いつかはカナダ犬と北京生活

いつかはカナダ犬と北京生活

二、星巴克での出会い

二、星巴克での出会い


 ビンビンとの出会いは、その陽光の中にある星巴克(スターバックス)。彼と知り合うまで、そのスタバへは月に数回、ふらりと立ち寄る程度だった。当時、レギュラーコーヒー1杯12元(約170円)。日本円でなら安いと感じるこの値段も、北京で生活していると安い気がしない。北京の(庶民ランクの)食堂では、5~10元でおなかいっぱい食べられる。私の金銭感覚は、既に中国人になっていた。

 それはまだ蒸し暑い8月のある夜。おもしろいTV番組もなく、部屋で時間を持て余していた私は、気分転換にスタバへ向かった。午後8時を過ぎているというのに、土曜日ということもありいつになく混み合う店内。

 カウンター正面の黄色いソファでくつろいでいたとき、カウンターの隅で一生懸命手元のノートにメモをとるスタッフが目に留まった。どうやら新人らしい。先輩スタッフに、器具の使い方を教わっているように見える。

 客が入ってくるたびにさっとメモを置き、笑顔で応対する彼。ぎこちなさの中に、一生懸命さが伝わってくる。中国の接客態度は悪いとよく言われるけれど、ここスタバのスタッフは実によく教育されている。私はいつの間にか彼の笑顔に引き込まれていた。自然で、知的で、暑さも吹き飛ばす爽やかなその笑顔。彼がビンビンだった。

続く→


© Rakuten Group, Inc.
X
Design a Mobile Site
スマートフォン版を閲覧 | PC版を閲覧
Share by: