いつかはカナダ犬と北京生活

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9、彼の名はブレア

9、彼の名はブレア


 それから何時間か経って、私たちはダンスフロアでまた出会った。さっきの白人女性は近くにいない。彼はにこにこしながら「何か飲みませんか?」と私を誘った。人ごみをかき分けるようにカウンタまで行ったとき、「Misaki(美咲)は何がいいですか?」彼が不意にそう聞く。

 私は驚いた。名前、教えたっけ?テーブルはどこも満席で、私たちは仕方なくお酒のビン片手にダンスフロアのほうへ歩き出した。ピンクシャツの後姿を目で追いながら、「ね、私の名前知ってたの?」私が聞くと、

 彼は笑顔で振り返り、「さっきダンスしてるときに聞きました。Misakiは私の名前、覚えてる?」

 私はどうしても思い出せない。音楽がうるさかったせいか、ダンスに夢中だったせいか、少しお酒がまわっていたせいか、私の記憶からその部分だけがすっぽりと抜け落ちていた。

 「ブレアです。」笑顔の彼が言った。


続く→

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