濫読屋雑記

濫読屋雑記

2006年07月05日
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カテゴリ: 手に取った本
ようやく読みたい本が、手に入りました。近所の公立図書館へリクエストした本が届いたとの連絡を受けて、今日、借りてきた本です。その本とは、 マイク・ハスキュー 著、 小林朋則 訳『 戦場の狙撃手 』(原書房、2006年)です。

戦場の狙撃手

戦場に轟く一発の銃声。ハッと隣を振り向くと戦友が頭を打ちぬかれて倒れている・・・。狙撃兵の仕業です 。よく、その手の本には「 戦場で一番恐ろしいものは? 」との質問に対して大抵は、砲撃やら機関銃、空襲ではなく「 狙撃兵 」と言う答えが一番多いそうです。それは、そうでしょう。 相手は見えないところから、ズドンッと撃ってくるのですから。見えない敵、これが一番兵士の恐怖心を煽るのです

この本では、 そのような狙撃兵についての「歴史」を体系的にまとめ、アメリカ独立戦争から始まる古今東西の狙撃手の活躍した戦場を図説とエピソードを交えて解説している1冊です 狙撃手という仕事の歴史的・軍事的背景を知るにはまたとない入門書です!

本書の目次を紹介してみますと、
第1章 帝国主義戦争
第2章 塹壕戦
第3章 西部戦線
第4章 東部戦線
第5章 太平洋戦域
第6章 朝鮮戦争と冷戦
第7章 ベトナム戦争
第8章 民兵組織の狙撃兵たち
第9章 近年の紛争
第10章 現代の狙撃兵


この本で、 注目すべき文章が第10章「現代の狙撃兵」に記載されています 。近年、 ようやく陸上自衛隊にも狙撃専用の狙撃銃 (M-24だったかな?) が装備されるようになりました 。それまでは、 クセのない64式小銃にスコープを付けたモノを狙撃銃の代用品にしていたのですが、64式小銃の性格上、精密な狙撃には向かない代物でした

超軽機関銃 」というものです。 沖縄戦など、太平洋戦争末期、旧日本軍は重火器のない中で九九式軽機関銃や八九式重擲弾筒のみで米軍の鉄の嵐に立ち向かいました そこで戦後、自衛隊の幹部となった旧軍の下級将校はこう思ったのです 。「 九九式軽機関銃のような自動小銃を兵士に持たせて、蛸壺にもぐらせれば、防衛戦では無敵だ! 」という考えです。元々、 専守防衛が戦略・戦術を縛っていた当時では当然の発想ではあります 。で、完成した64式小銃なのですが、たしかにフルオートなどの射撃では抜群の命中率を誇ったのですが、元々、軽機関銃と自動小銃の相の子、無理をして図面を引いたため複雑な機構となりメンテが大変となり、さらに、故障が多くなるという結末になったわけです。さらに、NATO規格の7.62mm弾を使用したものですから、反動が日本人には凄まじく、結局、減装薬弾を作って支給しなくてはならないという体たらくになったわけです。また、狙撃銃として使用するには撃芯(薬莢の雷管を叩く針の事です)が長すぎて引き金を引いた後、発砲までにホンのわずかながら時間のズレが発生することも狙撃銃として使用するには不向きではあります。でも、フルオート時の命中率の良さ(しっかりと銃を安定させねばならないでしょうが)を利用すれば、狙撃手を制圧用には使えるのではないでしょうか?米軍も太平洋戦争中、ジャングル戦で木の上に潜む日本の狙撃兵に対してBAR(文体支援火器=軽機関銃)を乱射して制圧したとありますので。

話を戻しますと、この本の273ページには「 各国の軍隊は、いろいろな時期に合同演習を行っている 」として「 数年前、アメリカ海兵隊は、10日間わたり日本の陸上自衛隊と、日本の霧島演習場で合同演習「フォレスト・ライト99」を行った 」とあります。このときの様子を、 米海兵隊のマット・ヘヴェンジ伍長 の報告からみてみますと「 深草二等陸尉の小隊は、その日の午前、海兵隊の狙撃兵小隊と合同で、隠密接近テクニックと監視テクニックの練習を行なった。狙撃兵は陸自の隊員とペアを組み、アメリカ海兵隊の狙撃兵が使用している特殊な擬装用軍服を陸自隊員に着せるのを手伝った。狙撃兵と陸自隊員の二人組チームは、周辺の丘陵や草むらに散らばり、監視チームの射程内にひそかに入ろうとした。彼らの任務は、高性能望遠鏡を持った監視兵に気づかれないように二人一緒に接近にして正確な射撃を行うことであった 」とあります。

一方の 陸上自衛隊 深草二尉 は「 海兵隊との訓練で、彼らの戦闘技術を学ぶ事ができてよかったです。海兵隊の偽装方法と移動方法、それからとくに斥候の考え方は、とても参考になりました。アメリカ海兵隊と日本の陸上自衛隊が学びあうのは、非常に有意義なことだと思います 」と述べています。

この文章から、 陸上自衛隊 アメリカ海兵隊 の綿密な関係が覗えるかと思います。先にも、 西部方面普通化連隊がアメリカの西海岸、サンディエゴでアメリカ海兵隊と島嶼への着上陸訓練を合同で行った事は記憶に新しい事だと思います 。このように、 陸上自衛隊は中期防にあるように着々とゲリ・コマ(対ゲリラ・コマンド)対策をアメリカ側と協力しながら進めている事がわかるかと思います

と言うような、 現代の狙撃兵の最新の情報からアメリカ独立戦争で活躍した モーガン・ライフル隊 」、 ナポレオン戦争時に活躍し、本ブログでも少々紹介したベイカー・ライフルを支給されイベリア半島で大活躍をした緑の軍服で有名な第95連隊 、そして、狙撃兵が大々的に活躍した南北戦争、第一次世界大戦での塹壕戦での死闘など、 個々の戦争のエピソードや、名狙撃手、ライフルについての解説が豊富に紹介されています

また、 第二次世界大戦 第4章 東部戦線 では、映画『 スターリングラード 』で有名となった実在の名狙撃兵、 ワシリー・ザイツェフ とその驚異的活躍に終止符を打つべく前線に派遣されたドイツ人将校等の死闘についての考察、実話なのか、空想なのか、につていの解説や 、その前の 第3章 西部戦線 では映画『 プライベート・ライアン 」での一幕が取り上げられていて「 みんな、むやみに出るなよ。あの狙撃兵は腕がいいぞ」―映画「プライベート・ライアン」でバリー・ペッパー演じるジャクソン二等兵(狙撃兵)のせりふ 」などが出てきて、映画を見たものとしては思わずにやりとしてしまいます。

他にも 第5章 太平洋戦域 では、 われらが大日本帝国陸軍がどのようにして狙撃兵を利用して連合国軍に逸し報いたかについて敵味方、双方の様子を詳細に解説されています 。とくに第5章の最初の一節「 無人島や蒸し暑い密林で連合軍兵士が戦った敵は、知略に長け、虜囚の辱めを受けるよりは死を選ぶ日本兵であった。両軍の死闘は四年間も続き、そのあいだに双方の狙撃兵は何人にもの敵兵を殺傷した 」という 日本兵に対する尊敬の念あふれる文章で始まっています

このように、 この本の中でも取りあげている狙撃兵個人の武勇伝や技術だけではなく、狙撃兵が軍隊内部でどのように位置づけられていたのかなどや 標的として人間を意図的且つ計画的に殺害する存在出る狙撃兵の敵や味方からの向けられた視線など 狙撃兵の戦術的価値の変遷や狙撃兵自身の内面の葛藤などを注目して読んでみると軍隊と言う組織や、戦争というものに関する認識が一段と深まると思います

もし、 本書を読んで狙撃兵についてもっと知りたい、という方は ピーター ブルックスミス 著、 森真人 訳『 狙撃手(スナイパー) 』(原書房、2002年)を読んでみてください。あと、 クリス・マクナブ 著、 ウィル・ファウラー 著、 小林朋則 訳『 コンバット・バイブル 』(原書房、2003年)も参考になりますよ。

狙撃手(スナイパー) コンバット・バイブル





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最終更新日  2006年07月06日 19時29分47秒
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ケツの穴でミルク飲み!  
KKC さん
映画のフルメタルジャケットも
後半は狙撃兵ネタでした
前半の訓練シーンが死ぬほどしびれるのに
後半はかなりパワーダウンでした
(2006年07月07日 00時46分46秒)

Re:ケツの穴でミルク飲み!(07/05)  
KKCさん
>映画のフルメタルジャケットも
>後半は狙撃兵ネタでした

そういえば、そうでしたね~。ずいぶん前に見たきりでうろ覚えですが・・・。

>前半の訓練シーンが死ぬほどしびれるのに
>後半はかなりパワーダウンでした
-----
確かに。前半の訓練ネタはこんな事まで~、というようなネタでしたのに、後半はダレてしまって。青のバイタリティーのまま全編いって欲しかったなあ~。 (2006年07月08日 21時11分00秒)

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