いつかはカナダ犬と北京生活

いつかはカナダ犬と北京生活

二十、見たくなかった

二十、見たくなかった


 私は二人を見ているのが辛くなり、ジャオ君が熱唱している隙に席を立った。今の私に行ける所はトイレだけ。部屋にはもう戻りたくない。大きな鏡に映る、全身めかし込んだ自分。ビンビンとのデートだと思ったから、こんなにも頑張ったのに。昼間あんなにウキウキしていた自分がバカみたい。こうなると分かっていたら絶対!絶対!来なかった!

 数十分が過ぎ、私は重い気持ちで部屋へと向かった。こんなことをしても、「ビンビンに彼女がいると分かってショックです」と言っているようなもの。そんな自分を見せるのは悔しいから、いっそ平気な顔してやろう。そう思い直した。

 部屋の前まで来たとき、ドアの小窓から中が暗くなっているのが見えた。あれ?まさかみんな帰っちゃった!?焦ってドアを開けると・・・

 ソファの上に寝ころび、抱き合うビンビンとレンさん。一瞬だったけれど、ビンビンが彼女に覆い被さってキスしているのが見えた。私はとっさに「対不起(ごめんなさい)・・・」と言い残し、急いでドアを閉めた。

 「美咲!待って!」

 早足でその場を離れる私の後ろから、ビンビンの声が聞こえた。

続く→


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