暗い生物室の中、一人の少年がフラスコや試験管相手に格闘していた。
既に日は落ち、下校の時間はとうに過ぎていたが、少年は構わず怪しげな薬を作っていた。
少年は緑色の液体の入ったフラスコの中に、試験管の白い液体をゆっくり注ぎ入れた。そして、最後の一滴まで注ぎ入れると、少年は思い切り叫んだ。
「やったあ!できた!」
少年の声が部屋の中に響いた。そのあまりに大きな声に、生物室で飼育されている動物達が騒いだ。
少年が作った薬――、それは、巨大化させる効力を持っていた。この薬をかけると、生物なら何でも巨大化するのだ。少年が机の上に広げている、これまた怪しげな本にそう書かれている。
「ああ、もうこんな時間か。いいや、実験するのは明日にしよう。」
少年はフラスコを棚に置き、鞄を持って部屋を出た。
フラスコを置いた棚の下に、水槽があった。中には、ナメクジが20匹程、入っていた。
その夜、地震があった。
分厚い灰色の雲が空を覆い、湿った生温い風がゆっくりと吹いていた。何となく辺りが薄暗く、空気が重い。気が滅入りそうな朝だった。
まだ朝早く、人通りの少ない歩道を、俺は一人で歩いていた。
俺の名前は帯刀一刃。高校一年生だ。父親は居合道のある流派の師範で、そのせいで俺はこんな変な名前を付けられた。俺自身も居合をやっていて、昨日五段に昇段した。
湿気を孕んだ風が吹き、俺の腰まである長い髪がなびいた。…うちの道場のしきたりで、跡を継ぐ者は髪を長く伸ばさなければならないのだ。そして師範になる時に髪を切る。どういう理由でそうなったかは知らないが、実に厄介なしきたりだ。
「一刃!」
突然名前を呼ばれ、俺は振り返った。そこには長い銀髪を三つ編みにした、外国人の少女がいた。
「何だ。ジェライラか。」
ジェライラは俺に追いつき、横に並んだ。
「おはよう、一刃。いつも早いわね。」
「まあな。これも強くなる為だからな。規則正しい生活は、修行の基本だ。」
流暢なジェライラの日本語に、俺はそう返した。
「ああ、貴方、居合やってるんだったわね。何段?」
俺は不敵に笑った。
「昨日、五段に昇段したんだ。」
「へえ、凄いわね。おめでとう。」
褒められたのが嬉しく、けれど何となく気恥ずかしくて、俺は照れ隠しに前髪を引っ張った。昔から褒められる事はあまりなかったので、どうもむず痒い感じがする。
「一刃!ジェライラ!おはよう!」
不意に、俺達の後ろで声がした。俺達が振り返ると、一人の少年が満面の笑みで立っていた。栗色の髪と目で、人目で外国の血が入っていると分かる容貌だ。こいつは私市カヲルという。
「あら、カヲル。おはよう。」
ジェライラはにっこり笑って挨拶を返した。傍から見ると、とても優雅に見えるに違いない。
「カヲル。何か良い事あったのか?」
何故か、妙に嬉しそうに見える。とりあえず訊いてみた。
「よく分かったね。」
カヲルは本気で驚いているようだ。その様子に俺は呆れて、はぁ~っと嘆息した。
「分からない奴はいないと思うぜ。何があったんだ?」
カヲルはにっ、と笑った。自慢げな笑みだ。
「昨日、巨大化する薬が完成したんだ。」
「へえ、出来たんだ。」
ジェライラは蒼い瞳を輝かせた。カヲルは嬉しそうに笑った。
「うん。これから学校で実験するんだけど…、見たい?」
「見たい!」
カヲルが問うと、ジェライラのものではない少女の声が炸裂した。俺達三人は驚き、同時に振り向いた。
「玉鈴…。脅かさないでくれ…。」
俺は眉間に皺を寄せ、言葉を吐き出した。ジェライラとカヲルは呆れ顔になっている。
「やだなあ。あたしの性格、知ってるくせに。」
玉鈴は憎たらしい口調で言い、へらん、と笑った。この中国人の少女――、龍玉鈴は、こっそり後ろから近付いてきて、人を驚かすのが大好きなのだ。それは俺もよく知っていたが、つい油断してしまった。
「それに君、今油断してたでしょ?駄目だよ、そんな事じゃ。強くなれないよ。」
俺は図星をさされ、何も言えなくなってしまった。
その時、真後ろに殺気を感じ、俺は振り返った。鋭い光が見えた。ナイフの光だ。俺の頭目掛けて飛んでくる。
俺はそのナイフを指の間で挟んで止めた。これ位は簡単だ。いつもは日本刀で、親父と真剣白刃取りの訓練をしているのだから。
このナイフは…、あいつのだ!
「出て来い!十夜!」
街路樹の陰から、一人の少年が現れた。薄い茶色の髪を少し長めに伸ばした、俺よりも鋭く黒い光を放つ目を持った少年である。2本のナイフを持ち、射るような眼差しで俺を見ている。
「危ないじゃないか!もし止められなかったら、死んでたぞ!」
俺が掴みかからんばかりに叫ぶと、少年――、妹尾十夜はすまして言った。
「たわけ。玉鈴に今言われたばかりだろうが。これ位、止められんようじゃ強くなれんぞ。これも訓練だ。」
にしても限度というものがある。今のは明らかに殺意があった。
「それにしては恐ろしい程殺気が籠もってたぞ。」
「気のせいだ。」
俺が恨みを籠めた目で十夜を見ると、十夜はそっぽを向いてさらりと答えた。
俺は嘆息し、前髪を掻き上げた。こいつらのお陰で、俺の高校生活は退屈する事がない。全く、変な奴ばかり集まったものだ。
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