濫読屋雑記

濫読屋雑記

2005年12月30日
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昨日で、ようやく アルバート・A・ノフィ 著、 諸岡良史 訳『 ワーテルロー戦役 』(コイノニア社、2004年)の呪縛から逃れました。そこで、今日は昨日の日記で、取り付かれたように長々と書き綴り、また、 人間生まれてから必ず一度は興味・関心・疑問等々、何か考えたり思う事があった道具 鉄砲 について解説している本を紹介してみたいと思います。

鉄砲 、この言葉は日本史の教科書に「 鉄砲伝来 」として記述されているように、 日本史を動かした武器として広く知られていると思います 。しかし近年、日本史の教科書に書かれていた「 鉄砲伝来 多くの誤りがあったという事が研究により明らかになってきました

そんな鉄砲研究の第一人者が、 国立歴史民族博物館 (歴民博)の 教授 をされている 宇田川武久 先生です。著述の著者紹介に「 中・近世水軍史、日本銃砲史専攻 」と書かれる位のお方です。

この宇田川先生の著書の中で何処でも簡単に手に入るものとしては『 鉄炮伝来  兵器が語る近世の誕生』(中公新書、1990年)があります。この本では、鉄砲が ポルトガル人ではなく倭寇 (中国から朝鮮半島沿岸を襲った海賊集団。時には、100隻以上の船団を組み、内陸部まで襲撃した。初期倭寇は日本人が中心であったが、後期倭寇では中国人が中心となっていった。明国衰亡の原因の1つ(「北虜南倭(ほくりょなんわ)」、虜は北方からの騎馬民族タタール等の襲撃のこと。)ともなった。) がもたらしたものであること を、 調査と新史料に基づき明かされています 。(最近の教科書では、倭寇伝来説を採っているのかな?)

鉄炮記 』(先ほどから「鉄炮」とい言葉が出てきていますが、この当時、幕末ぐらいまで火器の「砲」は「炮」という漢字を使用していました。)という史料が使われてきたのですが、この史料、史料が伝えるところの鉄砲伝来時の天文12年(1543)より後の慶長11年(1606)に、種子島の領主、種子島久時が、鉄砲伝来時に島主であった祖父の時尭の功績を称えるために作らせたもので、史料に基づく伝来時より半世紀も後に作られています。このため、 資料的価値はあまり高いものではなかったのですが、鉄砲伝来を記した唯一無二の史料であるため、重用されてきたのです

宇田川先生はあえてこの『 鉄炮記 』に拘らず、『 朝鮮王朝実録 』(NHKで放送中の『 宮廷女官 チャングムの誓い 倭寇 によるものと結論付けています。

この『 朝鮮王朝実録 』では、『 宮廷女官 チャングムの誓い 』にも済州島での倭寇騒動がありましたが、 倭寇 の被害とその対策が細々と記載されています。例えば1544年の『中宗実録』には「漂着した唐船が火器を所持している」、「かつて日本には火砲が無かったのに今は大量に持っている」という記述があり、すでに鉄砲が日本に伝わっていた事を示唆しています。

このような記録から、宇田川先生は東シナ海を中心に活動していた 倭寇 、とくに『 鉄炮記 』にも記述があるポルトガル人との通訳をした 五峰(ごほう)という明人が、実は王直という倭寇の大頭目であった ことを明らかにされ、 倭寇が当時の戦国大名、大内氏や大友氏とも交易があった商人としての一面を持ち 、そのような倭寇の手で鉄砲は火薬の原料、硝石・硫黄(当時の明国のご禁制品。)と共に商品として日本へ伝来したとされ、ポルトガル人よりむしろ倭寇が主役であったと結論付けています。また、この説は種子島に伝わったとされる初伝銃の形式がヨーロッパ式ではないことからも、明らかであるとされています。

この鉄砲の形式については、 佐々木稔 著『 火縄銃の伝来と技術 』(吉川弘文館、2003年)をご覧になると良いでしょう。この本は、これまでの火縄銃に関する研究を一気にまとめ上げた代物です。この本では、種子島の初伝銃の形式は銃床(ヨーロッパ式は肩当式に対して、和銃は頬当式。)と点火装置などから東南アジア、マラッカで作られた鉄砲に類似している事を指摘されています。また、『 鉄炮記 』著述以後の宇田川先生の研究等に基づいて、鉄砲伝来を環シナ海交易の中に跡付けています。この、『火縄銃の伝来と技術』はこれまで、 文献史学・鉄砲史の側面からしか議論されていなかった火縄銃の伝来を、材料工学研究者を交えた共同研究により「技術史」の側面から解明している点が新鮮に感じました 。さらに、火縄銃がどのように作られたかが、当時の資料(江戸時代の砲術書に描かれたいたイラスト。)などを用いて解説されいることもお気に入りの理由の1つです。ただ、この本の値段が…。(7,500円〔税抜〕はちょっと!)

あと、宇田川先生の著作としては、 戦国時代には実戦的であった炮術が、太平世の江戸時代に入り武芸の一流となっていった様子を、当時の史料、新発見の文書や手紙・日記から読み解く 江戸の炮術  継承される武芸』(東洋書林、2000年)や、 銃砲に関する基礎知識から戦国合戦に多大な影響を与えた鉄砲と鉄砲を扱う技術・武芸としての「砲術」とその専門家「砲術師」の活躍を紹介、解説し、日本人はなぜ、火縄式発火装置にこだわったかという疑問にも答えてくれる 鉄砲と戦国合戦 』(吉川弘文館『歴史文化ライブラリー』、2002年)が、あります。

また、ヨーロッパの戦争について 火薬を使用した兵器・火器と、それを開発・生産方法、火薬の生産方法、そして火器が戦場で有効に利用される戦術の確立までの戦略・戦術、軍事組織と技術問題等々の問題点を詳細に解き明かし 、火器が戦場のみならず社会全般にどのような影響を与えたのかまで、 14世紀に欧州に火器が登場してから300年間の歴史を、詳細に研究された著作 として 私が一押しする本が バート・S・ホール 著、 市場泰男 訳『 火器の誕生とヨーロッパの戦争 』(平凡社、1999年)です。書店では手に入らないと思いますので、図書館で借りてみて下さい。高い本ですしね。(4,500円〔税抜き〕です。)

あと、鉄砲に関する著述としては 銃砲史家として著名な 所荘吉 氏のものがあるのですが…。この所氏の著書は、図書館か古書店へ行かないとまず、手に入らない代物なので、 興味のある人は図書館へ行って「所荘吉」氏の書いた本を探しているのですが?と、カウンターの司書に言って、調べてもらってみて下さい

火縄銃の伝来と技術 江戸の炮術 鉄砲と戦国合戦 火器の誕生とヨーロッパの戦争





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最終更新日  2005年12月31日 00時30分27秒コメント(0) | コメントを書く


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